法人営業・取引のDX化で業績向上をめざす!業務の効率化を実現する成功方法とは
コロナ禍以降、多くの企業の法人営業部門が非対面営業を推し進めている。オンラインツールを活用した営業が増えているものの、営業担当者と客先とのコミュニケーション不足、オフライン作業から脱却できない営業プロセスなど、さまざまな場面で課題が見えてきている。サイト構築やデジタルマーケティング事業などを展開し、約20年間で1300サイト超の支援実績を持つecbeingの富永成幸氏(Eビジネス営業本部/常務執行役員)が、法人営業のデジタル化を推進し、業績向上につなげるポイントについて解説する。(写真◎Lab)
コロナ禍以降、求められる法人営業の変革
コロナ禍における「ニューノーマル」によって、生活様式だけでなく、企業の働き方や事業にも急速な変化が求められた。業務の中でも、特に企業を悩ませているのが法人営業だ。従来は直接訪問することが一般的だったが、非対面営業へとシフトチェンジしなければならないなど、BtoBの購買・営業行為の変革は多くの企業にとって急務の課題となっている。
しかし、製造業では実に6割以上が「購買・営業活動のオンライン化に関心がある」と回答したほどオンライン化が進んでおらず、日々発生する購買・受注業務でFAXを使用しているために出社せざるを得ない「FAX社員」がいまだに多く存在しているのが現状だ。
進まないオンライン化で売り手・買い手双方の業務に影響
販促や引き合い獲得、在庫・納期の問い合わせなど、オンライン化が進まないことによって、売り手と買い手、双方の業務に影響が生じている。
「ニューノーマル」における企業のあるべき姿とは
「ニューノーマル」の中、企業のあるべき姿として以下が特に求められている。
- ビジネス環境の急激な変化
- 業務プロセスの弾力性(人と人との業務が柔軟につながる)
これらを実現するために、各社とも「業務をデジタル基盤にのせる」という考え方が加速化している。企業間の営業・購買手法も変化し、以前にも増してインターネットを利用した業務がますます増えていくと予測されているため、営業スタイルもコロナ禍の急場しのぎに限らず、対面やオフライン主軸の従来型営業から変化を続けていく可能性が十分に考えられるという。
BtoB向けECサイトのDX化
営業現場のDX化を促進させる3つの要因
客先に直接出向き対面で商談をしていた営業現場でデジタルトランスフォーメーション(DX)化が急速に進みつつあるが、コロナ以前から3つの大きな変化が生じていた。
- 購買行動の変化
⇒消費生活の中でも、インターネットを通じた購買行動が当たり前になっている。 - 労働人口の減少
⇒少子化に伴い人材が不足し、働き方改革によって一層の作業効率化が求められている。 - 間接資材のネット販売の台頭
⇒豊富な品ぞろえと潤沢な在庫を保有し、短納期が可能な間接資材通販大手が台頭している。
そこにコロナ禍が拍車をかけるように、営業現場のDX化を一気に推し進めようとする動きが活発化しているものの、以下の通り、多岐にわたって従来型営業活動の阻害要因が発生しているのも事実だ。
DX化の阻害要因となる従来型営業活動
- 既存顧客のフォロー
- 見込み顧客の発掘
- 商談機会の創出
- クロージング、契約
- アップセル、クロスセル
- 顧客のロイヤル化
オンライン商談ツールの活用で見えた課題
コロナ禍以降、オンライン会議ツールやウェビナー、ECなどの活用は急拡大した。営業現場においても営業担当者が直接客先を訪問する必要がないよう、オンライン商談システムの活用も主流となりつつあるが、その課題も見え始めている。
BtoBサイトの構築だけでは営業のデジタル化にはならない
営業担当者が出張や客先訪問をできない状況下でも営業活動をストップさせないために、BtoBサイトを構築しようとする企業の動きも見られる。しかし、単にBtoBサイトを構築するだけでは従来のリアル営業がそのままデジタルの営業活動にシフトチェンジするわけではないため、クライアント側の利用が促進しにくいといったさまざまな課題が伴いがちだ。
こうした課題を解決するために、富永氏は「現行のBtoB向けECサイトのDX化」を提唱している。
ecbeingは2020年5月、営業に特化したウェブツール「WEBセールス・オフィス」の提供を開始した。客先への商品紹介や問い合わせ対応といった営業活動に、個々の営業担当者がECサイトを身近に活用できるツールとなっている。
営業プロセスでは受注に至るまでのあらゆる段階で、訪問やオフラインによるやり取りが必要となるシーンが多かったが、「WEBセールス・オフィス」は、リード獲得とアポイントから先のプロセスは完全にデジタルシフトできるツールとなっている。
法人営業のデジタルシフトとDX化のポイント
「WEBセールス・オフィス」が導入企業から評価されている機能の事例を交え、法人営業のデジタルシフトとDX化のポイントについて解説する。
客先が慣れなければ利用は進まない
時間とコストをかけてBtoBのECサイトを構築しても、営業先の企業がサイトの使い方に慣れないことで利用が進まなかったり、サイト経由の注文が入らないといったケースや、結局従来通りのFAXや電話によって注文が送られてくるケースが散見されるという。
自社だけでなく客先のデジタルシフトも促進するためには、営業担当者が顧客と同じ画面を閲覧し、リモートでコミュニケーションを取りながら操作指導や代理注文をする仕組みが有効だという。
営業先の企業や担当者がネットの利用に対して抵抗感を持っていても、2度、3度と同じ目線で操作説明をすると大半のクライアントは操作に慣れてくるもの。法人営業がデジタルシフトするきっかけは、まず営業先の企業が利用に慣れてくれることだ。(富永氏)
各営業担当者から客先ごとに最適な提案
企業の本部主導で運用するBtoBサイトだけでは、営業担当者とクライアントとのコミュニケーション不足につながりかねない。従来型の営業でクライアントごとに最適な提案をしていたように、オンライン商談でも営業担当者からクライアントに対して販売したい商品の情報を直接配信して販促活動ができたり、それぞれに合った最適なコンテンツを提供していくことが重要だ。
その際、「WEBセールス・オフィス」のように、各営業担当者と、担当しているクライアントをダイレクトにつなぎ商談できる仕組みが有効となる。
デジタル営業の安全性と利便性を高めるための機能
企業の本部主導のBtoBサイトではなく、営業担当者ごとに各クライアントに対して営業活動が可能となる「WEBセールス・オフィス」では、安全性、利便性、営業先からの信頼性をより高めるために、以下の機能を備えている。
① セキュリティー対策
営業担当者が持ち歩くPCやモバイル端末から各クライアントへの営業活動が可能となるため、ワンタイムパスワードでログインする機能を搭載し、堅固なセキュリティー対策を実施。
② 名刺に代わる機能
名刺交換や直接対面をしていなくても誰が担当しているかわかるように、営業担当者の顔写真やプロフィールを確認できる画面を用意。
③ 営業活動の状況確認
リモートワークが進む中でも企業側が営業担当者の稼働管理ができるよう、各営業担当者の稼働状況やオンライン商談による注文数、注文金額をリアルタイムで把握できる管理画面を用意。
④ バーチャル応接室
クライアント側から過去の見積もり履歴や注文履歴が閲覧できるほか、営業担当者が提供してきたコンテンツやトピックス、イベント情報、商品セールス情報などが共有でき、実際の応接室のようにサイト上でコミュニケーションをとりながら営業活動ができる機能を構築。
法人営業のデジタル化が業績アップにつながる秘訣3つ
富永氏によると、法人営業のデジタル化が業績向上につながるポイントは、以下の3つにまとめられるという。
- 営業部門のOMOを実現し、売り手と買い手の生産性向上・業務効率化を目的とする
- 新サービス・商材のアピールなど、リアル展示会に代わる営業部門のデジタルプラットフォームとして活用する
- 「商品をサイトで売る」という概念ではなく、営業部門が主体的に活動する場となるようなサイトを構築する
日本企業は特に足で稼ぐ営業が多かったため、コロナ禍以降、「BtoBの販売・営業をどのように進めるべきか」という相談が増えているという。
単にBtoBのECサイトを構築するのではなく、デジタル化する上でもこれまでのリアル営業で蓄積したノウハウを十分に生かしていかなければならない。DX時代の法人営業は、モノを売るだけの営業から無形の価値を提供する顧客サービス事業へと転換していくことで、顧客とのエンゲージメントがより強固になるとしている。
将来的に営業職はなくなると言われているが、そうは思わない。営業担当者をどう伸ばし、どう生かすか、リアル営業をどうデジタルシフトするかが企業にとっての最大の課題だ。(富永氏)