ギフティ太田代表に聞く「eギフト」のトレンド。個人、法人、従業員向けからもニーズが高まっているワケとは?
相手の住所がわからなくても、SNSやメールを通じ、オンライン上で気軽にギフトを贈れる「eギフト」。その第1人者と言っても過言ではないのが、「eギフト」のプラットフォームを運営し法人利用向け、個人間の利用向けに多様な「eギフト」サービスを提供しているギフティだ。コロナ禍で利用する消費者や企業が拡大。BtoE(会社から従業員)の用途も増え、「eギフト」需要が高まっている。ギフティ代表取締役の太田睦氏に、「eギフト」市場における国内外の概況、EC事業者や消費者からの「eギフト」の引き合いについて聞いた。
流通額は前年同期比で9割増。個人利用も法人利用も堅調に拡大
――法人向けの「eギフト」サービスが主軸となっているギフティ。足元の業績推移はいかがですか。
太田睦氏(以下、太田氏):2024年1-9月期(第3四半期累計)における全社売上高は、前年同期比29.4%増の68億6000万円でした。営業利益は同9.7%増の13億8500万円。流通額で見ると、同89.5%増の783億円規模です。ギフティの業績推移から見ても、「eギフト」市場が堅調に拡大していることがわかります。
ギフティでは、ECサイトを利用する個人需要の増加に加え、法人の「eギフト」利用――すなわち法人からの引き合いが大幅に増加しています。
個人向けのサービスは「giftee」、法人向けのサービスは「giftee for Business」の名称で展開しています。
法人サービスの成長の理由は、大型の案件を受注したこともありますが、全体的に法人からの高い需要が継続しておりリピート率が高いことがあげられます。
従業員のエンゲージメントを高める目的でも利用進む
――「eギフト」を利用する企業の意図や、昨今のトレンドを教えてください。
太田氏:ギフティの法人向けのサービスのなかで最も売上規模が大きいのは従来通りBtoCですが、昨今はBtoBやBtoEの引き合いも高まっています。
BtoCの使われ方は、各種キャンペーンのインセンティブ、ウェビナーを開催した際の参加者への特典としてギフティングするなど。
従業員向けのBtoEは、従業員数20〜30人規模の企業から、数千人規模の企業など3000件以上、幅広く利用されています。使われ方は、新入社員向けのウェルカムギフト、会社のロゴ入りのパーカーやTシャツといったコーポレートアパレルなど。なかには、勤続30年の自社社員を祝って、受け取った人が好きな商品を自由に選べるギフト「giftee Box」9万円分を贈呈されたケースもあります。
コロナ禍を機にリモートで仕事をされる人が増えたことから「企業と従業員とのエンゲージメントを上げたい」というニーズが増えています。
BtoBについては、取引先への虚礼廃止の潮流のなか、企業のカラーや相手に対する感謝などよりギフトを贈る際のコンテクストを伝えられるようなギフトが選ばれるようになったことがあげられます。
また、「eギフト」の贈り物が顧客とのコミュニケーションのツールになったり、より良好な関係性作りにつながったりと、ビジネスに良い影響を及ぼすことも少なくないため、「eギフト」がビジネスシーンのトレンドの1つになりつつあると見ています。
このほか、デジタルマーケティングにおける広告費が高止まりしており、現在はどの企業も獲得効率が厳しいという市況も影響していると考えています。
アフターコロナ後も「eギフト」の需要は衰えず拡大
――「非接触」が求められたコロナ禍だけでなく、アフターコロナでも「eギフト」の引き合いが衰えないのはなぜだと考えていますか。
太田氏:改めて「便利なものはずっと使っていただける」と感じています。たとえば、コロナが第5類感染症のカテゴリに移行した後も個人間で「eギフト」を贈り合うやり取りは加速しています。「eギフト」が向いているシーンでは「eギフト」を活用し、反対にモノを直接送った方がより効果があるところはモノを送る。こういった使い分けへの理解がある消費者や企業が増えてきた印象です。
贈答の仕方はモノからデジタルにシフト
――法人利用における「eギフト」の使い方で特筆すべきことはありますか。
太田氏:DXの流れもあり、贈答品の贈り方もモノからデジタルへという大きな変化が見られます。「eギフト」を受け取った相手が任意の団体に寄附できるサービスも展開しています。一方で、多様なニーズに応えるため、今では「eギフト」だけでなく、ロゴや社名などをプリントしたオリジナルグッズなどモノのギフトの企画・制作を担うサービスも提供しています。
導入企業ごとの取扱高は増加傾向です。モノのギフト、体験ギフト、それ以外のギフト......どれが適するかは状況や場面によって異なるためです。ウェビナーやアンケートの謝礼はライトな価格帯のものが好まれますし、見込み客に贈る場合には、自社のロゴ入りギフトをプレゼントしたり。
シャトレーゼは自社ECに直接「eギフト」を導入
――近年、「開発費がかかっても自社ECにeギフトを組み込みたい」というEC企業が増えていると聞きます。初期コストをかけても「eギフト」を自社サイトに組み込む利点や、その事例を教えてください。
太田氏:「eギフト」を導入する事業者が自社チャネルで「eギフト」を販売する場合、「eギフト」専用の販売ページを設けるケースがほとんどです。自社ECサイトに直接組み込む場合は開発費がかかりますが、エンドユーザーにとっては、ECサイトにつなぎこまれた「eギフト」を利用すると導入企業側のサイトのポイントがたまるため、利用促進につながります。「eギフト」の販売ページにブランドのファンがたどり着きやすいという利点もあります。
法人向けギフト販売システム「eGift System」を導入し、公式オンラインショップに直接「eギフト」システムをつなぎ込んだ企業は菓子専門店のシャトレーゼさまが初めてです。
ニーズの発掘とロングテールなラインアップをめざす
――ギフティでは東南アジアなど海外でも「eギフト」サービスを提供しています。各地での手応えはいかがですか。
太田氏:進出している国では、どの国でも個人間で贈りあう「eギフト」そのものは浸透していますが、企業が従業員への福利厚生や顧客への販促として使うケースは少ないため、有用な使い方の認知拡大を図っているところです。現在は東南アジアのマレーシア、ベトナム、インドネシアの3か国を中心に「eギフト」のプラットフォームづくりを行っています。
また、2024年11月には、中東を拠点とするYouGotaGift(ユーゴッタギフト)も子会社化しましたが、YouGotaGiftでは、すでに福利厚生や顧客へのロイヤリティプログラムとして「eギフト」の提供が進んでいます。
多くの場合、海外の企業は国内よりも離職率が高い傾向にあるので「企業と従業員のエンゲージメントをいかに高めるか」という危機感は日本の企業よりも強いように感じています。利用の拡大はまだまだ伸びしろがあると見ています。
太田氏:現地ならではのユースケースにも着目しています。たとえばラマダン(断食)明けに「ラマダンお疲れギフト」のようなものを会社が従業員に贈るなど、国、域、エリアごとの新たなニーズが見えてきているところです。
新たなニーズを知れば、新たなコンテンツを開拓するきっかけになります。これを国内外でやっていきたいです。個人向け・法人向けともに、ニーズを深掘りしながらロングテールな商品やサービスの展開をめざします。