よろしければこちらもご覧ください

ソーシャルメディアとECを統合した「ソーシャルコマース」は、ブランドにとって強力な武器になります。通常、消費者がECプラットフォーム上では探さないような商品を紹介できるからです。世界的なソーシャルコマースのトレンド、急成長している中国のソーシャルEC市場、中国から学べることについて紹介します。

世界のソーシャルコマース市場は年平均31.4%で成長

2020年初頭、世界的に新型コロナウイルス感染症が広がり、実店舗のビジネスに支障をきたす中、ソーシャルコマースが新たな突破口として注目を集めました。ソーシャルコマースは、小売マーケティングにおいて進化を遂げながら、ECとソーシャルメディアの良い部分を融合させています。

Facebookが2020年に開始した「Instagram Shop」は、世界最大のソーシャルメディアにECを融合させることで、アマゾンの座を狙っています。新型コロナウイルス危機の中、世界のソーシャルコマース市場は、年平均成長率31.4%の急成長を見せると予想されています。

消費者がオンラインショッピングを使い続け、ECと従来の小売事業者の両方がコロナ禍後の環境に迅速に適応する中で、ソーシャルコマースは2021年も成長を続けると考えられます。

ソーシャルコマース(グローバル市場)に関する2020年と2027年予測
ソーシャルコマース(グローバル市場)に関する2020年と2027年予測(画像:Research and Markets「Global Social Commerce Market to Reach $604.5 Billion by 2027」より編集部が作成)

ソーシャルコマースが強力な武器になる理由

ブランドは、なぜソーシャルコマースに関心を持つべきなのでしょうか? それは、ECとソーシャルメディアを統合することが強力な武器になるからです。消費者はソーシャルコンテンツを介してブランドを検索し、ECサイトでは探さないような商品に出会うことができます

ソーシャルコマースは、商品検索、インフルエンサー、モバイルペイメントなど、さまざまなショッピングシーンに利用できます。

中国で大人気のソーシャルメディア「WeChat」はミニプログラムと呼ばれるソーシャルコマースに大規模な投資を行っており、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン傘下の化粧品・香水専門店「Sephora」、「NIKE」、「GUCCI」、「ARMANI」など世界的なブランドが参加しています「WeChat」のミニプログラムは手軽に利用できるサブアプリで、ブランドはこれを活用することで、スピーディに市場にアプローチしたり、WeChat本体のプラットフォーム内でスムーズに販売したりすることができます。

ソーシャルメディアは、ブランドや小売事業者がインタラクティブでシェアができ、共感しやすいキャンペーンを打ち出すための機能を提供、新商品の盛り上げを後押しします。たとえば、グループ購入、オンラインのミニゲーム、インタラクティブなコンテンツなどは、顧客体験を豊かにしてくれます。

中国で盛り上がるソーシャルコマース、獲得コストの高騰を解決

今日まで、中国はソーシャルコマースの発展で世界をリードしてきました。中国は世界最大のEC市場。また、世界で最も刺激的でエキゾチックで変化の早い市場でもあり、中国人消費者の購買行動はユニークです。デジタルマーケティングなどに関する市場調査を行う「eMarketer」は、ソーシャルコマースが中国の小売EC総売上の13%をけん引していると推定しています。

2019年から2023年までのソーシャルコマース市場、ソーシャルコマースが中国EC市場に占める割合
2019年から2023年までのソーシャルコマース市場、ソーシャルコマースが中国EC市場に占める割合(画像:eMarketer「In China, Social Commerce Makes Up 11.6% of Retail Ecommerce Sales」より編集部が作成)

中国ではソーシャルコマースが活況を呈しており、中国のEC業界はこれを新たなスタンダードと捉えています。ECサイトの利用者は今、ブランドにソーシャルコマースを期待しています。興味深いことに、ソーシャルコマースは中国のデジタルコマースにおける主な課題であるユーザー獲得コストの高騰を解決しているのです。

新規顧客獲得手段としてソーシャルコマースを採用する中国ブランド

中国の巨大ECプラットフォーム「Alibaba」と「JD.com」で新規顧客を獲得するためのコストは、それぞれ812元(123米ドル)と176元(26米ドル)です。そのため、中国のブランドは新規顧客を獲得するためのより手頃な方法として、ソーシャルコマースを採用しています。

急成長しているソーシャルコマース市場は、2021年末までに3,155億ドル近くに達すると予想されています。グループ購入と「WeChat」ベースのソーシャルコマースは、ソーシャルコマース市場全体の90%超。新型コロナウイルスの大流行により、ソーシャルコマースをショッピングの新しいスタンダードとして受け入れ、日常生活に取り入れる消費者が増えた証拠です。

月間アクティブユーザー数12億人の「WeChat」

「WeChat」の月間アクティブユーザー数は約12億人。ソーシャルコマースの主要なプラットフォームとなるなど、ミニプログラムは中国のEC業界を席巻しています。ブランドは、「WeChat」のミニプログラム内でストアを独自に開設し、デジタル広告、インフルエンサーマーケティング、その他のクリエイティブなソーシャルメディアマーケティングキャンペーンを通じてトラフィックを促進することができます。

「WeChat」の新しいビジネスモデルは、幅広い「知人」グループ(「WeChat Moments」(WeChatのタイムライン)や「WeChat Ads」を通じたコミュニティ広告など)と、幅広いリーチ(公式アカウントの購読メッセージ、キャンペーンのプッシュ通知、1対1のカスタマーサービス、コンテンツマーケティングなど)を提供しています。よりターゲットを絞った関連性の高い、効果的なマーケティングを行うことで、「WeChat」はブランドの参入障壁を下げ、ブランドに特化したトラフィックを促進することができます。

「WeChat」が2020年4月、新しいライブストリーミング機能を開始したのは画期的な出来事でした。「WeChat」はミニプログラムにライブストリーミングを統合することに重点を置いています。旧正月を前に、「BALENCIAGA」「LOEWE」「Cartier」などの高級ブランドが「WeChat」のミニプログラムをスタート。デジタルに精通した消費者をターゲットに「WeChat」広告を展開するケースが増えています

35歳以下女性をターゲットに急成長中のソーシャルコマース「小紅書」

中国におけるソーシャルコマースのもう1つの主要なベンチマークは小紅書(Little Red Book、通称「RED」)で、コンテンツ共有機能とコミュニティが特徴です。

「Xiaohongshu」とも呼ばれる「RED」は、35歳以下の女性をターゲットにした中国最大かつ急成長中のソーシャルコマースアプリの1つ。特に1995年以降に生まれたZ世代に人気があります。

このアプリは、ユーザーに商品の検索や購入、お薦め商品の共有、便利なレビューの提供などを促進するように設計されています。

中国におけるソーシャルコマースのもう1つの主要なベンチマークは小紅書(Little Red Book、通称「RED」)
「小紅書」のトップページ(画像:サイトよりキャプチャ)

「RED」は、キーオピニオンリーダー(KOL)と呼ばれるインフルエンサーと、美容やスキンケア商品を詳しく紹介するブログ記事タイプのコンテンツを組み合わせることで、消費者との交流を構築しています。このアプローチにより、「RED」の主要ユーザー層は、都市部の若年層、すなわちミレニアル世代や一等地の都市に住むZ世代の消費者に偏っています

ユーザーの中には、「RED」で直接商品を購入する人もいれば、リサーチだけしてから別のプラットフォームで購入する人もいます。いずれにしても、このソーシャルメディアプラットフォームでの存在感が、ブランドのカスタマージャーニーにおける重要なポイントになります。

ルイ・ヴィトンが「小紅書」でライブストリームキャンペーンを展開

「RED」は2020年3月、ソーシャルコマースへの参入を決定する前に、ECのライブストリーミング機能を正式に発表。「RED」で公式ストアを開設しているブランドは、自社商品のプロモーションのためにライブストリーミングキャンペーンを開始することができます。

キャスターがライブストリームのセッションを主催すると、注目の商品が視聴者に表示され、新しい視聴者もライブストリームイベントに参加できます。視聴者は「買いに行く」をクリックするだけで、商品の詳細が表示され限定のクーポンを受け取れます。注目すべきは、ソーシャルコマースだと、商品の発見から購入までの時間が短縮されることです。

コロナ禍時代のイノベーションを取り入れた「LOUIS VUITTON」は、高級ブランドとして初めて「RED」でライブストリーミングセッションを行いました。このライブストリームは視聴者の関心を集め、15万2,000回以上の再生回数を記録。多くのコメントが寄せられました。

「LOUIS VUITTON」によるライブコマースのようす
「LOUIS VUITTON」によるライブコマースのようす(画像:DigitalCommerce360「Social commerce is leading the future of ecommerce」よりキャプチャ)

これらの印象的な結果を見ると、高級ブランドがソーシャルコマースやECに懐疑的な見方をしているという認識が変わるかもしれません。「LOUIS VUITTON」がライブストリームキャンペーンを開始した目的は、新型コロナウイルス危機中の制約で、モールが閉店し、家に帰る他なく暇を持て余している消費者に向けて、新しいタイプの購入体験を試すことにありました

小売事業者がソーシャルコマースに注目すべき理由

「WeChat」と「RED」は、「ソーシャル」な特性を生かしたソーシャルコマースが、小売事業者と消費者の関わり方を変えることで、従来のEC業界を近代化できることを示す好例です。

将来的には、中国のソーシャルメディアの中で、ECはよりインタラクティブで広く使われるものになるでしょう。世界の小売事業者は、トラフィックの低迷、ユーザー獲得コストの高騰、アマゾンなどとの激しい競争のために苦戦を続ける中、エンドユーザーとつながる新しい方法を模索する必要があるのです。

EC戦略にソーシャルな要素を取り入れることは、オンラインビジネスを活性化させるために必要なことでしょう。「WeChat」と「RED」が中国で行った方法は、小売事業者が成功したキャンペーンから何を学ぶことができるのか、実践的な例を示しています

主なポイント

1. グローバル・ソーシャルコマースは新たなトレンド

中国ではすでにソーシャルコマースが普及しています。「WeChat」は10億人以上のデジタルに精通したユーザー層に向けて、ブランドが直接販売するミニプログラムのために、新しいライブストリーム機能を開始しました。「LOUIS VUITTON」は、ソーシャルコマースプラットフォームである「RED」でのライブストリームキャンペーンを開始し、コロナ禍の制約に合わせた新しい購入体験を試しています

2. 効率的なオンラインでの商品発見

ソーシャルコマースのコンテンツ共有機能は、ユーザーと商品をつなぐ中核的な役割を果たしており、ブランドは広告や割引プロモーションを通じてユーザーにアクセスすることができます。ソーシャルメディアプラットフォームである「WeChat」上でブランドの存在感を示すことは、カスタマージャーニーの重要なポイントとなります。

3. ライブストリーミングコマース

ライブストリーミングは販売チャネル以上のものであり、ブランドは顧客と深く、直接、リアルタイムでコミュニケーションをとることができます。ブランド担当者は、消費者が最適な商品を選ぶのを手助けしたり、謝礼金などを利用してライブストリームのリンクを友人やコミュニティで共有するように促したりすることで、ブランドのリーチを広げ、ユーザーの獲得コストを削減することができます。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

この記事が役に立ったらシェア!
よろしければこちらもご覧ください

Digital Commerce 360

世界最大級のネット通販業界の専門誌『Digital Commerce 360』(旧『Internet Retailer』)は、雑誌のほか、Web媒体、メールマガジンなどを運営。Vertical Web Media社が運営を手がけている。

Eコマースの戦略に関し、デイリーニュース、解説記事、研究記事、電子商取引におけるグローバルリーダーをランク付けする分析レポートなどを発行している。

記事カテゴリー: 
記事種別: 

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
楽天株式会社 eBay(イーベイ) ecbeing. Qoo10 Nint メルカート
[スポンサー]
株式会社アイル 株式会社電通デジタル