前回は一般のお客さまからの苦情・クレームと、モンスタークレーマーからの不当な要求はまったく別ものだというお話をしました。両者とも同じ窓口に同じように連絡して来るので、実は対応を誤っている企業が多いのです。今回は「モンスタークレーマー」の特徴について解説したいと思います。

モンスタークレーマーが発する3つのサイン

一般のお客さまからの苦情・クレームは、困ったり悩んだりしていることを報告、または解決することが目的です。それに対して、モンスタークレーマーの目的は金品を奪うことです。ここでモンスタークレーマーの特徴をまとめておきますので、しっかり覚えておいてください。

  1. 状況の確認をさせたがらない……あいまいな説明をし、事実を確認しようとすればするほど嫌がります。こちらを惑わせてミスを誘発させるのが目的なので注意が必要です。

  2. 証拠を出さない……身体クレームを訴えながら、診断書の提出を求めると怒り出したり、不良品を訴えながら返品してこなかったりします(実際はそのまま使用していたり、オークションなどで売却していることもあります)。

  3. 解決を急がせる……すぐにお金や商品で解決させようとします。

金額の大小は関係ありません。たとえ、「サンプルでいいから送って来い」と言われたとしても、それが本来必要でない要求であれば、それはモンスタークレーマーからの不当な要求です。なぜなら、要求された行為(=サンプルの入手)が目的だからです。

ここで過去の実例をご紹介します。

ある顧客から、注文した覚えがない商品が届いたと連絡があった。店側は「いたずら」と判断し、商品の受け取りを拒否してもらうように話し、商品は戻ってきた。

後日、先日の顧客からDMが届いたとクレームが入った。店側は丁寧に謝罪した上で、DM停止がされていないかった事を説明し、DM停止の手続きを行うと伝えたが、顧客は「それだけか!」「誠意を見せろ!」怒り出す。

再度謝罪をするも金品の要求が始まり、挙句の果てに「直接来い」と言い出した。

いくら相手が怒って「誠意を見せろ」と詰め寄って来ようとも、被害を受けたのは店側です。受け取られずに戻ってきた商品の代金や各種手数料(送料、梱包代、倉庫代への返品受け入れ手数料)などの金銭的被害を受けているのですから。

この件の場合、被害を受けた店側から警察に被害届を出す旨を伝えたところ、それ以降、連絡はなくなりました。

安易な妥協がさらなる災いを招く

相手の剣幕に押されて「これくらいの金額ならいいか」「サンプルならいいか」と応じてしまうと、それ以降は相手主体の対応を余儀なくさせられれしまいます。また、いったん金額を提示してしまえば、その後はその金額が高いとか低いとかの話に移ってしまいます。返金するか否かという検討は二度とできません。まさに相手の思う壺

このようなモンスタークレーマーは、一度味をしめるとまたやって来ます。さらに悪いことに、仲間同士のネットワークで、そのノウハウが販売されたり、金品を巻き上げやすい企業として名前が出回ったりすることもあります。モンスタークレーマーがモンスタークレーマーを引き連れて来るのです。

そういった事態を避け、優良顧客の対応にあてるべき時間をモンスタークレーマーの対応に奪われないためにも、早い時点から落ち着いて、毅然とした態度で対応しなければなりません。そのために、まずは、苦情・クレーム対応の基本をおさらいしましょう。

苦情・クレームの5つのパターン

苦情・クレームとして寄せられる声には、大きく5つのパターンがあります。

①事実…「こういう事があった」→事故につながる指摘(貴重な意見) ②不満…「商品の○○に不満がある」→改善の課題(貴重な意見) ③意見…「○○してほしい」→発展の課題(貴重な意見) ④要求…「損害賠償してほしい」→自社に非がある場合の正当な損害賠償の要求) ⑤不当要求…「金品が欲しい」→(自社に非がないにも関わらず、金品を不当に要求)
苦情・クレームの例

①〜③は企業にとって貴重な「お客さまの声」です。相手が感情的になっている場合は対応が難しくなることもありますが、しっかり内容を把握して誠実に対応するべきです。①、②によりお客さまに何らかの損害がおよんでいる場合は、④の要求に対して迅速に対応しましょう

お客さまへの対応の基本で大切なポイントは4つあります。

  1. 会話を記録する
    初動対応は、状況(主張)の確認から始まります。この時、相手から聞いたことは、すべて記録に残し、整理することが重要です。最近は問い合わせの電話をオペレーターにつなぐ前に、「サービス向上のために録音いたします」というアナウンスを流す会社も増えてきました。

  2. 相手を気遣う
    もし、相手の訴えが「肌が荒れた」「痒みが出た」などの「身体クレーム」であれば、当然ながら相手の体を気遣うことが大切です。
    誰もが自分の状況を上手に説明できるとは限りません。話をよく聞くと、実は他社の商品の話だったということもあります。しかし、そんな場合でも「それは当社の商品ではないので、私どもに言われても困ります」と言うのと、「当社の商品ではないので対処のしようがないのですが、お体は大丈夫ですか?」と言うのでは相手の印象は大きく違います。

  3. 事実を確認する
    「このお客さまの主張はどういうことか」「今回の連絡の目的は何か」「何に悩んでいらっしゃるのか」ということを明確にしながら、事実確認をすることが必要です。途中で理解ができないことがあったら、いったん相手の話を止めて「失礼ですが、それは○○ということですか?」などと、その都度確認しながら、話の本質を正確に理解します。

  4. 証拠を集める
    相手の訴えが事実ならば証拠があります。「商品が破損していた」「色が変わっていた」などの場合は、まず返品していただき、証拠を手元に集めます。

こうした苦情・クレームの対応マニュアルをすでに作成している企業も多いと思いますが、あまりにもマニュアル通りだと、かえって相手の怒りを増大させることもあります。不満を持っている時に機械的な対応をされると、軽んじられたように感じるからです。

「ピンチはチャンス」という言葉があるように、相手の言っていることを素早く理解し、不平や不満を解決することで、商品やお店のファンになってもらえるチャンスが生まれます。自社に非がある場合も、誠意をもって丁寧に対応すれば必ず解決できます

また、寄せられた声は他の部署とも共有しましょう。将来のリスクが軽減されるだけでなく、改善を重ねることで自社の商品やサービスが成長し、増収増益へとつなげることができるのです。

◇◇◇

次回は、モンスタークレーマーへの具体的な対応法について解説します。

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東 弘樹

HAZS株式会社

HAZS(ハッツ)株式会社代表取締役。

1964年生まれ。87年輸入貿易商社90年大手信販会社:営業・債権管理・決済システム・商品企画。当時大手通販会社を担当。06年、通販向け受注管理開発会社を経て、07年にHAZS株式会社を設立。09年、通販向け内部統制「少額債権管理 社内体制構築支援」をリリース。 14年、国立大学大学院にて「通販の債権管理」を研究。論文「通信販売における顧客の名寄せ知識の構築」などを発表。現代社会において、優良顧客と社員のためにリスクマネジメントは必須であると、通販・ネットショップに対して実践的なリスクマネジメントのノウハウを提供している。

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