健康食品通販の広告・表示に関する悩みを解決する、押さえておくべき2つのポイント
表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料がないと景品表示法違反になる
JAROでは健康食品の痩身効果を標ぼうする広告・表示を審査する場合、薬事法(以下、「医薬品医療機器等法」※1)68条(未承認の医薬品等の広告の禁止)に抵触するおそれがあることを指摘すると同時に、景品表示法4条1項1号(優良誤認表示)や健康増進法32条の2(誇大表示の禁止)にも抵触するおそれがあることを指摘することが多い。
景品表示法と健康増進法においては、医薬品医療機器等法における「医薬品等適正広告基準」のような具体的なガイドラインはないが、消費者庁が平成25年12月24日に公表した「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」に基づいて判断している。
※1……改正薬事法は26年11月25日施行され、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と法律の名称を変更している。
消費者庁は、著しい痩身効果が表示された健康食品の広告について、表示を裏付ける合理的根拠を有していないとして、既に7件の措置命令を出している(昨年11月末現在)。その考え方については、消費者庁ウェブサイトに26年6月13日「いわゆる健康食品の表示に関する消費者の皆様へのお知らせ」と題して分かりやすくまとめてあるので、以下に紹介する。
表示には合理的根拠が必要
景品表示法は不当な表示を禁止しており、合理的な根拠がない効果・効能等の表示は、優良誤認を招く不当表示と見なされる。
効果等の著しい優良性を示す表示は、一般消費者に対し強い訴求力があり顧客誘引効果が高いので、事業者はその表示を裏付ける合理的根拠をあらかじめ有しているべきである。
事業者が健康食品について、一般消費者に対し、その効果等が実際のものよりも著しく優良であると誤認される表示をしたり、その表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料を有していない場合には、景品表示法違反(優良誤認)となる。その合理的根拠は、次の2つの要件を満たす必要がある。
①客観的に実証された内容であること
次のいずれかに該当する必要がある。
- 試験・調査によって得られた結果
- 専門家・専門家団体・専門機関の見解や学術文献
②表示された効果等と実証された内容が適切に対応していること
例えば専門家が、その食品に含まれる主成分の含有量、一般的な摂取方法、適度な運動によって脂肪燃焼を促進する効果が期待できる見解を示したとしても、その食品を食べるだけで1カ月に5キログラムの減量効果が期待できる「合理的根拠」にはならない。
健康食品に関する専門家の意見(※2)
※2……「専門家の意見」では、食事制限も運動もせずに痩せることの限界をめどとなる数値で示しており、健康食品の広告・表示の可否を判断する際の参考になる。
【食事制限も運動もせず、楽して痩せることはない】
- 消費エネルギーが摂取エネルギーを上回らない限り、人は痩せることはない。
- 適度な運動や食事制限をしながら、人が痩せることができるのは、6カ月間で4~5キログラム程度。
- 1キログラムの脂肪を燃焼するためには7000キロカロリーの消費が必要(1時間の早歩きで300キロカロリー消費)。運動をしたとしても、それだけで数週間で数キロ痩せるということはない。
【もっともらしい体験談に気を付ける】
- 体験談は、単に「そういう人もいた」ということにすぎず、全ての人に同様の効果が得られるということはない。
【もっともらしい試験結果に気を付ける】
- マウスなどの動物実験によって何らかの効果が期待できたとしても、ヒトに同様の効果が期待できるとは限らない。
【バランスの良い食事・適度な運動が健康の保持増進の大原則】
- 健康食品で病気が治療できる、治癒するという科学的データはない。
- 健康食品さえ取っていれば健康になるということはない。
- 不規則な生活を余儀なくされる現代人に不足しがちな栄養素を補ってくれるのが健康食品である。