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買い物の手段としてオンラインショッピングが主流になり、消費者は自分たちの好みを販売事業者に把握して欲しいと思うようになっています。実店舗もECサイトと同じように機能させなければ、消費者は他店へ行ってしまうでしょう。これから実店舗小売が取り組むべきことを、先行事例から探っていきます。

“ウェルカムバック・チャンス”をつかむには?

新型コロナウイルスが実店舗に与えたダメージは、誰もが知るところです。しかし、コロナ禍が消費者にもたらしたさまざまな影響が、実店舗を復活させるための原動力になり得るという話は、どこでも語られていません。

ワクチンが登場し、世界中の人々が予防接種を受け、新型コロナウイルスの危険性がなくなれば、人々は隔離された場所から飛び出し、この1年間やり逃したことに再び取り組もうとするでしょう。映画鑑賞やスポーツ観戦、レストランでの外食、そして実店舗での買い物を特に欲しているのです。

これは、“ウェルカムバック・チャンス”と呼ばれるビジネスチャンスですが、どのくらいの経済規模になるのでしょうか? 全米小売業協会(National Retail Federation)は、2021年の小売売上高は前年比で最大8.2%増加し、4兆3,300億ドル以上に達すると予想しています。

さらに興味深いのは、店舗に戻ってくる消費者は、以前と同じではないということです。彼らはこの1年、夢中になってECを利用していました。利便性、パーソナライゼーション、品ぞろえ、カスタマイズなどについて、今までとは違う新しい期待を抱いている消費者達に、実店舗は応えなければなりません

”驚くべき購買力”をつかむために重要な3つのアクション

「Goliath Strikes Back: How Traditional Retailers Are Winning Back Customers from E-commerce Startups」(編注:『ゴリアテの逆襲:スタートアップEC企業から顧客を取り返す』)の著者であるピーター・コーハン氏は、「2020年代は飛躍の時代」と予想しています。

コンサートやクルーズ、スポーツイベント、空の旅、ショッピングなど、社会的なつながりを持つ活動がブームになるずです。コーハン氏は「人々は、今にも解き放たれようとしている弓矢のようなものです」と述べています。

コロナ禍の“副産物”の1つが、消費者の驚くべき購買力です。コロナ禍の間、多くの世帯は雇用を維持した一方、支出を削減していた、とコーハン氏は指摘しています。彼らの貯蓄額は過去最高、負債額は過去最低になっているのです。株価は上がり、住宅価格も上昇しています。政府支援のおかげで、金利も低いままです。このような状況の中、買い物などに使えるお金がたくさんできたのです。

賢いブランドや小売事業者はこの機会をとらえ、消費者の資金を獲得し、彼らの期待と需要を満たすために行動するでしょう。効率的にアクションを起こすために、以下にあげる3つの重要なリテール体験に注力しています。

1. 実店舗を持つ

この1年間、コロナ禍で孤独を感じた人々が求めているのは、人と人との触れ合いです。消費者は、実際に商品を見たり、触ったりしたいと思っていますし、購入する前に販売員と直接話をすることで安心感を得たいと思っています。このような物理的な交流が重要である証拠として、多くのオンラインブランドや小売事業者が、実店舗を作ることでブランドを拡大しようとしています。

米国では、かつてオンラインだけで販売していたコスメブランド「Mented Cosmetics」は、北米エリアにあるディスカウントチェーンの「Target」290店舗以上で、商品を展開しています。

Target店内で商品を販売するコスメブランド「Mented Cosmetics」
Target店内で商品を販売するコスメブランド「Mented Cosmetics」(画像:サイトより編集部がキャプチャ)

カナダでは、スキンケア商品をオンラインで販売する「Versed Skincare」が、薬局の「Shoppers Drug Marts」1,000店舗以上で商品を展開。Amazonもロンドンに初の食料品店をオープンするなど、実店舗の世界へ進出しています。

Amazonがロンドンにオープンした食料品店のようす
Amazonがロンドンにオープンした食料品店のようす(画像:サービス紹介動画より編集部がキャプチャ)

2. 実店舗のデジタル化

店舗内に商品を置き、スタッフを配置するだけでは、もはや十分ではありません。コロナ禍で消費者の期待は大きく変わりました。

オンラインショッピングを始めてから1年も経つと、消費者は販売事業者に対して、自分の好みを把握し、過去に購入した商品を記憶し、無限に表示される商品を見たり、バーチャル試着ができることを期待するようになります

もし、実店舗がECサイトと同じように機能しなければ、消費者はどこか他のお店に行ってしまうでしょう。顧客のロイヤルティも以前とは違ってきています。McKinseyの調査によると、米国の消費者の73%がコロナ禍の間、新しいブランドを探し、そのうち83%が今後も探し続けると回答しています。

3. 店舗に特別感を持たせる

デジタルショッピングを実店舗で再現するだけでは十分ではありません。小売店への回帰を促し、ロイヤルティを獲得するためには、次世代の消費者に他にはないユニークなショッピング体験を提供する必要があります。世界のトップブランドが、実店舗に訪れる消費者に驚きと喜びを与えるために、どんな事をしているか見てみましょう。

中国の深センで、Burberry(バーバリー)が「ソーシャル・リテイル・ストア」を設立。店舗内限定のサービスで、消費者がスマートフォンを使って利用できる新しいコンテンツ、パーソナライズされた買い物体験を提供しています。

Burberryの「ソーシャル・リテイル・ストア」で提供される、スマホを利用したサービス例
Burberryの「ソーシャル・リテイル・ストア」で提供される、スマホを利用したサービス例(画像:サイトより編集部がキャプチャ)

ニューヨーク発の化粧品メーカーMAC Cosmetics(MACコスメティックス)のコンセプトストアでは、顧客は全身を映すAR(拡張現実)ミラーの中でバーチャルに化粧品を試すことができます。気に入った化粧品を見つけたら、それらをデジタルプロフィールに保存し、自宅からアクセスできるようになっています。

また、多くの高級小売企業が、販売チームに接客用のデバイスを与えています。販売員は、デバイスを使って顧客の行動データをたどり、より良い商品をおススメします。また、これらのデバイスを使えば最も優良な顧客を認識し、顧客ごとに異なる特典を付与することもできます。

◇   ◇   ◇

今こそ、実店舗を利用した小売事業の未来に投資すべき時です。確かに、コロナ禍の影響で実店舗の売り上げは激減しました。しかし、対面式実店舗への回帰ラッシュが始まっています。商品や人との物理的な触れ合い、「デジタル中心」の世の中で新しい期待に応えてくれる買い物体験を、消費者は求めています。

この機会を認識しているブランドや小売事業者は、コロナ禍を乗り切るだけでなく、コロナ禍後の数か月、数年で成功を収めることができるでしょう。コロナ禍で、実店舗は終わりではないのです。物理的なショッピングの復活であり、デジタルを駆使したエキサイティングで新しいショッピング・アドベンチャーの始まりなのです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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