Digital Commerce 360 2020/10/29 8:00

ホリデーショッピングシーズンは小売事業者にとって毎年重要な時期ですが、今年はさらに重要度が増しています。新型コロナウイルスの世界的な大流行によってもたらされた不確実性の影響で、消費者を惹きつけ、コンバージョンを最大化するための課題がさらに複雑化してきているからです。現在、世界の小売売上高の30%がデジタルチャネル経由になり、オンライン販売がかつてないスピードで進んでいます

今回の記事では、2020年第4四半期(10-12月)以降の消費行動の予測、収益の増加、デジタルパフォーマンスの最適化において、リアルユーザーモニタリング(RUM)分析が、小売事業者の収益やコンージョン率向上にどのように役立つか探っていきます。

消費者の期待を上回るデジタル体験へ最適化

消費者のデジタルチャネルへの期待が高まるなか、サイトの速度、安定性、配送への対策が求められています小売事業者は、オンラインショッピングに最適化されたWebページを設計することから始めるべきです。

たとえば、すべてのコンテンツを読み込む前に消費者がページを利用できるようにすることで、小売事業者はユーザーの注目を維持し、サイト離脱を減らすことができます。

CVがピークに達する読み込み時間は2.7秒以下

コンテンツデリバリネットワーク事業、クラウドセキュリティー事業などのAkamai Technologies(アカマイ・テクノロジーズ)の調査によると、ページの読み込みスピードを最高レベルにまで高めることも重要です。

コンバージョンがピークに達する理想的な読み込み時間は2.7秒以下。これよりも遅れる場合は100ミリ秒ごとに、コンバージョンを最大7%低下させる可能性があるからです。

最高のユーザーエクスペリエンス(UX)を提供するためには、小売事業者は、すべてのデジタルチャネルの読み込みスピードを高速化し、デバイス間で一貫したサービス(決済オプションなど)とアクション(ショッピングカートのリアルタイム更新など)を提供する必要があります。

消費者の期待を上回るデジタル体験へ最適化

「RUM」はUXに影響を与えている原因特定に効果的

「RUM」(編注:リアルタイムユーザーモニタリング)は顧客体験に影響を与えている原因を迅速に特定し、対処するのに役立ちます。ページの読み込みスピードを遅らせるスクリプト、画像、サードパーティを特定することが、この分析の最初のステップです。また、パフォーマンスを最適化するためには、サードパーティのリソースに焦点を当てることが不可欠です。

小売事業者は、サードパーティのドメインがどこから提供されているのか、スクリプトがサイトパフォーマンスにどのような影響を与えているのかを追跡する必要があります。また、スクリプトがWebページの読み込みを妨げたり、障害になっていないかを確認しなければいけません。サードパーティのスクリプトの影響を軽減することで、小売事業者はスムーズなカスタマーエクスペリエンスを確保することができます。

コンバージョン率を測定してサイトパフォーマンスを向上

小売店の成功は、カスタマーエクスペリエンスにかかっています。コンバージョンを最大化するためには、消費者が反応したページのパフォーマンスに焦点を当てることが重要です。コンバージョン分析により、消費者が取引を完了する(つまり購入する)ために重要な要素がどこにあるのかを正確に把握しましょう。コンバージョン率は、小売事業者にとって収益の次に重要な指標です。

コンバージョン率を高めるためには、デジタル面の改善を行うことが大切です。購買に至る流れに焦点を当て、ボトルネックを排除することでシームレスなデジタル体験を保証できます。

流入パターンの分析で、コンバージョンへの影響が高いページの傾向を把握

コンバージョン率の向上につながる要素を、小売事業者はどのようにして知ることができるのでしょうか? まずは、Webサイトの流入パターンを理解し、全てのページでユーザーエクスペリエンスをシームレスにすることから始めてみましょう。たとえば、下図のように、流入パターンを分析し、コンバージョンへの影響度が高いと思われるトラフィックの多いページの傾向を探ることができます。

一部の大手小売店におけるカテゴリーごとの1日の平均トラフィック。トラフィック上位3位は「商品」「検索結果」「ショップ」
一部の大手小売店におけるカテゴリーごとの1日の平均トラフィック。トラフィック上位3位は「商品」「検索結果」「ショップ」(画像:『Digital Commerce360』の「How retailers can get results using real-time measurement」から編集部が作成)

流入パターン情報を分析することで、小売事業者は消費者の閲覧や購入行動のインサイトを得ることができます。「コンバージョン・インパクト・スコア・アルゴリズム」(編注:表示速度とコンバージョンが与える影響をサイトのページごとにランク付けする相対的スコアのアルゴリズム)は、ユーザーの行動に基づいて各ページにスコアを割り当てます。そうすることで、どのページがコンバージョン率に最も影響を与えるかを特定し、最大の収益をもたらすページの改善に優先順位をつけることができます。

小売事業者は、コンバージョン率を上げ、ビジネスの収益を向上させるために、毎月「コンバージョン・インパクト・スコア分析」を実施する必要があります。

「What-if分析」で次のステップを決定する

どこを最適化すれば改善が達成されるのか、どのようにして判断するのでしょうか? ユーザーエクスペリエンスを調整する際に、「もしも、ある特定の部分を変更したらどうなるだろうか」と考えるのは自然なことです。

変更の結果、消費者の行動に顕著な変化が起きるのでしょうか? 実際のユーザーデータを見て、特定のパフォーマンス最適化がもたらす影響を予測分析するツールを実装することは、本番環境に変更を加える前に仮説テストをするのに最適です。

分析と測定基準調整のために、「RUM」の使用を検討すると良いでしょう。合成モニタリングは、実情を考慮して設計されていません。“What-if分析“は、小売事業者が現在の顧客データを利用して、ユーザーのエンゲージメントを改善することを可能にします。コンバージョン率を最大化するためには、毎月分析をしなければいけません。

大手小売事業者の「What-if分析」
大手小売事業者の「What-if分析」。この例ではページの読み込み時間を326ミリ秒短縮することでコンバージョン率は3.22%に上がる(画像:『Digital Commerce360』の「How retailers can get results using real-time measurement」から編集部が作成)

季節ごとの傾向は、年単位の継続的なコンバージョン評価が重要

コンバージョン率は静的な値ではなく、外部要因に基づいて変動します。割引やプロモーション、ロイヤルカスタマーか新しい顧客か、サイトの滞在時間によっても変わるでしょう。ホリデーシーズンやそれ以外の時期の傾向を読み取るには、コンバージョンの評価を数年間にわたって継続的に行うことが重要です。

トラフィック数とコンバージョン率を見ることで、小売事業者は自社の業績の全体像を把握することができます。コンバージョンの傾向を前年比で追跡することは、ビジネスの季節性を理解し、収益に最大の影響を与えるプロモーションをいつ実行すべきかを理解する上で非常に重要なのです。

複数の小売事業者を対象とした前年比コンバージョン分析。前年比ではほとんどの小売店で6~7月のコンバージョン率が高くこの傾向は2021年も続くと予想される
複数の小売事業者を対象とした前年比コンバージョン分析。前年比ではほとんどの小売店で6~7月のコンバージョン率が高くこの傾向は2021年も続くと予想される(画像:『Digital Commerce360』の「How retailers can get results using real-time measurement」から編集部が作成)

新型コロナウイルスがもたらす不確実性の中、小売事業者はRUMに焦点を当てることで、ホリデーシーズンの業績を向上させることができます。この機会に消費者行動を見直し、すべてのユーザーエクスペリエンスを最大化するためにサイトパフォーマンスを調整し、継続的に調整できる方法を検討しましょう。

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小売事業者は、リアルタイムモニタリングツールを提供するベンダーを探し、プロセスを教えてもらうと同時に、チューニング機能を使用して、リアルユーザーとボットの両方に対応する必要があります。そうすることで、コンバージョン率を最大化することができるのです。

リアルユーザーのデータは、リテンションの低下、サイト離脱、セッションのクラッシュを防ぐために活用できます。ユーザーエクスペリエンスに関するリアルなインサイトを得ることで、迅速に対応し、オムニチャネル体験を改善し、ホリデーシーズンの顧客エンゲージメントを強化することができるでしょう。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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