吉野 巨人 2021/1/19 9:00

Instagramは利用者ごとの興味・関心に合わせてコンテンツを表示するため、「商品が顧客を見つける」という発見型コマースを実現することができます。さらに購買までの行動をシームレスに引き起こし、Eコマース事業者のビジネス成長に貢献できるプラットフォームになっています。

Instagramのプラットフォームとしての強みについてこう話すFacebook Japanの丸山祐子氏(コマース事業部 Industry Manager)。withコロナ時代の今、InstagramがEコマースビジネスに与える影響も大きくなっている。国内利用者のインサイト情報を踏まえ、Eコマース事業者が押さえるべき、Instagramのビジネス活用法について丸山氏が解説する。

Facebook Japanの丸山祐子氏(コマース事業部 Industry Manager)
Facebook Japanの丸山祐子氏(コマース事業部 Industry Manager)

日本の月間アクティブアカウント数は3300万

Instagramのグローバルでの月間アクティブアカウント数は10億超。日本の月間アクティブアカウント数は2019年3月に3300万まで拡大している。利用者属性は「男性:43%」「女性:57%」で、男性の利用者も半数近い

Instagramの月間アクティブアカウント数推移
Instagramの月間アクティブアカウント数推移

ビジネスからの情報発信にも好意的で、積極的につながる利用者が多く、「Instagram上で何らかのビジネスをフォローしている利用者の割合」は90%にのぼる。

利用者は興味関心とつながるためにInstagramを訪れており、好きなブランドや商品との出会いを楽しんでいます。(丸山氏)

Instagram利用者はビジネスとつながるケースが圧倒的に高い
Instagram利用者はビジネスとつながるケースが圧倒的に高い

Facebookが委託した外部調査「Project Instagram」によると、国内利用者の83%がInstagram上で「新しい商品やサービスを発見する」と答え、81%が「商品やサービスを検索」すると回答。80%の利用者が「商品やサービスを購入するか決める」のにInstagramを使っているという。

Instagramが購買行動に与える影響は大きい
Instagramが購買行動に与える影響は大きい

米国では2020年、新型コロナウイルス感染症拡大により、2か月間で米国小売業におけるEコマース比率が27.0%に拡大。「これまでの10年に匹敵するぐらい、一気にデジタル化が進んだ」(丸山氏)

2009年は5.6%だったEコマース比率は、10年後にあたる2019年に16.0%。2020年には27.0%台に一気に突入した
2009年は5.6%だったEコマース比率は、10年後にあたる2019年に16.0%。2020年には27.0%台に一気に突入した

日本でも買い物をECサイトで行う利用者は拡大。「従来実店舗で購入していたものをオンラインで購入した」と回答した国内消費者は1.6倍も増えた。18~34歳の生活者のソーシャルメディアでの購入率は、35歳以上と比較して2.1倍も高いといった調査結果(Kantar Profilesの「Industry Micro-Shifts Monthly Tracker」(Facebookの委託によるオンライン調査))もある。こうしたことを踏まえ、丸山氏は次のように話す。

顧客とのタッチポイントがデジタル化していく中で、Instagramでのコミュニケーションの重要性が高まっています。(丸山氏)

ショッピングにおけるソーシャルメディアの役割
ショッピングにおけるソーシャルメディアの役割

Instagramが実現している発見型コマースとは?

Eコマースを活用する際、これが欲しいというモノがあってECサイトを訪問して購入するのが一般的でしょう。しかし、それでは購入者がすでに知っている商品しか見つけることができません。Instagramは、利用者ごとの興味・関心に合わせてコンテンツを表示する仕組みなので、「商品が顧客を見つける」という発見型コマースを実現できるのです。(丸山氏)

一般的なコマースと発見型コマース instagram
一般的なコマースと発見型コマース(画像右)

このように、丸山氏が強調するキーワードは“発見”。利用者の興味・関心に合わせてコンテンツを表示するアルゴリズムを通じて、利用者とビジネス側をマッチングするのが、Instagramが実現する「発見型コマース」という。

丸山氏によると、Instagram利用者は興味・関心にまつわるコンテンツを見たいという状態でInstagramを訪れる。その利用者に対して、興味・関心に合わせたコンテンツをパーソナライズして表示するため、「認知から興味・関心を喚起するのではなく、興味と認知を同時に引き起こすことができるのです」(丸山氏)

Instagram 「発見型コマース」の特徴
「発見型コマース」の特徴

Instagramは、利用者の興味・関心を先回りして適したコンテンツを配信、発見から意欲、購買までの行動をシームレスに引き起こす仕組みとなっている――。これがInstagramの強みと丸山氏は説明する。

Instagram内での利用者の閲覧内容、アクション、Facebookピクセル(利用者がWebサイトで行っているアクションを把握する機能)、SDK(Software Development Kit)、カスタマーデータファイルなど、オフプラットフォームでのデータなども加味し、利用者ごとに表示すべき内容を機械学習します。このような機械学習から利用者にとって親和性の高い内容をパーソナライズして表示することで、ビジネス側から見ると購入可能性の高い人にターゲティングしてリーチできるという利点があります。その後、利用者がWebサイトへ遷移して商品を購入した場合、さらにその情報を元に最適化が行われていくというのが発見型コマースの仕組みです。(丸山氏)

Instagram 「発見型コマース」の仕組み
「発見型コマース」の仕組み

Instagramでは「発見型コマース」の強化を進めるため、さまざまな機能を拡充している。

FacebookやInstagramなどでカスタマイズ可能なオンラインショップを無料で公開できる「ショップ機能」利用者に合わせて商品やブランドの投稿を表示する「Instagramショップ」などの機能がその代表例となる。

現在、米国ではInstagram内で決済まで可能なチェックアウト機能、ライブショッピング機能、プロダクトのローンチスタンプから商品が購入できる機能などをテストしている。よりエンターテインメント性の高いショッピング体験、スムーズな購入体験を提供するために機能強化を進めていくという

コマース関連機能を強化しているInstagram
コマース関連機能を強化しているInstagram

シームレスな買い物体験を実現する「ショッピング機能」

Instagramが2018年に国内で導入したショッピング機能は、投稿に写っている商品に値段などのタグを付け、アプリ内で商品詳細ページを表示、さらに外部のECサイトに送客することを可能にした。この機能によって、「商品が気になった利用者はタグをタップして商品詳細を閲覧、そこからECサイトにシームレスに遷移して購入までできるようになりました」(丸山氏)

丸山氏によると、このようなショッピングタグが付いている投稿から商品詳細を見る日本の利用者の割合は、グローバルに比べて3倍も高いという。

また、ショッピングタグが付いている投稿などから商品詳細を見た2020年の国内利用者の割合は、前年比で65%も増えており、Instagram上で商品やブランドとの出会いを楽しみ、ショッピングを体験している利用者がすでに多くいることが見てとれる。

通常のフィード投稿とショッピング機能を利用した投稿
通常のフィード投稿とショッピング機能を利用した投稿

無料でオンラインショップを開設できる「ショップ機能」

InstagramやFacebookなどでオンラインショップを無料で公開できる機能「Facebookショップ」を国内導入したのは2020年6月。FacebookやInstagramなどのファミリーアプリ上で単一のショップを開設し、ブランドイメージに適した雰囲気などへのカスタマイズができるのが特徴だ。

従前の「Facebookページショップ」「Instagramショッピング機能」では、プラットフォームごとにユーザーインターフェイス(UI)が異なるため、事業者は別々に運用する必要があり、利用者から見たブランドイメージも統一しにくいといった課題があった。

しかし、この機能の実装で、事業者は「コマースマネージャ」でショップを一括管理することが可能になったため、運用上の負担を軽減できるようになる。

Instagaram Facebook プラットフォームに関わらず、一元管理できる
プラットフォームに関わらず、一元管理できる

また、テーマに合わせて商品を分類して表示することができる「コレクション」を使って商品をわかりやすく表示したり、UIの色を変更するなどのカスタマイズもできるため、事業者の世界観をより表現しやすくなった。

ショップは全画面で表示されるため、没入感が高く、より多面的にブランドの世界観を表現しやすくなりました。(丸山氏)

Instagram コレクションでテーマに合わせて自社の商品をまとめることができるようになった
コレクションでテーマに合わせて自社の商品をまとめることができるようになった

ショップ機能を利用する方法

Facebookページショップ、Instagramショッピング機能をすでに利用している事業者は、自動的に新しいショップ機能へ移管される。該当する事業者はアプリ内通知・メールでお知らせが届くという。

ただ、Facebookページショップ、Instagramショッピング機能を利用していない場合は、申請利用を行ってから移行を待ってほしいとしている。

Instagramのショップ機能を利用する方法
ショップ機能を利用する方法

「Instagramショップ」で利用者と商品の出会いを促進

Instagramにおけるショッピング体験をさらに充実させるため7月にリリースされた新機能「Instagramショップ」は、ショッピングタグを使っている投稿やブランド、「ショップ機能」で作った「コレクション」が、利用者ごとにパーソナライズされて表示される。

当初は発見タブからアクセスできる機能だったが、10月にはアプリ画面のデザインを一部変更し、Instagramショップ専用のタブを設置。利用者が自分の好みに合ったブランド、商品をウィンドーショッピングのように閲覧することを可能にする。丸山氏は、「ビジネスにとっては新たな顧客にリーチできる場所が増えた」と言う。

7月末にリリースされたInstagramショップ
7月末にリリースされたInstagramショップ

アプローチできるオーディエンスを広げる方法

InstagramなどSNSをビジネスに活用する場合、フォロワー集めに傾注してしまうケースがある。だが、フォロワーだけへのアプローチには限界があり、商圏が狭まってしまう。そこで、丸山氏が勧めるのが広告を活用し、ターゲットとなるオーディエンスを広げる方法だ。

たとえば、F1層をターゲットとするビジネスの場合、10万人のフォロワーを獲得しても、それは人口の約1%程度。インフルエンサーを活用しても、その人が持つフォロワーのうち、F1層がどれだけいるのかによって限定的なリーチになってしまう懸念もあります。こうした課題を解決するのが広告の活用です。本来ターゲットとする利用者へ確実にリーチすることが可能になります。(丸山氏)

Instagramは本来ターゲットとしたい利用者へアプローチできる
Instagramは本来ターゲットとしたい利用者へアプローチできる

InstagramではFacebook社が保有するビッグデータを活用。利用者のアクションデータ、クリック率やコンバージョン率などのアクションデータから、利用者ごとに最適な広告をパーソナライズして配信している。そのため、「Instagram内外での利用者の情報の量や質を上げていくことが、見込み客への広告配信の精度向上につながります」(丸山氏)

Instagram広告の配信の仕組み
Instagram広告の配信の仕組み

Eコマース事業者が広告を出稿する場合、新商品ローンチやセール期間など、一定期間のキャンペーンを通じてリーチやブランド認知を目的としたもの、もしくは売り上げや購入意欲の醸成を狙うために恒常的に広告を掲載する場合に大別される。丸山氏は、これら異なる目的の広告を使い分けることが重要だと強調する。

Instagram広告の使い分けについて
Instagram広告の使い分けについて

広告メディアとしてのInstagramも変化を続けている。順調にコミュニティが拡大したことによりインプレッションの量が爆発的に伸び、結果として2020年のCPM(インプレッション単価)は2017年と比べると4割も減少している。圧倒的な在庫増によって、「非常に安価に広告の掲載が可能となっています」(丸山氏)

これから広告を始める、注力するといった事業者に向けて丸山氏が強調するのが、「KPIに合わせた正しいキャンペーン設定をする」ということ。

Instagram広告は、リーチ、ブランド認知度、動画再生数など目的に合わせて配信を行うことが可能。たとえば、「動画再生数」や「長時間の動画再生」の最適化を目的とした場合、同じ金額を投じてもリーチできるオーディエンスが小さくなります。リーチの最大化を目的とする場合は、リーチ目的を選択することで、CPMやリーチ単価を抑えることができます。(丸山氏)

広告の目的によって配信結果が変わる
広告の目的によって配信結果が変わる

現在、新型コロナウイルス感染症拡大によって急速に拡大するEコマース市場。こうした状況を踏まえ、丸山氏は「Instagramは今後もコマース関連機能の拡充に注力し、さらに進化を続けていきます。それらの機能に加えて広告を活用することで、自社のビジネス成長にInstagramを役立てていただきたい」と呼びかけた。

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