よろしければこちらもご覧ください

ECサイトを運営する上で、キャンペーンやバーゲンの初日など、急激にアクセスが増加するとシステムに負荷がかかり、「Webサイトが開けない」「表示スピードが遅くなる」といった事象が起こります。これらは多くのEC担当者、システム担当者にとって共通の悩みでしょう。

今回は11月の「ブラックフライデー」と「サイバーマンデー」を中心としたセール期間にフォーカスを当て、サイトの表示スピードを調査しました。

また、後半ではアクセスが殺到し「ECサイトが表示されない」「購入できない」というニュースで話題になった、「ユニクロ」と「ジル・サンダー」とのコラボ商品のECサイト発売日(11月13日)の状況もレポートします。(この記事はPCでの閲覧をおすすめいたします)

■今回の注目3ポイント

  1. ブラックフライデーセール開催。ECサイトの表示スピードランキングは?
  2. 日本、米国ECサイトの表示スピード差はどこまであるのか?
  3. 「ユニクロ」と「ジル・サンダー」コラボ商品発売日に「ECサイトが見れない」。その時Webサイトは!

コロナ禍におけるブラックフライデーの状況は?

ブラックフライデーとサイバーマンデーは米国のセールイベント。ここ数年で日本にも定着してきました。その年の年末商戦を予測する上で、例年この期間の売り上げが注目されています。

2020年は新型コロナウイルスの影響もあり、「実店舗での売り上げは減るが、Eコマースでのアクセスが例年以上に集中するだろう」と予測されていました。つまり「怒濤のアクセスが起こるのではないか」と。

今回は、2020年11月20日~11月30日までのブラックフライデーセール対象ストアの「表示スピード」「ECサイトの表示快適性」を見ていきます。日本ではブラックフライデーとサイバーマンデーの垣根が曖昧ですが、「イオン」「洋服の青山」に加え、「Amazon」などの外資系ストアがセールを展開しました。これらの結果を、米国のECサイトとの比較も行っています。

ブラックフライデーの大手EC表示スピード対決1位は「Amazon」

「勝手にスピードテスト」では、ブラックフライデーを開催したECモール各社「Amazon」「楽天市場」「トイザらス」「Googleストア」、その他大手ECサイトの全14サイトをピックアップして表示スピードを計測。さまざまな角度で分析・考察しました。

1位から5位のWebサイト表示スピード差はわずか0.6秒という激戦。「Amazon」は今回のブラックフライデーセール期間の前哨戦として、11月20日~11月27日まで「Holidayセール」を開催していましたが、SpeedIndex約1.5秒という、凄まじい表示スピードで1位、2位とフィニッシュを飾っています。

ブラックフライデーセール開催中のECサイトの表示スピードランキング

順位サイト名Speed
Index
(秒)①
Back
end
(秒)②
Start
Render
(秒)③
Size
(MB)④
Request⑤
1Amazon(ブラックフライデーセール)1.370.471.053.25181
2Amazon(Holidayセール)1.530.551.21.49175
3トイザらス1.780.351.01.63194
4楽天市場1.790.581.31.25171
5GoogleStore1.990.571.11.5266
6Macys(米)2.020.751.42.47232
7ディズニーストア2.510.671.75.21101
8Qoo102.630.861.752.53161
9Nordstrom(米)2.640.951.44.92602
10イオン3.141.172.42.15166
11洋服の青山3.161.082.152.56254
12ウォルマート(米)3.920.881.653.42196
13BananaRepublic4.851.072.23.67195
14GAP5.890.812.052.14152
※(米)以外は日本のサイトです

以下の動画で、ブラックフライデーセールにおいて「Gap」「Amazon」のECサイトが表示されるまでの状況、ページが表示されるまでの体感速度が大きく異なる様子が確認できます。

ランキング14位「Gap」、ECサイトでTOPページを表示
ランキング1位「Amazon」、ECサイトでTOPページを表示

大手ECモールは表示スピードがついに1.3秒台、異次元の表示スピード高速化の戦いに突入

今回の計測にあたり、当初の予測では「ブラックフライデーセールは、通常時期と比較してWebサイトの表示スピードが遅くなるのでは」と想像していました。しかし、結果は逆に。大手ECサイトが万全の備えをしてきたのでしょう、むしろ通常時よりも高速に表示させているという様子が計測データから見えてきます。

前回の「EC売上 トップ200サイトの記事」と比較すると、その差は歴然です。1位の「セブンスター貿易」(SpeedIndex 1.69sec)と比較して、今回の「Amazon」のブラックフライデーセールの特集ページ(SpeedIndex 1.37sec)は、さらに上回っていました。

何よりも驚いたのは、上位TOP5はすべて1秒台の表示スピードを達成しているという結果です。これはECの売り場担当者とマーケティング担当者、IT・ECシステム担当者のコミュニケーションレベルが高いことが前提で、同じ目線でECサービスを安定して提供していることを表しているのではないでしょうか

筆者は自身の事業会社(ゴルフダイジェスト・オンライン)のプロダクト、サービスのエンジニアリング、マネージメント経験から、セール時期のECサイトのインフラ対策、トラフィック対策の難しさを痛感してきました。

その理由として、「ECサイトのシステム構成が複雑になる」「運用保守の技術レベルが上がる」「インフラコストが増加する」ということだけでなく、さまざまな課題が潜んでいるからです。

事業会社視点で、もう少し具体的なECサイトのアクセス増加、負荷対策の課題を見てみましょう。

1.コスト増加の課題

事業会社にとって、繁忙期、セール時期のインフラ、システムコストの増加は頭痛のタネです。事業部門はインフラ、システム運用コストを抑え、間接コストを下げたいと考える一方、システム部門は、Webサイトへのアクセスに対して、十分なキャパシティと余裕を持ったインフラ構成にしておきたいという意見の衝突が生じます

2.ECサイトのシステム構成における技術的な課題

ECサイトのフロントアクセスのトラフィック増加時、フロントエンドのアクセスをそのままバックエンドのシステムに流すようなシステム構成の場合、バックエンドのシステム処理能力を超えると処理不能になり、Webサイトが表示されなくなるようなケースは多く見られます。

急激なWebサイトのアクセス増加に対応するには、フロントエンドでのCDN(コンテンツデリバリネットワーク)の活用のみならず、バックエンドシステムに処理が集中しないよう、システム構築、運用エンジニアに高い技術レベルが求められます

3.EC事業部門とシステム部門のコミュニケーションスキル、人員リソースにおける課題

ECおよびマーケティング的な数値と施策に理解があるシステム部門担当者が、対策を進める必要がありますが、技術レベルのみならず、社内事業部門との調整・コミュニケーション力や交渉力も不可欠のため、Webサイトのアクセス負荷対策をリードできるスキルを持つエンジニアは限られているという状況があります

これらは、他人事でなく自分事としてECサイトの負荷対策を推進できる事業会社組織体制、エンジニアのマインドセットがないとクリアできない課題であり、この課題をクリアしないと、ECサイトやマーケティング効果を最大化させることはできないと筆者は強く感じています

ブラックフライデーセールでは、日米のEC表示スピード差はさほどない!

今回、ブラックフライデーセールを実施した米国のECサイト3社の状況を見てみると、ランキング6位のMacy's(デパート・EC)が2.02秒と最も速い表示を示したものの、TOP5の1秒台グループに入ることはできませんでした。

米国のECサイトの計測は、US環境から計測を行っており、日本のインフラ事情が多少良いという点を差し引いても、日米の大手ECサイトの表示スピードにそこまで大きな差はないと言えそうです。

気になったのはウォルマート(米)で、「Amazon」の約2倍以上、表示スピードが遅いという結果が出ました。この点は顧客の購買体験においてマイナスになる可能性があるのではないでしょうか。

「ユニクロ」と「ジル・サンダー」コラボ商品発売日、Webサイトはどうなっていた?!

2020年11月13日、「ユニクロ」のサイトがつながりにくくなりました。「ユニクロ」と「ジル・サンダー」の9年ぶりのコラボ商品「+J(プラスジェイ)」の復活コレクション発売日だったからです。SNSでは「会社を休んで買いに行きたい」といった期待の声があがっていました。

勝手にスピードテスト ユニクロ ジル・サンダー コラボ商品 コラボ商品のページ
「ユニクロ」と「ジル・サンダー」のコラボ商品「+J」のページ

筆者もこの販売開始を楽しみにしていた1人で、発売日の朝10時ごろに「ユニクロ」のECサイトをPCとスマホの2つで開くも、まったくサイトの商品ページが見れない状態でした。この時「『ユニクロ』のECサイトの状態を測定しなければ!」という使命感もあり(笑)、急遽、計測ツール「SpeedCurve」をセットしてみました。

当日は、10時00分~15時00分までECサイトの商品詳細ページは閲覧できませんでした。どういう状態だったのか計測データを確認したところ、グラフの表示スピードが速く見えますが、ほとんどが「エラーページ」の表示となっていました(グラフ赤枠部分)。

勝手にスピードテスト ユニクロ ジル・サンダー コラボ商品 商品ページ計測データ
11月13日の「ユニクロ」と「ジル・サンダー」コラボ商品詳細ページの状況
勝手にスピードテスト ユニクロ ジル・サンダー コラボ商品 商品ページの状況
ECサイトにつながらない状況で、スマホからコラボ商品の商品詳細ページを閲覧した状況
勝手にスピードテスト ユニクロ ジル・サンダー コラボ商品 商品ページの状況
ECサイトにつながらない状況。PCでも同様のエラー画面が表示されてしまう

結局、「ユニクロ」のECサイトが安定して表示されるようになったのは、11月13日の15時過ぎ。

「+J」の商品のみならず、通常商品の詳細ページやカートも閲覧できない状況が発生しており、およそ5時間前後の長い時間、ECサイトにおいて大きな機会損失が発生してしまった点は非常に気になる状況です。

今回の「ユニクロ」と「ジル・サンダー」のコラボ商品販売によるECサイトのアクセス集中は、事前にある程度予想できたことです。売り場担当者やマーケティング担当者、IT・ECシステム担当者がコミュニケーションを図りつつ、事前のECサイトのトラフィック集中対策が不可欠であるということを再認識させられるとともに、人気商品販売の影響により、ECサイトで通常の商品購入がしにくい状況は、顧客満足度という観点でも今後しっかりと対策すべき、象徴的な出来事だと考えられます。

この調査について

従来の一般的な計測ではアイドルタイムと呼ばれる、購入客が少ない午後の時間に計測されることが多く、朝、昼、夜のピークタイムや、土日の計測がほとんどされていませんでした。例えば、メルマガやLINEなどでキャンペーン情報を送った時にサイトがどんな状態になるのかを、ほとんどのEC事業者が知らないのが現状です。

今回の調査では売れている時間帯のコンディションを把握するために、12:30、18:30、22:30の1日3回、比較的高負荷の時間で実施しました。1サイトにつきトップページ、商品詳細ページの2つのURLを計測対象としました。

表の見方

①「Speed Index」……Googleが発表したパフォーマンス指標。ブラウジング開始後、経過時間あたりのファーストビューが何秒で表示されるかを総合的に算出したもの。目標値 4.5秒

②「Backend」……サーバー、NW通信、DNS名前解決を含む、クライアントリクエストを処理するための時間。いわば反応スピード。目標値 1秒

③「Start Render」……空白ページからコンテンツが初めて表示されるまでの時間、ユーザが「Webサイト表示が速い」「遅い」と体感する指標。目標値 2秒

④「Size」……1ページに含まれるファイル(画像、動画、フォント、CSS、JavaScript、HTMLなど)の総量

⑤「Request」……1ページに含まれるファイル(画像、動画、フォント、CSS、JavaScript、HTMLなど)の読み込み個数

誤差や数値の違いについて

今回の計測は、12:30、18:30、22:30の1日3回という、ECサイトにおいて比較的高負荷とされている時間帯に行いました。従来の計測結果と乖離があるとすれば、この時間滞とアイドルタイムの違いが一番の違いとなります。

調査概要

調査期間:2020年11月20日~2020年11月30日までの10日間

調査対象:弊社独自調査でブラックフライデーセール(11月20日~11月30日)を実施した、大手ECサイトを14サイトピックアップ、定点計測を実施しています。

※計測後に正常な値が取得できなかった場合は除外、もしくは24hの補正、追加  再計測を行っている。

計測時間:12:30、18:30、22:30の1日3回

測定プロファイル:iPhone X(4G)、GalaxyS8(4G)、Chrome(cable) ※このうち掲載したのは「iPhone X(4G LTE)」

値の算出方法:期間内の計測結果から各指標の中央値を出し、各ページ(top、item)の平均値を反映。

1回当たりの計測数:3 checks

計測回数:28URL × 1日3回 × 3checks × 3デバイス × 10日間 = 7,560回の計測

エミュレート回線品質(4G):ダウンロード 8.8Mbps/アップロード 8.8Mbps/レイテンシー 170ms

計測ロケーション:日本向けECサイトは東京、US向けECサイトはUS WestCoastのクラウド環境から測定

サイト調査実施:株式会社ドーモ  監修/占部雅一 文・レポート 種村和豊(株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン、スピード研究会)、計測データ集計:北澤佑馬

この記事が役に立ったらシェア!
よろしければこちらもご覧ください

種村 和豊

WEBサイト表示スピード研究会

国内最大手ゴルフポータル企業にて、システム性能改善、Webサイト表示スピード改善を主導、推進。その後、JTB、HIS、サンリオ、オークローンマーケティングなど大手ECを中心にWebサイトの表示スピード改善コンサルティングを支援。

記事カテゴリー: 

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
ecbeing.
[スポンサー]