森田 秀一 2021/2/1 8:00

「BtoB-EC」という用語が定義するところは実に幅広い。個人商店が文房具卸のECサイトから鉛筆1本を仕入れるのもBtoB-ECであるし、一方で自動車産業における複数国にまたがる部品調達も、EDIで行われていればBtoB-ECの定義に含まれる。

よってBtoB-ECを的確に論じるには、その事業規模、販売側(サプライヤー)と購入側(バイヤー)の関係性、再販の有無などで分類・類型化し、あらかじめ念頭に置いておくことが重要となる。ここではEDI以外のBtoB-ECの類型について解説する。

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① 販売手法による分類

BtoB-ECにおける購入側が、取り扱われる製品を自ら消費したいのか、あるいは再販(仕入れて販売)したいのかによる分類。

1. 直販型

購入側の法人・事業主が製品をそのまま消費することを想定して運営されているECサイトや、工場などで使われる間接資材などを販売するECサイト。オフィス用品通販の「ASKUL」(運営:アスクル)「たのめーる」(運営:大塚商会)、工具・現場金物通販の「モノタロウ」(運営:MonotaRO)、精密機械部品を販売する「MISUMI-VONA」(運営:ミスミグループ)などが代表的である。

また、BtoC-EC(一般コンシューマー向け)で最大手のAmazonにおいても、法人や個人事業主向けに「Amazonビジネス」を展開している。掛け払いへの対応や大量注文への対応等、法人利用を前提とした機能やサービスが備わっているが、Amazonや楽天市場などのBtoC-ECとほぼ同様の利用感が確保されていることが多い。

政府や自治体を対象とする「BtoG(Government)」も概念的には同じである。

直販型BtoB-ECサイトの例
直販型BtoB-ECサイトの例

2. 再販型

購入側の法人・事業主が、製品を別の小売店・ECサイト・一般消費者へ再販売することが想定されているECサイトないしサービスのこと。アパレル・雑貨を中心とする「スーパーデリバリー」(運営:ラクーンコマース)、「NETSEA(運営:SynaBiz)」などが代表的である。「問屋」「仕入れ」「卸売」などを前面に押し出したサイトは、大小すべてこちらに含まれると考えて良い。

再販型BtoB-ECサイトの例
再販型BtoB-ECサイトの例

② 販路管理による分類

BtoB-ECの領域では、それまでの取引慣習や実績などに応じて、商品取引の可否自体を調整するケースが多く見られる。「取引先A社には全商品を販売するが、取引先B社には特定カテゴリーの商品しか販売しない」といった例である。

よって、個別の取引先ごとに取扱品目を変更する、あるいは価格を調整するといった機能が、日本のBtoB-ECでは必ず求められる。サイト構成の視点から見ると、具体的には3つの形態がある。

1. オープン型

会員登録の有無などに関係なく、利用者全員に同一価格・同一販売条件を開示し、広く販売する形態。大量注文時の割引条件なども基本的には統一されている(一部顧客にクーポンを発行する等の対応は行われている)。知名度の高いBtoB-ECサイトは、オープン型で運用されていることが多い。

2. セミクローズド型

誰でも取扱商品の閲覧はできるが、価格は会員登録者にのみ表示する方式。会員登録申請があった場合、運営側は審査を行い、取引可否の判断を行う。また、販売価格や掛販売の与信枠等を設定する。

3. クローズド型

サイトを閲覧するためにID・パスワード等によるログインが求められる方式。ログインしなければ取扱商品の細目・価格などは一切表示されず、何も閲覧できない。この場合は集客的な機能は持たせず、単純に円滑な取引のツールとして活用する。また、ECに抵抗感のある販売店が立場的に強い業界などの場合は、ECサイトの存在そのものを告知しないケース等もある。

Webサイトからの新規会員登録を受け付けず、それまで取引のある客にのみ、オフラインでログイン用ID・パスワードを渡すといった運用もおこなわれている。

③ 運営目的や販売対象による分類

販路管理の要素とも重なるが、BtoB-ECでは販売側─購入側の関係性にも、より注意する必要がある。そもそもBtoBは「継続取引」の色合いが濃く、いわゆる“一見(いちげん)”の関係は少ないとされ、一度取引関係が構築されれば、日ごと、週ごと、月ごとにリピート注文が発生するケースが大半である。しかしそれだけに、新たな客を見つけて「新規取引」へと至るハードルが高い

1. 既存取引先との取引円滑化

従来の電話やFAXといった非効率な取引をECサイト上で行うことで業務を効率化し、既存取引先との取引を円滑化する。クローズド型で運営されることが多い。

電話応対等の担当者を置くことなく、24時間365日体制で受注受付ができる。また在庫状況をリアルタイムでECサイトに表示すれば、在庫確認のための電話応対をその都度行う必要もなくなり、販売側・購入側ともに業務効率の向上につながる。在庫・価格・出荷状況などのやりとりを画面上で表示できるので問い合わせなどの削減効果がある。

2 新規顧客の獲得

検索エンジンからの流入やリスティング広告などの施策を通じてECサイトから新たな取引を獲得できる。BtoB取引の場合、ルートセールスが受注、納品、料金の回収を担っているようなケースもあり、特に物流面を担う場合には商圏が限定されることがある。しかし、インターネットを通じた取引では場所の制限を受けないため、遠方や僻地などの顧客も開拓することができる。1社ずつの取引規模は大きくないがまとまると一定の売上に繋がる。

理論上、ECサイトは開設さえしておけば、日本国内はもちろん全世界の顧客に対して、商品を販売するためのアプローチが可能ではある。とはいえ、無数にあるECサイトの中から自社ECサイトを発見してもらうためには、検索エンジンからの流入を増やすためのSEO、あるいはリスティング広告などによる集客・マーケティング施策等が欠かせない。

こうしたインターネットならではの集客は、チラシや業界紙への広告、電話営業などとはまた別種の顧客層へアクセスできる。たとえば雑貨卸店が新規顧客を獲得したいとして、これまでであれば普段のルート営業の際、街で新しくオープンした雑貨小売店などを発見した場合に飛び込み営業をかける等、手段はごく限られていた。

しかしリスティング広告を活用すれば「雑貨卸」などのキーワードで検索しているユーザーに対してはもちろん、それよりはるかにピンポイントな「写真立て 仕入れ」「ポーチ 仕入れ」「サンダル 業務用」などのキーワードで検索をするユーザーに対しても、広告を出すことができる。

つまり「新規顧客」を獲得したい企業にとっては、まずBtoB-ECサイトを構築・開設することが、その攻勢の第一歩となるのだ。

3 その他の目的

本・支店間や本部と店舗間などの社内発注をデジタル化するといった使い方や、福利厚生を目的とした従業員向け販売(BtoE:Business to Employee)などでも、BtoB-ECの仕組みが使われるケースもある。

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