中川 昌俊 2015/9/4 13:00

楽天が新たに始めている動画サービス「楽天スーパーTV」がEC動画の新たな可能性を見せている。EC業界では“動画コマース”への期待は高まっているものの、あまり広がっていないのが現状。動画制作専業会社などが現れ、従来に比べて“動画コマース”への投資コストはだいぶ下がってきたが、EC企業の動画利用が広がっているとは言いにくい状況だ。そんななか、楽天が新たに始めている動画サービス「楽天スーパーTV」がEC動画の新たな可能性を見せ始めている。「楽天スーパーTV」について取材した。

店舗が扱う商品を動画で丁寧に紹介

「楽天スーパーTV」は2010年7月に楽天が買収した「Buy.com」で提供している動画コンテンツ「Buy.TV」を参考に開始したサービス。楽天市場内で取り扱う商品の魅力を1分~2分ほどの動画で詳しく紹介するコンテンツだ。

取り上げる商品は楽天の動画編集部が選択した商品が中心。専用の動画ページから「楽天商品価格ナビ」にリンクされ、商品を扱っているそれぞれの楽天店舗が表示される仕組みとなっている。

広告モデルも展開しており、ショップが売り出したい商品を詳しく紹介する動画を制作。「YouTube」向け広告や楽天TOPページでの表示といった集客手段をセットにして40万円から提供している。

ショップは動画からの集客効果が見込めるほか、商品ページで動画コンテンツを利用することでコンバージョンレートが向上しているという。実際、利用店舗では動画で紹介した商品のコンバージョンレートは、30%~100%向上しているという。

「楽天スーパーTV」

「楽天スーパーTV」では便利家電、デジタル家電などを紹介する動画が多い

楽天スーパーセールと連動させることで視聴者を誘導

とはいえ、こうした動画サービスは“従来から提供されてきたEC動画サービス”の延長であり、今後多くの店舗に広がる可能性があるかというと、難しいかもしれない。ただ、「楽天スーパーTV」の新たな取り組みとして始まっている、楽天市場最大のセールイベント「楽天スーパーセール」と連携した企画が、今後大きく成長する可能性を秘めている

その取り組みとは「楽天スーパーセール」の開催期間中、利用者が増える夜の時間帯に放送する生放送番組「楽天スーパーLIVE TV」だ。20分番組で、前半の10分は直後から始まるタイムセールの目玉商品を詳しく紹介し、後半10分でおすすめ商品やランキング情報、店舗担当者が登場しておすすめ商品などを紹介する番組となっている。

2015年3月の「楽天スーパーセール」から開始し、9月5日から始まる「楽天スーパーセール」で3回目の試みとなる。今回の楽天スーパーセールでは、毎日20:50~21:10、21:50~22:10、22:50~23:10の3回、計15回放送する予定。

特に後半10分のコーナーの番組構成は、「ショップチャンネル」や「QVC」といったLIVE型テレビショッピングと似た構成で展開している

ちなみに、LIVE型テレビショッピングは順調に売り上げを伸ばしており、最大手ジュピターショップチャンネルの売上高は1300億円超。視聴者を集めることができれば、売り上げアップにつながる取り組みであることはすでに実証されている。

「楽天スーパーセール」中に展開する「楽天スーパーLIVE TV」は、楽天市場の公式Facebookアカウント「楽天市場お買い物部」などで紹介することで視聴者を集めており、過去のデータでは平均で毎分1万5000人が視聴しているという。9月の「楽天スーパーセール」では、視聴者はポイントを獲得できるキャンペーンを実施することでさらに視聴者を増やす考えだ。

これまで、番組で紹介した商品は大きく売り上げを伸ばしている。番組をリアルタイムで見た人だけでなく、楽天市場のTOPページにも導線を設けることができるので、多くの人に閲覧してもらえる環境を用意している。

楽天スーパーセール中に売り上げを伸ばすことができれば、リアルタイムランキングにも表示されるようになるので、売り上げの上積みといった効果も期待できる。(楽天市場事業 事業開発部楽天プロダクトグループ・大津健太郎マネージャー)

おすすめ商品として取り上げられたり店舗担当者が登場するコーナーは広告モデルとして展開。料金は20万円から。

LIVE型テレビショッピングと同様、今後は「楽天スーパーLIVE TV」で売り上げを伸ばす出店者が増えていきそうだ。

「楽天スーパーLIVE TV」ではおすすめ商品や店舗担当者が出演

移転した新社屋では専用スタジオを開設、常時放送可能に

楽天は今後、ECと動画の連動を進めていく方針だ。これまでは外部のスタジオを利用して番組を制作していたため、時間などに制約があった。新たに移転した東京・二子玉川のクリムゾンハウスでは専用のスタジオを設置。時間の制約なく利用できるようになった。今後は「楽天スーパーLIVE TV」の放送回数を増やすことも検討しているという。

また、通常の「楽天スーパーTV」で配信する動画に英語の字幕を入れることで、海外ユーザーに向けた映像配信も年内に行っていくという。

将来的には「ショップチャンネル」や「QVC」のように、24時間常に商品を紹介する番組を制作することも考えられる

たとえば、専用のアプリなどを作り、簡単に番組を閲覧できる環境を整えることで、これまで以上に視聴者を集めることもできるようになる。このように、新たな動画を使ったECが構築されていく可能性もある。

大津マネージャーは今後の展望について次のように語った。

「楽天スーパーTV」は毎年、前年比3ケタ成長です。そんな中でもスーパーセールとの連携はとてもいい効果が出ていて、手ごたえを感じています。先日、「Netflix」が日本でのサービスを開始したので、今後は動画を閲覧する環境がさらに整ってくると考えられます。そんななか、コマースとの連携面では、「楽天スーパーTV」がけん引していきたいですね。

「楽天スーパーTV」を担当する大津健太郎氏(左)と山浦梨香さん
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