越境ECで海外顧客の満足度向上に向け知っておくべき国際物流サービスの基礎
2019年の世界の越境EC市場規模は7800億USドル、2026年には4兆8,200億USドルにまで拡大し、2019年から2026年までの年平均成長率は約30%――。経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」では世界の越境EC市場の拡大をこう予測。越境ECビジネスの成功の秘訣(ひけつ)のなかで、重要なポイントの1つにあげられるのが、信頼できる物流サービスの活用です。
拡大する越境EC市場、成功をつかむために重要なこと
拡大傾向にある越境ECで、成功するための要素を考える上で留意したいポイントの1つに、ECの購入者は、注文してから商品が届くまでの一連の流れ、つまり購買体験全体でEC事業者やブランドを評価することがあげられます。
フェデックスエクスプレスが発表した中国でのデジタル・EC関連のトレンド分析資料から、オンラインでの購買活動が多くの要素によって成り立っていることがわかりました。
中国の2016~2020年のEC小売分野の売上高の年平均成長率は25.9%以上と高い実績を示しています。2020年に少なくとも週1回以上、モバイルデバイスで商品やサービスを購入した中国の購入者は57.9%で、2020年半ばまでの中国における電子決済ユーザー数は8億500万人でした。
モバイルデバイスで情報に即座にアクセスできるようになったため、オンラインとオフラインの境界線もさらにあいまいになっています。その結果、特に中国や北米・ヨーロッパではテクノロジーを活用した購入体験の向上が求められるようになりました。
そこで、クラウドシェルフや、オフラインストアでの拡張現実(AR)、バーチャルリアリティーのホテルツアー、また購入体験のライブ配信など多様な手法が登場し、世界のオンライン購入者の購買体験向上の可能性を広げています。
物流も購入体験に深く関わります。注文した商品が予定された配送日数で確実に届くことで、購入体験の向上に貢献することができるためです。特に越境ECの国際輸送では、国内配送に加えて留意するポイントがあることも忘れてはなりません。
複雑な国際物流を管理するために知っておくべきポイント
ここでは、留意すべきポイントを3つ紹介します。
① 送りたい国・地域への配送状況と、かかる日数の確認
国際物流全体は現在も、新型コロナウイルス感染症や地政学的な問題などの影響を受けています。輸送サービスに一時的な変更がある、あるいはより長い輸送時間が必要なケースもあります。状況が流動的であることから、出荷依頼の前に必ず輸送業者などが提供している最新の情報をチェックし、仕向け地に対する貨物受託の有無と、到着までの日数を確認するようにしましょう。
② 複数の物流会社のサービス利用の検討
輸送の料金、スピード、品質の観点から、最適な物流サービスを選ぶことは、消費者の満足度を高めることはもちろん、EC事業者の業務効率も向上させます。物流会社によって輸送方法や仕向け地に得意・不得意がある場合があることを考慮し、送る商品と地域に合わせた最適な物流会社を選択しましょう。また、複数の物流会社と取引をすることは、現在のような先の見通しが難しい状況でのリスク回避にもつながります。
③ 購入者のメリットを考えた物流会社の選択
商品の発送から到着までの状況の可視化と、よりパーソナライズされた国際輸送サービスの利用が有効です。フェデックスによるEC事業者と購入者に対する調査結果でも、このような傾向が見られました。
アジア太平洋、中東およびアフリカ(AMEA)地域の中小企業と生活者のECの最新動向に関する調査「What's Next in E-Commerce」では、AMEA地域で生活しECを活用する消費者の65%がパーソナライゼーションを歓迎しており、70%がパーソナライゼーションによってECでの購買活動での満足度が上がったと答えています。
国際輸送でも、輸送時のモニタリングサービスに加え、送り先の国や地域によっては商品の受け取り方もさまざまなオプションが提供されています。オンラインツールで自分に都合よい日時に受け取りができるよう変更したり、最寄のコンビニで受取ったりすることもできます。顧客の多様なニーズを満たすには、多くの荷物受け取りのオプションを提供する物流会社が役立ちます。
発送準備はオンラインで効率化
フェデックスの調査から、世界の購入者はEC事業者カスタマーケアに不満があることが判明。AMEA地域のオンライン購入者の42%が返品プロセスに不満あると答えました。EC事業者は限られた時間のなかで、購入者へのきめ細かな対応やマーケティング活動も行わなければなりせん。その時間を確保するために、商品発送の業務効率を最適化せることが重要です。
効率を重視した発送業務のオンライン化は大きな流れの1つです。たとえば、送り状の準備や商品の輸出に必要な書類の作成と提出、請求書の処理はもとより、EC事業者が利用する出荷管理サービスシステムに対する、物流会社によるシームレスなシステム連携によって、出荷準備のプロセスを一元化しているケースもあります。
EC事業者をサポートする物流会社のサービスは日々進歩し、特にオンラインやシステム面での動きは活発です。最新情報をチェックして、自身の事業に最適な方法を見つけ出したいものです。
越境EC市場はこれからも注目される市場であり続けるでしょう。それは同時に競争の激化も意味することになります。物流サービスの選択がビジネスの差別化を測る上で重要なポイントになることを押さえておきましょう。