中川 昌俊 2015/2/17 6:00

約43億円の資金調達を2月12日に行ったばかりのメタップス。スマホ向けアプリの分析や広告配信の最適化による集客、収益化までをワンストップで提供するアプリ開発者向けプラットフォーム「metaps」を展開している。無料決済サービス「SPIKE」も提供し、導入サイトはすでに5万アカウントを突破しているという。なぜ無料決済サービスを開始したのか、無料で提供できるその決済の仕組みなどを佐藤航陽代表取締役CEOに聞いた。

自社でECをしていた時、決済手数料負担が重かった

――メタップスはもともとどういった事業がスタートですか。

創業時はWEBのマーケティングを手がける会社で、主にSEO対策サービスを行っていました。ただ、2009年にその事業を売却し、スマホ向けアプリの収益化サポート事業を始めました。スマホ向けアプリの収益化事業に目を付けたのは、収益化に多くの企業が苦しんでいたため。アプリを提供している会社はどんどん増えていましたが、実際にマネタイズできているのは1%ほど。そこで、集客、分析、広告の収益化をワンストップで提供すれば、多くの会社から引き合いがあると考えたのです。最初はシンガポールから事業を開始し、現在は日本を含め8拠点でアプリ収益化サービスを展開しています。

――現在、主力となっている事業は海外から始められたのですね。日本では大手企業のアプリの多くが御社のサービスを利用していますが、日本事業が占める割合は。

現在30%ほどです。スマホは世界各国で利用されており、仕様が同じ。収益化サービスも世界展開がしやすく、マーケットの大きさからやはりグローバル向け事業の方がシェアが高くなるのは当然でしょう。今後、さらに日本事業の占めるシェアは少なくなっていくとみています。

佐藤航陽代表取締役CEO

――スマホアプリ収益化サービスのほかにも、手数料無料決済サービスの「SPIKE」を提供しています。なぜ、決済サービスを無料で提供しようと考えたのですか。

創業当初、当社でも小規模ながらEC事業を手がけていました。扱っていた商品の粗利は15%ほど。売り上げが1000万円あっても、残る利益が100万円未満という状況でした。明細を見てみると、決済手数料が売り上げの4%ほどあり、粗利の3割を決済手数料で持っていかれることがわかりました。決済代行事業者と交渉したのですが、「手数料を下げることはできない」と言われたのです。その頃から、「決済手数料は下げられる」と考えていたため、アプリの収益化事業を進めていくなかで、フリーミアムモデルで提供することを思いつきました。

ソーシャルゲームでも95%のユーザーは無料でゲームを楽しんでいますが、残りの5%に課金してもらうことで事業が成り立っています。同じようなビジネスモデルが決済事業にも当てはまるのではないかと考え、無料決済サービスの提供を始めました。

開始から8か月で登録事業者が5万件を突破するなど、導入者数が急激に増えています。決済手数料の負担は、自身でECを手がけて大きいと感じていたので、やはりニーズはあるのだなと感じています。

――ソーシャルゲームなどは、無料ユーザーが増えても、サーバー負担が増えるくらい。それほど自社の負担は大きくないと思うのですが、決済の場合、クレジット会社への支払いが発生する。そのため無料ユーザーが増えると、負担がどんどん大きくなってしまいます。マネタイズ方法はどのように考えていますか。

「SPIKE」では月額固定費無料のフリープランでは、月間100万円までの売り上げに対しては手数料が無料です。100万円を超える場合は4%の手数料がかかり、月額固定費3000円のビジネスプレミアムプランでは、月間1000万円までは手数料が無料で、月間1000万円を超える売り上げに対して2.5%の手数料を徴収する形式になっています。導入者の数だけを見てみると90%の事業者は無料で利用していますが、全体の流通額に占める割合からは、上位2%の会社が全体の80%の流通額を占めている状況です。そのため、十分事業として成り立っています。

――ビジネスプレミアムプランの決済手数料は2.5%ですが、このプランは決済代行サービスとしてはかなり安価です。

無用プランで成長性したECサイトさんが、月商1000万円を超えたタイミングで他社サービスに乗り換えると、当社の事業が成り立ちません。そのため、成長したEC事業者にとっても利用しやすい価格での提供が重要だと考えました。また、当社のメイン事業はアプリの集積化支援サービスです。最近では、スマホECのマーケティング支援にも力を入れているので、決済とマーケティング支援をあわせて提供することでマネタイズを進めていきたいと考えています。

無料決済サービス「SPIKE」

アプリ収益化支援のノウハウ活かし、セキュリティ面でも強み

――すでに、マーケティング支援と決済をあわせて導入している会社は多いのでしょうか。

決済額が大きな会社に対し、当社から提案していることもあるので多くの会社がマーケティング支援も導入しています。今後スマホECを拡大していきたいと考えているEC事業者が多く、マーケティング支援サービスもとても好評です。ただ、マーケティング支援を活用できるEC企業はある程度の売り上げが必要で、それほど多くはありません。決済事業を手がけるメリットは、成長してきている会社をいち早く見つけることができること。マーケティング支援を提案しやすいという側面があり、決済事業は大きな役割を果たしているといえます。

――「SPIKE」の導入EC事業者の傾向などはありますか。

どの業態でもまんべんなく利用していますが、他の決済代行会社にはない傾向として、価格競争が厳しい家電やブランド品などのECサイトでも利用しています。こうしたサイトは商品粗利が10%を切るケースも多いため、決済手数料の無料が導入を後押ししています。また、スタートアップやベンチャー企業の利用も多いです。「SPIKE」は1分間で決済を導入できるので、スピードを重要視する事業者のニーズに応えることができます。一方、大手企業に関してはすでに決済代行事業者が入っているため、そこをひっくり返すための営業などは行っていません。そのため、大手企業は少ないのが現状です。

――EC企業が決済代行事業者に求める点として、安全性、システムの堅牢性があります。「SPIKE」では現状どうなっているのでしょうか。

「SPIKE」は1分で登録して利用できますので、従来の決済代行事業者のような入念な事前審査を行っていません。そのため、個々の取引に関して事故はないか、また取り込み詐欺ではないかという検知は常に行っています。通常の決済代行会社はここまでやっていないでしょう。当社のシステムは決済代行事業者としては特殊だと思います。こうしたことが実現できるのは、アプリ収益化支援で利用している人工知能があるためでです。ある動きに対してはこうした問題が起こりやすいというパターンを積み重ねることで、検知できるようになってきています。ハッカー対策や「PCIDSS」などへの投資も十分行い、セキュリティ面でも他の決済代行事業者に劣っていません。

――今後の展開をどのように考えていますか。

分析やマーケティング支援を行うサービスはより多くの企業に提案していきたいと考えています。別の方向として電子マネーサービスなども検討しています。また、一部クライアントと利害がバッティングするため慎重に考えていかなければならないのですが、スマホに特化したマーケットプレイスを持つことも将来的には検討していきたいと考えています。

今までの決済会社は決済サービスしか提供していないことが多いのですが、当社は決済を1つのハブとして、幅広いサービスを提案していきたいと考えています。EC企業にとって“頼れるパートナー企業”といわれるように成長していきたい。ぜひとも注目してください。

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