これからのネットショップに必要な人材育成とは、知識・ノウハウを伝えるだけではありません。人材育成の本質は「売れる人材」と「売れるチーム」を育てること。では、そうした人材はどのような人物なのか。自ら戦略を立案するか既存の戦略を遂行し、実行と検証、そして改善を繰り返すことができる人材です。そして、それが習慣になっている人材。つまり、主体的な人材です。

忙殺される日々のなかで人材を育てるには「主体性」の見直しが必要

質問です。「貴社はネットショップの運営で起こるさまざまな問題に、主体的に立ち向かえる組織になっていますか?」

「いいえ」とお答えになった皆さん。その理由はなぜでしょうか? 考えてみてください。

外的要因のせいにしたところで成長はありません。「上司のせい」「商品のせい」「お客さまのせい」「景気のせい」……責任転嫁しようとすればいくらでも簡単にできます。

また、先輩社員達は忙殺される日々のなかで、後進へノウハウの共有や権限を委任する時間を確保できるでしょうか。いつまでも先行しているスタッフが「自分がやったほうが早い」「自分でやったほうが上手い」と思い、さらに忙殺される悪循環にはまっていないでしょうか。そんなときこそ、組織力向上のために「主体性」を見直すべきなのです。

「人と組織の問題」を解決するためには原理原則の理解から始めよう

「今日、あなたが出勤することも、あなたが自分自身で決めている」

僕がEC会社の役員として、ネットショップを運営するスタッフと面談していていたとき、このように指摘すると驚かれることが多いのです。もちろん、極論的な例えですが、主体性の本質について説明しているつもりです。朝、目が覚めてから、夜、ベッドで眠りにつくまでの数万回のすべての判断は自分で決めることができるということを伝えたかったのです。

このコラムコーナーを共同担当する株式会社ECマーケティング人財育成の石田麻琴代表とは、ネットショップの「人と組織の問題」について、たびたび意見交換をします。

多少の意見の違いはありますが、最終的に共通する考えは「原理原則主義」に帰結します。原理原則とは「時代」「人種」「業界」などに依存せず、普遍的に存在するものです。

「人と組織の問題」を解決するためには何が必要か。実際にネットショップを運営していた立場からの視点でこの「原理原則」が何なのか説明しましょう。

貴社のスタッフには自分で考えて自分で決めるチカラがありますか?

私は2002年から、ネットショップ運営に携わっていました。それまでに、たくさんの人を採用し、たくさんの人とネットショップを運営、そして、たくさんの人を見送ってきました。多様な考え方をもつ人と共に働き、そのなかでさまざまな問題に直面しました。その問題の多くは、他のネットショップでも起こっていますし、EC業界以外でもこれから起こり得ることでもあります。

さまざまな思考の人とのかかわりから学んだことがあります。それは「採用」「育成」「戦力化」の一連の流れのなかで、大事な要素は、冒頭で提示した「主体性」だということです。自分で考えて自分で決めるチカラです。

では、主体性がなぜ大事なのか。

たとえば、創成期のあるタイミングで、流通規模が急拡大するとき、規模の拡大に合わせてある特定の業務群の工数が膨れ上がります。朝から晩まで拡大する流通を支えるために忙殺されることもあります。

ある特定の業務に特化することで、いつのまにか視野が狭まり、気付かないうちに部分的な最適に執着してしまい、その後のさまざまな環境の変化に順応しにくい既成概念ができ上がってしまいます。忙殺される日々を送ることで、最悪は自分が何のために働いているのか見失うこととなります。

環境の変化が激しいEC業界では、さらに加速度的に立ち居地を見失いやすい環境です。特に事業全体を俯瞰していないスタッフならなおさらです。そして、俯瞰しているスタッフは他のスタッフも俯瞰していると思いがちなのです。

自分の夢やショップの理念を礎に、常に希望を持って、自分の意思で前に進んでいきたいものです。そうすれば、日々の仕事も楽しくなります。経営者からみれば、楽しく仕事をしてもらえます。

問題に気付いたとき、自ら考え、行動を変えていく、そんな「主体的」な組織を作っていきたいものです。人材育成の本質はその自覚から始まるのです。

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大場 雅人

アイペット損害保険株式会社

大場雅人(おおば・まさと)

アイペット損害保険株式会社 部長

横浜市生まれ。中央大学卒業後、日立系システム会社を経てジュエリーのネット通販などを手掛ける会社の立ち上げに参画。その後、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーなどを受賞し、ジュエリージャンル強豪店に育てる。マーケティングの他に、人材の早期戦力化、組織の生産性向上に尽力。現在はアイペット損害保険株式会社にてWebマーケティングを担当。

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