Digital Commerce 360 2019/11/14 8:00

ヘッドレスアプローチでは、Webサイトの個々の要素を分離することで、小売事業者がCMSやデジタルプラットフォームを使用して独自のフロントエンドエクスペリエンスを提供できます。

一方、バックエンドの処理はコマースプラットフォームで行うことができます。ヘッドレスアプローチによる「ヘッドレスコマース」の成功事例をいくつかご紹介します。

成功しているDtoC企業は何に取り組んでいるのか

ヘッドレスコマースというコンセプトは、ほんの1年前までオンライン小売業界の多くの人々から疑問視されていました。業界の専門家や影響力のある人たちの間で、この非伝統的な用語が話題になるまでに時間はかかりませんでしたが、小売業の文脈における「ヘッドレス」の本当の意味は、多くの人にとって曖昧なままです。

コンテンツ体験を通じてサイトへのエンゲージメントを高めようとするブランド、特に消費者との持続的なつながりを確立することに焦点を当てて成功している無数のDNVB(Digitally Native Vertical Brand)と競争せざるを得ないブランドには、ヘッドレスコマースプラットフォームとそのアプローチが最も効果的です。

ヘッドレスコマースの図解プレゼンテーション層
顧客がブランドと関わりを持ち、関係が構築されるタッチポイント。APIエコシステム
ブランドのビジネスアプリケーションとタッチポイントとの間の通信チャネルの技術的な定義。
オペレーション層
カスタマーエクスペリエンスとビジネスオペレーションをサポートするビジネスアプリケーション。
Headless Commerce (ヘッドレス コマース)〜エクスペリエンス・コマース戦略への アプローチの差別化』(Dentsu isobar)よりネットショップ担当者フォーラム編集部でキャプチャ

急速に有名になると同時に、成功しているDtoC小売事業者を検証することで、ヘッドレスコマースシステムの仕組みを説明できます。

また、ヘッドレスアーキテクチャが提供する柔軟性と利便性が、事業の規模や種類と関係なく、eコマースでの目覚ましい成功にどのように導くのかを教えてくれます。

DtoCがカスタマージャーニーをコントロールできる理由

大手ブランドや持ち株会社でさえ、成長するアジャイルDNVBに対抗するために、戦略を更新したり、スタートアップスタジオを作ったり、人気のDtoCマーケティング戦略を模倣したりしています。

DtoCが最近、eコマース業界の寵児として注目されているのは驚くことではありません。消費者に直接販売することに集中し、マーケットプレイスや卸売業者にはあまり重点を置かないことで、DtoCはカスタマージャーニーをコントロールしています。消費者はこれまでになく洗練されてきていますが、ついにテクノロジーが追いついたのです。

今の消費者は、オンラインで買い物をする時も、常にクールなデジタル体験を求めています。彼らはARやVRのような最新のアプリケーションを試すことに熱心で、ソーシャルショッピングも利用し、すべてが問題なく機能し、さらに見栄えもよくなることを期待していますオンライン通販利用者の38%は、魅力的でなければすぐにサイトを離れます)。

競争が激化する中、複雑なトランザクションのすべてのタスクがシームレスに実行されるバックエンドオペレーションを維持しながら、DtoCは消費者の高い期待に応えることができているのです。

「ヘッドレスコマース」とは何か

ヘッドレスアプローチでは、本質的にWebサイトの個々の要素を分離することで、小売事業者がCMSやDXPを使用して、消費者が望むユニークなフロントエンドエクスペリエンスを提供できます。一方で、バックエンドの処理は、コマースプラットフォームで可能です。

eコマースプラットフォームからプレゼンテーションレイヤーを分離することで、コンテンツ管理、UX、およびSEOの柔軟性が向上します。eコマースプラットフォームはそのままにして、APIを介してすべてのバックエンドニーズに接続した状態で、事業者はWebサイトのアップデートを簡単に実行できます。

従来のeコマースプラットフォームは非常にコストがかかり、設計上、急速に変化する今日の消費者の期待に応えるのに苦労しています。小売事業者がデザインや機能に少しでも変更を加えたい場合、柔軟性が低いインフラストラクチャーでは、かなりの調整が必要になってしまうのです。

ヘッドレスの実装により、小売事業者は優れた魅力的なオンラインショッピング体験を簡単に提供できます。また、ヘッドレスシステムは柔軟なので、新しい体験を簡単に作成できます。将来の変化や成長にも対応可能です。そして、分離されたeコマースプラットフォームでは、支払い、セキュリティ、コンプライアンス、ERP、配送などの重要なバックエンドニーズを満たすために、その道の最高のベンダーと組めるのです。

デジタル・ネイティブ・ブランド成功の背景

最も人気のあるDtoCは、ブランドを立ち上げて商品を販売するという現状に依存するのではなく、ユニークで革新的で、存在感を出すことで消費者の心をつかみました。話題を作り、他者と共有する価値のある体験を提供しています。eコマースで成功するための特別な方法や秘密のレシピはありませんが、急成長しているDtoCブランドのいくつかを見てみると、共通したカスタマーエクスペリエンスを提供していることがわかります。

  • 印象的なUX、隙のないデザインと機能性
  • 素晴らしいカスタマーサービス
  • マルチチャネル戦略
  • ブランドとつながるための複数の選択肢
  • 購入から配送までのスムーズな取引

①家具メーカー「Burrow」

これらの要素が組み合わされた素晴らしい例が、革新的なモジュール式家具メーカーの「Burrow」です。彼らは家具を「組み立てる」という行為を、楽しいものに変える方法を見つけました。その魅力的な体験は、シャープなデザインのWebサイト、ユニークなコンテンツ、5つ星のカスタマーエクスペリエンスにも反映されています。それらを実現するのにヘッドレスが役立ちました。

モジュール式家具メーカーの「Burrow」
https://burrow.com/よりネットショップ担当者フォーラム編集部でキャプチャ

②トレーニングアプリ「Zwift」

ヘッドレスが活用されているもう1つの例は、サイクリストやその他のアスリート向けの在宅トレーニング用アプリ「Zwift」です。Zwiftは文字通りコンテンツを販売しているため、サイトを正確に、そしてユーザーが期待する品質を保たなければなりません。ヘッドレスコマースは、Zwiftが企業の成長や変化に応じて、ユーザーとの関係を構築し、それを維持するのに役立っています。

③イタリアンレストラン「Carluccio」

英国で人気の高いイタリアンレストラン「Carluccio」の最近のデジタルトランスフォーメーションは、ヘッドレスモデルへの移行が老舗ブランドにとっても有効な戦略であることを表しています。

レストラン業界ではカスタマーサービスが生き残りの決め手ですが、Carluccioはサイトの訪問者がレストランと同じような素晴らしい体験を得られるようにしたいと考えていました。

新しいサイトでは、コンテンツとコマースをシームレスに融合し、最新のコンテンツを頻繁に訪問者に提供しています。

◇ ◇ ◇

eコマース事業者がこれらすべての要素を効果的にコスト面とスケール面で成功に導くことを可能にする技術は、比較的最近まで存在していませんでした。BigCommerce社の柔軟性と選択肢の提供を見習って、今では多くのプラットフォームやベンダーが、さまざまなCMSやDXP(WordPress、Drupal、Sitecore、Adobe Experience Managerなど)をサポートするヘッドレスコマースオプションを提供しています。

この業界の変化は、オンライン小売事業者に適応と成長の無限の可能性をもたらしました。コンテンツとコマースが衝突し、eコマースに新たな期待をもたらしています。ヘッドレスを覆っていた霧が消えていく中、無限の選択肢と俊敏性を持つこの新しい時代を、小売事業者がどう利用して次のイノベーションを起こすのか、ワクワクしながら見守りたいと思います。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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