Googleが新たに展開する検索広告を活用した「オフサイトリテールメディア」とは?
Googleは、小売事業者のECサイトを離脱した後に検索広告を活用して広告主が自社製品を訴求できる新サービス「オフサイト・リテール・メディア・ソリューション」のベータ版を発表しました。新サービスが実現するリテールメディアネットワークは過去10年間、多くの企業が投資に励んできた分野です。現在、自社がリーチできる潜在顧客を獲得し、自社の経済圏で広告オプションを増やすためにリテールメディアネットワークを活用する取り組みが大手企業を中心に加速しています。この先駆けとなるGoogleの新サービスはどのようなものでしょうか。最新の取り組みを解説します。
Googleが取り組むリテールメディアネットワークとは
世界最大級の小売業界向けイベント「Shoptalk(ショップトーク)」(2024年の3月17日から20日にかけて米国・ラスベガスで開催)に登壇したGoogleのグローバルコマース責任者であるマリア・レンツ氏は、人工知能(AI)とGoogleのEコマース事業に関するディスカッションで、米国の住宅リフォーム・生活家電チェーンLowe’s(ロウズ)と実施しているプロジェクトについて解説しました。
Googleは、広告主が小売事業者のECサイト上で商品を訴求しながら、ユーザーデータをGoogleのAIと組み合わせて小売事業者のECサイト以外でも消費者にリーチする「オフサイト・リテールメディア・ソリューション」を発表しました。これは、Googleが提供する検索管理プラットフォーム「Search Ads 360(検索広告360)」を活用したベータ版です。その最初の実証実験のパートナー企業としてLowe’sと提携しています。(レンツ氏)
現在、クローズドで展開しているベータ版の「オフサイト・リテールメディア・ソリューション」は「Search Ads 360」を活用し、小売事業者のECサイト以外の独自のスペースで販促キャンペーンを行えるものです。広告主は小売事業者が運営するECサイト以外のサードパーティチャネルに販促を拡大できます。なお、「Search Ads 360」は、一般的に「SA360」と呼ばれています。
「Googleは、広告主と小売事業者が協力して、顧客情報のプライバシーを保ちながら適切な消費者にリーチする方法を開発しました」とレンツ氏は話します。
消費者プライバシーと広告効率アップを両立
「SA360」のプロジェクト・マネージャーであるGoogleのユアン・フィッシャー氏は3月18日、自社のコーポレートサイトでさらに詳しく説明。自身が発表した記事で次のように語っています。
Lowe’sはGoogleの既存のマネージドサービスを利用しつつ、将来的には広告主向けのオプション機能として「SA360」と提携。Google検索およびGoogleショッピングを活用し、Google初の「オフサイト・リテール・メディア」をスタートします。(フィッシャー氏)
フィッシャー氏はこれに加えて、小売事業者の顧客データが全て広告主に共有されるわけではないことを強調しました。
広告表示の有無は顧客自身が選択できる形式にすることで、小売事業者は顧客情報を広く公開することなく、プライバシーを重視するやり方で顧客情報を広告主に共有できるようになります。これにより、広告主は購買意欲の高い顧客にリーチできるようになるため、広告のパフォーマンスを向上させることにもつながります。(フィッシャー氏)
顧客は広告表示をクリックすると、小売事業者のECサイトの商品詳細ページに誘導され、商品を購入することができます。
オフサイトリテールメディアの普及を計画
ベータ版の「オフサイト・リテールメディア・ソリューション」はクローズドでの運用ですが、フィッシャー氏は、ゆくゆくはGoogleが他の小売事業者の利用を呼びかけるようになることを示唆しました。フィッシャー氏によると、Googleは新たに小売事業者の販促施策のサポートを開始する予定です。
Googleは今後、Microsoftや小売事業者のECサイト以外で広告訴求するための販促企画をサポートする予定です。「SA360」独自のリテールメディア機能を構築し、広告主にとってより高いパフォーマンスを実現していきます。(フィッシャー氏)