Instagramは“発見”から“購入検討”のプラットフォームへ――最新インサイトとEC活用方法のヒントを解説
Instagram(インスタグラム)への投稿写真や動画などからECサイトの商品ページにリンクする「ショッピング機能」が日本でリリースされてから1年(日本でのローンチは2018年6月)。「Instagramは“発見のメディア”から、商品やサービスを“購入検討するメディア”としても利用されるプラットフォームに変化しています」。こう話すフェイスブック ジャパンの丸山祐子氏(クライアントソリューションマネージャ リード)が、国内利用者の最新インサイト、事例などを交えながらEC企業が注目するInstagramの最新動向について解説する。
Instagramはショッピング機能搭載でどう変わったのか
グローバルのケース
Instagramは現在、世界で月間10億アクティブアカウントが利用し、フィード投稿とは別に短い動画や写真を気軽にシェアでき、24時間で自動消滅する機能「Instagramストーリーズ」のデイリーアクティブアカウント数も5億を超える。
時代の変化に合わせて機能強化を進め、米国では2017年3月にショッピング機能がスタートしている。この機能によってInstagramはどのように変わったのか。丸山氏は次のように説明する。
私たちの調査から、利用者の83%がInstagramを新しい商品やサービスの発見に使い、81%が商品やサービスの検索、80%が実際に商品を購入するかどうかを決めるときにも使用していることがわかっています。
また、ユーザーがInstagramで製品やサービスを見た後にとった行動としては、46%がオンラインで商品を購入。79%が詳しい情報を調べた、65%がブランドのWebサイトやアプリにアクセスしたと答えている。
記事冒頭で丸山氏が述べたように、Instagramは“発見のメディア”から、商品やサービスを“購入検討するメディア”としてもユーザーに利用されるプラットフォームへと変わっているのだ。
日本のケース
日本の月間アクティブアカウントは2019年3月時点で3300万を超えた。男女比では男性が43%、女性が57%。「男性も増えてきており、利用者の属性も多様に拡大しつつあります」(丸山氏)。
次に丸山氏が説明したのは日本ならではの特徴というハッシュタグによる画像検索。昨今、検索行動はテキストだけでなく画像でも行われるようになったが、日本ユーザーはグローバル平均と比較して3倍もハッシュタグで関連画像を検索する回数が多いという。
日本ユーザーの2割が毎日Instagramの検索機能を使用し、4人に1人が情報を検索する際にハッシュタグを利用しているという。
そんな日本のもう1つの特徴が「世界有数のストーリーズ大国であるということです」(丸山氏)。
日本のデイリーアクティブアカウントの70%が「ストーリーズ」を利用。投稿数は2016年と2018年を比較すると20倍も増えており、「ものすごいスピードで利用が広がっています」(丸山氏)
2018年6月に日本で始まったInstagramのショッピング機能は順次アップデートされており、9月には「ストーリーズ」においてもショッピング機能を活用した投稿ができるようになった。
また、11月には動画の投稿から商品ページへの誘導を実現。それまではフィードに投稿された写真(静止画)のみに対応していたが、動画にもショッピングタグを付けられるようにアップデートした。利用者は、投稿動画の左下に表示されるショッピングバッグのアイコンをタップすると、動画にタグ付けされた商品を確認できるようにしている(下の画像)。
Instagram ショッピング機能活用のヒント
ここでショッピング機能の仕組みについて説明していく。
写真や動画、ストーリーズなど、ショッピング機能に対応した投稿をタップすると、商品名と価格が付いたタグが表示される(事業者はそれぞれの商品にタグ付けできる)。タグをクリックするとアプリ内でそのまま商品詳細ページが表示され、「購入する」ボタンを押すと外部のECサイトに移動する仕組み。
通常、Instagramでは投稿に外部リンクを貼ることはできません。ショッピング機能を使うと、商品の画像をタップするだけで、アプリ内で商品詳細を表示することが可能です。画像や詳細を見て利用者が購入したいと思ったら、外部のECサイトへスムーズに遷移する仕組みになっています。(丸山氏)
ショッピング機能の導入に必要な条件
- ビジネスで、提供者契約とコマースポリシーに準拠した物理的な商品を販売している
- Instagramアカウントがビジネスプロフィールに移行済みである
- Instagramアカウントが所有権のあるFacebookページと接続されている
- Facebookページでショップセクションを追加もしくはビジネスマネージャでカタログを作成している(あるいはBASE、EC-Cubeなど、カタログ作成をサポートする国内事業者のECプラットフォームと連携する)
ショッピング機能の導入が特に進んでいるのはアパレル系やビューティなどモデルによる衣類などの着用といった“利用シーンがイメージしやすい”商材を扱う業界だという。また、文房具などの雑貨、インテリア、消費財(ライフスタイルを提案できるようなもの)といった商材にも広がっているという。
なお、ショッピング機能を使った投稿にアクション(ショッピング投稿をタップしてタグを表示する)を起こすユーザーは、グローバルで月間1.3億アカウントにのぼる。
丸山氏によると、日本はショッピング機能の利用がもっともアクティブな国の1つ。「SNS流入の8割がInstagram経由という企業もあります。ただ運用するだけではなく、商品の発見から購入・検討までをシームレスに提供できるようになっているからです」(丸山氏)
ショッピング機能をEC購入へ役立てるためのポイント
まず、丸山氏がInstagramのショッピング活用を推進するために列挙した重要ポイントは3点。
- ショッピング機能を使ったフィード投稿を9件以上作成すること。Instagramビジネスプロフィールを見た人が「ショップ」タブを利用できるようになる
- エンゲージメントを高めるために、1投稿につきタグを2件以上使用すること(タグの付け過ぎは注意)
- ショッピング機能の投稿だけではなく、「ストーリーズ」、動画、ライブ動画、IGTVなどのオーガニック投稿を積極的に活用し、ブランドのファンをふやすこと
そして、具体的な投稿ポイントにも言及した。
①ビジュアルで伝える
ECサイトでは商品の平置き、白バックで商品のみという画像が多いが、ブランドの世界観は伝えにくい。ライフスタイルシーンを想像できる背景を使い、ライフスタイルの提案をしている事例が多いのです。写真や動画で商品の魅力をアピールすれば、どんな規模のブランドにも大きなチャンスがあります。(丸山氏)
②使い方を見せる
メイクアップ製品を販売する「@maccosmeticsuk」の例(下の画像)。製品をどう使えばいいのか、どの色が合うのか、どんな仕上がりになるのかなどを利用者は知りたがっています。使い方を動画などで訴求すれば、その製品を購入できるECサイトへスムーズに誘導できるようになるのです。(丸山氏)
③ストーリーズで顧客との距離を縮める
「@cohina.official」(下の画像)はInstagramの使い方がうまいブランドの1つ。新商品ローンチにあわせてライブ配信してリアルタイムで情報発信するほか、アンケート機能を使って収集した意見を商品開発に生かすなど、フォロワーとインタラクティブな関係性を作っています。消費者も意見を言える環境を生み出すことで、買いたくなるサイクルを作っているんです。”(丸山氏)
こうしたことを踏まえ、丸山氏は次のようにまとめた。
消費者と効果的にコミュニケーションを取るために、ショッピング機能による投稿だけでなく、ストーリーズやフィードのオーガニック投稿、ライブ、広告、IGTV(Instagramの長尺動画投稿・視聴アプリ)など、さまざまな機能を総合的に使うのがポイントです。
オーガニック投稿と広告の違いから理解するInstagram
そもそもInstagramユーザーは企業が発信する情報にどのくらい興味を抱いているのだろうか? Instagramの内部データによると、ビジネスアカウントをフォローしている利用者は8割。ビジネスアカウントを訪れる利用者の内、そのアカウントをフォローしていないユーザーは2/3にのぼる。
丸山氏はこう言う。「ビジネスアカウントであっても利用者は興味があればフォローします。自身にメリットがあれば企業からの発信を好意的に受け入れる土壌があるのです」。
そのためには、Instagramを使う事業者はゴールに合った運用方法を選ぶ必要がある。ブランディングなのか、新規獲得なのか……。Instagramのオーガニック投稿、広告の考え方を理解しておきたい。
丸山氏によると、Instagram広告の特徴として、Facebookと同じ広告配信システムを利用していることがあげられるという。
Facebookは、年齢や性別など一般的な属性に加えてどんな趣味を持っているかなど人ベースのデータを保有しており、Instagramでもそれを活用しています。結果、100%に近い形で想定したターゲット層の利用者にリーチし、情報を届けることができます。(丸山氏)
Instagram広告を使ってどのように認知してもらい、関心を抱いてもらって、購入へ結び付ければいいのだろうか。丸山氏は認知、興味といったファネルの各フェーズに応じた広告メニューがあると言う。
認知
フィード広告、ストーリーズ広告、さらに最近導入したばかりのブランドコンテンツ広告(インフルエンサーおよびパブリッシャーといったクリエイターが投稿したオーガニックのブランドコンテンツを、協業関係にあるビジネスが広告配信することができる広告メニュー)などが適しています。(丸山氏)
興味
ダイナミック広告、アプリインストール広告、ウェブサイトコンバージョン広告を使うことで、さらに興味・関心を促すことができます。(丸山氏)
発見から購入検討のプラットフォームとなったInstagramはさらなる進化を遂げる。今年、米国ではInstagram上で決済を行えるチェックアウト機能のテストをスタートした。日本でのローンチ時期はまだ未定だが、今後さらにEC事業のマーケティング活用に適したプラットフォームへと進化していくことが予想される。