森田 秀一 2021/3/22 8:00

前回はBtoB-ECの業態を販売手法、販路、目的などで分類した。今回はBtoB-ECの導入によってもたらされる具体的な効果について確認する。

BtoB-ECのメリット①
業務効率化や負担軽減

聞き間違いや読み間違いなどの受注ミスが減る

至極当然のことではあるが、人同士が主に「声」でコミュニケーションする際は、聞き違いや勘違いが発生しやすい。これは企業間の取引においても変わらず、たとえば電話で「いち(1)」と「しち(7)」を聞き間違えて発送すべき商品を誤るなど、深刻なミスが発生する可能性がある。

また文字ベースのFAXだからといってミスが発生しないとも限らない。FAXの送信画質は必ずしも完璧とはいえず、小さな文字などの場合は、書き手のクセなどによって「1」「7」「9」の判別ができず、結局電話で確認するといった手間が発生しがちだった。

BtoB-ECでは、原理的にこうしたトラブルを回避できる。当然、操作ミスの可能性は捨てきれないが、注文の最終確認画面を出したり、あるいは注文の控えをメール送信したりするなど、ミス抑制に関する様々な作業を極めて効率的に行える。また電子的なデータが各ステップで残るため、万一トラブルが発生した場合の責任所在を後から確認することも容易になる。

ファックスや口頭でのやりとりで発生しがちな間違いのでの読み間違いのイメージ

問い合わせ対応業務を削減できる

ビジネスの現場では、具体的な受注手続き以外にも、販売側・購入側の間ではコミュニケーションの手間が多々発生する。見積書の発行はその一例であろう。特にBtoB取引の場合、客先によって販売価格の条件が逐一異なるケースが多く、見積書の作成には想定以上の手間がかかりがちである。また、購入側も、社内承認の都合上、見積書を省略できないケースが往々にしてある。

BtoB-ECシステムの大半では見積書作成機能が標準的に組み込まれている。販売側にとっては、人手を割くことなく見積書を発行でき、また購入側も見積書をいつでも入手できるようになる。加えて、数量や商品などの条件を変えて合計額を複数パターンで確認する、なども容易にできるようになる。

またシステムの設計にもよるが、基幹システムや在庫管理システムとBtoB-ECを連携させれば、在庫確認や出荷状況の連絡・確認の問い合わせも削減できる

その他、時期によって価格が変動する商品などでは、販売側が価格表を定期的に顧客に配布したり、価格に関する問い合わせに対応したりしているため、BtoB-ECサイトで価格情報を提供することで、これらの問い合わせ対応業務についても大幅削減が期待される。

BtoB-ECのメリット②
営業体制の強化と売上・利益拡大

受注機会を拡大できる

従来の対面営業や電話での受発注の場合、販売側、購入側ともに都合の良い時間帯でなければ、取引をすることができない。また、FAXやメールでは当然ながらリアルタイムのコミュニケーションは不可能で、在庫の有無や納期などをその場で確認することができない。

それに対してBtoB-ECでは、受注担当者を常駐させることなく注文を受け付けることができる。加えて、いわゆる9時~17時といった営業時間以外でも24時間365日体制でシステムを稼働させられる。たとえば深夜営業を行う飲食店が、営業終了後の深夜26時を過ぎてから在庫状況を鑑みて材料を注文できるようになるなど、購入側の企業にとっても自社の都合が良い時間に在庫の有無や納期も見ながら注文することができる。

またBtoB-ECシステムの多くは、PCのほかにスマートフォンからも利用できる。PCを設置できない小規模店舗や現場からも、従業員がスマートフォンから発注を行うことも可能だ。つまり、注文に関する時間や場所の制約が小さくなり、それが受注機会の拡大へとつながる

商圏の拡大、新規顧客開拓

通常、営業担当者を軸とした販売網を構築する企業などの場合、ある1つの営業拠点から物理的に足を運べる範囲でしか営業活動を行えない。典型的なルートセールスの場合、受注、納品、料金の回収を営業担当者が担っているケースもあり、特に物流面を担う場合には商圏が限定されることがある。たとえば東京都千代田区に営業所がある場合、その担当範囲はどんなに広くても首都圏内が限界であろう。

だがBtoB-ECでは、こうした制限は緩和される。購入側にECサイトの利用を促し、配送会社などを利用することで、全国どこの場所の企業からも受注が可能になる。経済的な問題から営業拠点を新設できない企業にとっても、極めて魅力的な要素であろう。また、インターネットを活用して広く取引の門戸を開けられるのが最大のメリットである。集客方法次第だが、それまでまったく縁のなかった企業にも自社の存在をアピールし、取引へとつなげることができる

小口取引を仕組み化できる

その販売実務を営業担当者に依存している企業も多い。日々の顧客サポートから受注業務、さらには配送までの煩雑な業務を1人の担当者が引き受けるケースも少なくない。このような場合、営業事務に要する時間が多くなれば、営業活動に割く時間が限定され、取引先の拡大に向けた業務も限定されてしまうだろう。

そこで、注文数量の少ない取引先や、消耗品などの単純なリピート商品はBtoB-ECサイトで対応する。そうすることで、営業担当者に時間の余裕ができ、その時間を注文数量の大きい企業や、人が対応しなければならない業務、あるいは顧客に対するより丁寧な営業活動などに時間を割くことができるようになる。

顧客接点を強化できる

企業が商品を販売する際、その成否を担うのは従来であれば、営業担当者のサポート力、カタログのわかりやすさなどが大きな要因となる。そこへさらにBtoB-ECを並行的に用意することで、顧客接点を増加させることができる。

紙カタログに比べてWebサイトは検索性が高く、また関連製品のレコメンド機能なども組み込める。季節と連動した特集や新商品の案内、お得なキャンペーン情報、限定販売など様々な施策を実施することも可能である。

人力とはまた別の角度から“売り込みの多様化”が推し進められることにより、BtoB-ECを新たに開始した企業の中には、それまでのアナログ的受注が主軸の時代と比較して、購入頻度・購入単価ともに上昇したという声も多い。営業担当人員が限られ、さらに増員も難しい状態で顧客との接触回数を増やしたい場合、BtoB-ECは有力な候補となってくる。

利益率が向上する

業務フローを再構築し、BtoB-ECを導入することによって受注ミスや問い合わせ対応業務等が軽減されれば、結果としてそれは人的コストの削減へとつながる。受注あたりの処理コストが下がることにより、利益率の向上につながる。

●BtoB-ECについてもっと知りたい方はコチラへ
調査報告書の詳細や購入に関するご案内は「インプレス総合研究所」へダイジェスト版PDFのダウンロードは「Impress Business Library」へ

BtoB-ECのその他のメリット

新規事業立ち上げの気運を醸成できる

企業が新規事業の立ち上げに取り組む場合、予算やリソースが十分には確保されていない場合も多い。従来の業務フローで事業設計を行うと高コスト構造になりがちであるが、受発注業務をEC化することでコストを削減し、新規事業に取り組むことも可能である。

「働き方改革」を実現できる

ここまで紹介してきたBtoB-ECのメリットは、総じて「働き方改革」の実現に直結する。人手を十分にかけ、綿密なダブルチェックを行いながら、紙の注文書に記載された内容を業務システムに転記入力するなどの対応は、従来であればごく一般的な考え方であったが、先進ITツールの登場により、これらを代替することが十分に可能となった。コストはもちろん、今後は人手不足も相まって、ITツール導入の必要性は高まっていく。

働き方改革関連法の制定により、今後は1従業員あたりの労働時間制限がより厳格化される。違反した社名の公表など罰則規定も設定されており、「時短」の必要性はますます高まっていくだろう。その処方箋として、BtoB-ECをはじめとした各種ITツールの活用は大いに期待される。

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