公文 紫都 2020/4/22 8:00

成長を続けるBtoB-EC市場。その規模は344兆円と、BtoC-EC市場と比較すると19倍にもなる。インプレスが発売した『BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引き2020[今後デジタル化が進むBtoBとECがもたらす変革]』は、BtoB-ECの基本的な説明から市場全体の動向、導入手順などを紹介した解説書だ。

働き方改革や労働人口の減少が課題になる中、多くの企業が業務効率化や新規取引先の開拓、さらにはデジタルトランスフォーメーションに対する取り組みを進めており、その一つとしてインターネットを通じた受発注処理が注目されている。当記事では書籍からポイントを抜粋し、BtoB-ECサイトの構築を検討するユーザー企業向けに、費用感や特徴などの基本情報を紹介する。

BtoB-EC構築を始める前に確認したいこと

導入目的を洗い出し、利用サービス・パッケージ、開発内容を検討

BtoB-EC とは、従来アナログで行っていたBtoB(企業間取引)業務を、オンラインで行っていく企業間取引専用ECサイトのことだ。

BtoB-ECサイトを通じて注文を受けるには、まずシステムを構築しBtoB-ECサイトを開設する必要がある。開発する場合には自社の情報システム部門等で行うか、他社に委託するかになるが、それ以外にも、カート・受発注システム事業者が提供している既存サービスを利用する方法もある。

開発か、それともすでにあるサービスを利用するか。予算や導入目的によって適した手段は変わってくるので、まずは「なぜBtoB-ECサイトを導入したいのか?」「どんな業務体制を構築したいのか?」といった導入目的やゴールを洗い出すところからスタートしたい。

なぜなら一口に「BtoB-EC」といっても、目標や作業遂行ペースによって、どのサービスやパッケージを利用したら良いか、どのようにシステムを開発していったら良いかが大きく変わってくるからだ。

そこで今回は事業者のパターンを類型化し、代表的なサービスを見ていく。サービス特徴は次回以降、改めて紹介する。

代表的なBtoB-ECカート・受発注システムのマッピング(画像は編集部が作成)

拡張性×初期コスト/事業規模で分類される3パターン

パターンA:開発不要のSaaSモデル

(1)SaaS-カスタマイズなし

【概要】

SaaS(Software as a Service)とは、アプリケーションソフトの機能をインターネット経由で顧客にサービスとして提供すること。事業者側でBtoB-ECサイトに必要な標準機能があらかじめ開発されており、ユーザー企業は毎月の利用料を支払うことでサービスの提供を受ける

強み・低価格かつスピーディーに導入できる
・BtoB取引に必要な標準機能を実装
・クラウド型なので、定期アップデートがある
弱み・カスタマイズができない
・ユーザー企業の業務をサービスに合わせる必要あり
・複雑/独自業務フローへの対応が難しい
主な利用者層年商数億~50億円程度の中小企業
代表的なサービス(社名)Bカート(Dai)

費用感
(初期開発/月額ランニング)

・8万円
・1万~8万円程度

パターンB :業務に合わせてカスタマイズ可

(2-1)SaaS-カスタマイズあり

【概要】

SaaSと(2-2)以降のパッケージの長所を合わせたような形態。クラウド型であるため常にシステムが最新に保たれるほか、パッケージ製品と同じくカスタマイズできるため、企業のニーズに合わせた開発ができる。

強み

・継続的なアップデートあり
・要望の多い機能は順次標準化
・常に最新機能を利用できる
・改修コストを抑制できる
・クラウド型ながら企業ごとのカスタマイズにも対応

弱み・ソースコードが開示されないため、導入後の内製化ができない
主な利用者層中堅~大手企業
代表的なサービス(社名)ebisumart(インターファクトリー)

費用感(初期開発/月額ランニング)

・300万円〜
・料金プランにより変動

(2-2)パッケージ-カスタマイズあり

【概要】

パッケージソフトとは、既成品として販売されているソフトウェア製品のこと。インターネット上での企業間取引に必要な機能が実装されている。加えて企業のさまざまな業務フローや形態に合わせられるよう柔軟にカスタマイズできるようになっており、このパッケージソフトをカスタマイズすることでBtoB-ECサイトを構築する。

強み・パッケージをベースとしているため、導入企業はゼロから構築するよりコストを抑えられる
・カスタマイズ可能
・より企業に最適な専用のBtoB-ECサイトを構築できる
弱み・開発から一定期間が経過すると、システムが陳腐化する
・バージョンアップや改修に費用と時間を要する
・ソースコードが開示されないため、開発後の保守や改修は開発担当した企業以外不可
主な利用者層中堅~大手企業
代表的なサービス(社名)・アラジンEC(アイル)
・ecbeing BtoBパッケージ(ecbeing)
・EC-ORANGE(エスキュービズム)

費用感(初期開発/月額ランニング)

・200万~4000万円程度
・10万~20万円程度

(2-3)パッケージ-セミスクラッチ

【概要】

(2-2)のパッケージ-カスタマイズと基本は同じであるが、機能のカスタマイズだけでなくサーバーなどのインフラ選定から行うことも可能。ユーザー企業の詳細な業務に必要な機能を設計図から描くことができるため、他社サイトにない独自のサービスも提供することができる。また、開発企業からソースコードの開示を受けることも可能であるため、開発後は自社での運用や改修を行っていくことが可能。

強み・ソースコードの開示
・大規模なサイトや複雑/独自の業務フローにも対応できる
弱み開発費用が高額になりやすい
主な利用者層大手企業
代表的なサービス(社名)・Commerce21 Sell-Side Solution(コマース21)
・SI Web Shopping(システムインテグレータ)

費用感(初期開発/月額ランニング)

・3000万~数億円程度
・10万~20万円程度

パターンC :ゼロベースでシステムを構築

(3)フルスクラッチ

【概要】

開発会社に依頼してゼロからすべて構築する方法。予算上の制約がなければ、完全オーダーメイドのシステムを構築することができ、ユーザー企業独自の業務フローをすべて実現できる。

強み・大規模サイトや複雑/独自業務フローも完全対応
・システムを内製化し自社でサイト改善ができる
弱み開発費用が高額になりやすい
主な利用者層大手~超大手企業
代表的なサービス(社名)富士通、NECなどの大手SIer

費用感(初期開発/月額ランニング)

数億円後半~10億円程度

次回は代表的なサービスの特徴を見ていく。

◇◇◇

BtoB-ECについてより詳しく知りたい方は、ぜひ本書をご購読ください。BtoB-ECの基本的な解説から市場全体の動向、ユーザー企業がBtoB-ECに取り組もうとするときに参照できる導入手順までを解説しています。また、製造業や卸売り業の企業にアンケートを実施し、ユーザー企業の取組状況も掲載しています。

もっとBtoB-ECのことを知りたい方へ

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BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引き2020 [今後デジタル化が進むBtoBとECがもたらす変革]

BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引き2020 [今後デジタル化が進むBtoBとECがもたらす変革]

  • 監修:鵜飼 智史
  • 著者:鵜飼 智史/森田 秀一/公文 紫都/インプレス総合研究所
  • 発行所:株式会社インプレス
  • 発売日 :2020年3月24日(木)
  • 価格 :CD(PDF)版、ダウンロード版 90,000円(税別) 、
    CD(PDF)+冊子版 100,000円(税別)
  • 判型 :A4判 カラー
  • ページ数 :200ページ
◇◇◇

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