「また買いたい」と購入客が感じるカスタマーサポートを「Zendesk」で。やずや、I-neの事例に学ぶ最新CRM
消費者が企業に求めるコミュニケーションの期待値は、手段と品質の両面で高まっている。その中で、顧客が好意的に思う企業のコミュニケーションのポイントと、業務効率化にもつながる有効な改善策とは――。2007年にデンマークで生まれ、全世界16万社超、国内3000社超の導入実績を持つカスタマーサポート業務特化型ツール「Zendesk」の公認マスターパートナーであるエクレクトの辻本真大氏(代表取締役)が、やずやとI-neの事例を交えて紹介する。(写真◎Lab)
顧客とのコミュニケーションがファン化と離反を左右する
「カスタマーサポート」というと、一昔前まではクレームを受け入れる場所やコストセンターという印象が持たれがちだったが、カスタマーサポートの担う役割は年々変化しているという。エクレクトの代表取締役 辻本真大氏は、「顧客とのコミュニケーションの良し悪しは競争優位に影響する、企業の根幹とも言える部分」と強調する。
その背景にあるのは、顧客が企業とのコミュニケーションに求める期待値が急速に高まっていることが挙げられる。スマートフォンの台頭により、電話、メール、SNSの投稿などあらゆるコミュニケーションが時間や場所を問わずできるようになった。このため、顧客は「自分が望む形のコミュニケーションをしたい」と企業にも求めるようになっているようだ。
求めるコミュニケーション手段が多様化
トランスコスモスが毎年実施している「消費者と企業のコミュニケーション実態調査2019」によると、昨今の消費者はチャットやメッセージングアプリなどを利用したい一方で、企業側の実装が追い付いていないと感じている傾向にあることがわかった。
また、「好きなときに好きなコミュニケーション手段で問題解決できるとしたら、その企業・ブランドへの購入・利用意欲が高まるか」という質問に対しては、77%の消費者が「とても高まる/高まる」と回答していることから、コミュニケーションチャネルを十分に用意しておくことの重要性が確認できる。
たらい回しや聞き直しのない対応に企業の魅力を感じる
チャネルの用意だけでなく、コミュニケーションの質も重要だ。企業が顧客と良いコミュニケーションをとれれば、実際に購入頻度の増加や他者への推奨をしたという消費者の割合が増え、逆に悪いコミュニケーションをとってしまうと、購入頻度の減少や他社への乗り換えなどにつながったという結果も出ている。コミュニケーションの質は、顧客の「ファン化」を左右する上、口コミの内容次第で企業ブランディングの向上や低下にも影響しかねない。
また、好意的に思う企業やブランドに対して、改善のための意見やアイデアを伝えたり指摘をするという消費者も少なくないことから、製品・サービスの改善を進めていく上でもこうした顧客を増やしていかなければならないという。
消費者が魅力を感じる企業のコミュニケーション対応について聞いたアンケート結果では、先述の通り、コミュニケーション手段の多さと回答した人は8割を超えた。注目すべきは、それに次いで「前回とは異なるコミュニケーション手段で問い合わせしても、それまでの問い合わせ内容が引き継がれている」と回答した人が8割近くいることだ。
例えば、最初に電話で問い合わせた後にメールで問い合わせても、しっかりと話の続きができるような状態を消費者は求めていると言える。
たらい回しにしたり、同じことを聞き直したりしない企業に対して、多くの消費者は「自分のことをわかってくれている」と思っている。これが、魅力を感じる企業の対応として、1つの大きな要因となっている。(辻本氏)
チャネルごとの問い合わせ情報を一元管理する「Zendesk」
コミュニケーション手段が多様化し、1人の顧客がさまざまな手段で企業に問い合わせができるようになった中、その時々で都合の良い手段から問い合わせても、前回とつながった回答が得られるようにするためには人の手だけでは限界があり、オペレーターのスキルに頼った属人化が懸念される。顧客対応のスキルやノウハウが高いオペレーターとコミュニケーションがとれなかった場合には、顧客の離反にもつながりかねない。
顧客対応の品質を一律化し、良いコミュニケーションをとるための仕組み作りに「Zendesk」が役立っているという。
「Zendesk」ではあらゆるチャネルで顧客とシームレスにコミュニケーションをとるための各種サービスを提供しており、チャネルごとの問い合わせ情報を蓄積し、一元管理できるようになっている。また、レポーティングや分析をする機能によって得た結果を顧客対応の施策に活用する企業や、最適なFAQサイトを構築する機能によって、人の手が必要な問い合わせの件数を大幅に減少させている企業の事例も増えているという。
「Zendesk」の持つ3つの特徴
「Zendesk」は以下の大きな3つの特徴を持ち、顧客とのコミュニケーションを重視する幅広い規模の企業で導入が進んでいるという。
- 「統合的なコミュニケーション基盤」を素早く構築できる
- 顧客の自己解決を促すFAQサイトや、個々の従業員が持つ知識やノウハウなどを企業内で共有するためのナレッジ管理サイトを簡単に構築できる
- あらゆる製品とつなぐことができ、自社に必要な機能をアプリケーションでアドオンできる「拡張プラットフォーム基盤」となっている
やずやとI-neの導入事例を紹介
やずやと、ボタニカルライフスタイルブランド「BOTANIST(ボタニスト)」などのブランドを展開するI-ne(アイエヌイー)における「Zendesk」の導入事例を紹介する。
アナログ手段による問い合わせが多いやずや
やずやの顧客層は中高年の比率が高いため、問い合わせや「お客さまの声」は手紙やFAXなどアナログな手段から多く寄せられている。従来から顧客対応に力を入れており、オンプレミスの仕組みで業務を回していたが、将来性や拡張性を考えた上で「Zendesk」の導入を決めたという。
やずやは寄せられた問い合わせや「お客さまの声」に対して、製品・サービスをどのように改善したのかまですべて管理しているため、「Zendesk」の導入の際は特にレポーティングにこだわり、オリジナルで取得したい指標をレポート用のCSVで出力できるようにした。さらに、手紙やFAXで寄せられた声を登録し、回答やお礼の返信用の文章をWordファイルで生成するアプリケーションを組み込んで、サービス改善と生産性の向上を図っている。
多くのブランドを展開するI-ne
I-neは従来、メール管理システムやFAQ管理システムなど、チャネルや用途ごとに別々のシステムを利用していた。システムごとに分けられていた情報を一元管理して業務の均一化と効率化を図るため、「Zendesk」を導入したという。
I-neは多くのブランドを展開し、ECサイトを運営しているが、どの店舗からどのチャネルで問い合わせが来ても「Zendesk」に集約されるため、対応の効率化が図れるようになった。また、利用している受注管理システムとAPI連携し、問い合わせが来た際はその顧客の注文情報や顧客情報など、問い合わせ対応に必要な情報をすぐに参照できるようにして、漏れのない対応ができる仕組みにしている。
やずやとI-neの事例のように、独自の取り組みや強みに対しては、「Zendesk」の基本機能にほかの仕組みをアドオンしたり連携したりして、自社の業務によりフィットさせることが重要だ。「Zendesk」に限らず、自社に合ったツールの組み合わせをしていくことが成功の秘訣だと考えている。(辻本氏)
ルーチンワークを自動化し、人の手による業務を省力化
「Zendesk」は、自動化や半自動化できることはツールの機能でまかない、人は「人が対応すべきことだけに集中しよう」という考えを主眼に置いて開発されている。やずややI-neをはじめ、導入各社はルーチンワークをいかに減らせるかということも重視しており、人の手が掛かっていた業務を省力化できたことで、ほかの業務に集中できる余力が生まれているという。
まとめ ~顧客の期待に応えるカスタマーサポートのポイント~
コミュニケーション手段が多様化し、年々高まる消費者の期待に応えていくためのカスタマーサポートのポイントを以下にまとめる。
① カスタマーサポートは「顧客とのコミュニケーション」
「カスタマーサポート」は単純にクレームの受け入れ口や問い合わせ先という位置付けではなく、顧客とのコミュニケーションを担う重要なポジションである。
② コミュニケーションで顧客はファンになり、消費行動が変わる
コミュニケーションの良し悪しが顧客のファン化、もしくは離反につながり、その後の消費行動にも大きな影響を与える。顧客満足度の高いコミュニケーションをとることによって、競争優位性を見出すことができる。
③ コミュニケーションの一環としてFAQサイトがあり、社内FAQ整備も重要な要素
FAQサイトは顧客とのコミュニケーションの一環であり、軽視できないチャネルの1つと捉えるべき。また、社内に蓄積したナレッジは社内FAQとして整備しておくと、オペレーターの対応が均一化でき、属人化の防止につながる。
④ 「レガシーシステムから乗り換え」「統合」「拡張性」「将来性」
サービス品質や業務内容をより良くしていくために、自社で利用している既存システムだけに固執するのではなく、システムの乗り換えも視野に入れた改善施策が重要だということが、やずやとI-neの事例から学べる。システムの乗り換えを検討する際は、「統合(=複数のシステムを統合して効率化を図る)」、「拡張性(=自社に必要な機能を組み込んで独自性や強みを伸ばす)」、「将来性(=自社のビジョンと共鳴できるシステム)」を念頭に置くことがポイントだ。