中川 昌俊 2015/11/10 8:00

千趣会は2015年秋から、新たに基幹ブランド「ベルメゾンデイズ」を開始した(参考記事)。すべての商品は製造から販売まで一貫して行うSPA型ビジネスモデルを初めて採用。顧客ニーズに対応した商品を自ら作る。新ブランドを立ち上げた狙い、そして今後の通販・EC展開を田邉道夫社長に聞いた。

「ベルメゾンデイズ」は「This is ベルメゾン」というブランド

――「ベルメゾンデイズ」はどのような立ち位置のブランドになるのでしょうか。

これまで当社が販売していた商品を振り返って磨き直した商品ブランドです。そのため、イチから作り上げたブランドではなく、ベルメゾンらしさを最も表した「This is ベルメゾン」というブランドとなっています。このブランドの周りにはいろんなPBがたくさんありますが、それぞれの特徴がより明確になって整理することもできるようになりました。

――従来、OEMでの商品提供がメインだったが、今回のブランドはすべてSPA型のビジネスモデルを採用しました。なぜでしょうか。

当社の粗利は低過ぎた。もっと製造原価が下げられるはずで、素材から製造することで、原価を下げていこうと考えました。商品ジャンルによって異なりますが、メインの衣料では5%程度改善するでしょう。これまで安く販売することを多少行ってきましたが、「ベルメゾンデイズ」はクオリティーの高い商品をしっかり作り、利益の取れる価格で販売していこうと考えています。ただ、顧客が求める価格帯があるため、クオリティーに対する市場価格よりも安い価格で提供していかなければならないと考えています。

「ベルメゾンデイズ」で取り扱う商品

――カタログやECサイトではクオリティーの高さが伝わりにくい部分もありますが。

そこが問題だと考えています。そのため、現在、契約している実店舗20店舗で大きく展開していこうと思っています。反応が良ければ「デイズ」の専門店を展開することも視野に入れています。将来的には2015年4月に資本業務提携を結んだJフロントリテイリング傘下の大丸、松坂屋などの百貨店でも展開していきたいですね。

――Jフロントリテイリングのほか、2015年7月にはワタベウェディングへのTOBを行いました。千趣会では、これまであまり外部との連携は少なかったと思います。戦略の転換などがあったのでしょうか。

前々から、チャンスがあればとは考えていましたが、どうしても自前主義で内向きなところがあったため、なかなか外部との連携はありませんでした。持ちかけられる案件は、以前から多かったのです。今回はいけそうだと感じた案件が続いたため、連続での発表になりました。社内の戦略を変えたというわけではありません。

終始にこやかに対応してくれた田邉社長

カタログの発行をやめるという考えは全くない

――最近では、カタログ通販各社がカタログの発行について戦略を大きく見直す事例が増え、発行をやめるという決断する企業も多くなっています。千趣会でもすでにECの売上比率が75%になっていますが、カタログ発行についてはどのように考えていらっしゃいますか。

全体の注文のうち4分の1はスマートフォンからの注文です。ただ、そのうちの7割はカタログを見ながらスマホで注文するユーザーです。また、カタログが届くことで「夏から秋になってきた」と感じるユーザーも多く、秋冬の衣料を買うトリガーになっているという効果も多分にあります。そのため、他社がカタログの発行をやめてきているから、千趣会も同様にカタログの発行をやめるという考えは全くありません。カタログの在り方を磨きなおすことで、費用対効果の合うものにしていくことが重要だと考えています。

――田邉社長は従来からビッグデータ分析に精通し、分析に基づいたプロモーションを行われています。総合カタログを多くの人に配布するのではなく、それぞれのユーザーに適したカタログを配布する、といったことも検討していますか。

そんな単純なものではない。総合カタログだからこそ新たな商品の発見があり、得られるユーザー満足もあります。長年、通販業界にいますが、常に変化が求められる一方で、何が正解かわかりません。改めて通販は難しいと感じますね。

――海外展開についてはどのように考えていらっしゃいますか。

中国に関しては小規模ですがECを展開しています。まだ具体的にはなっていませんが、今後は東南アジアにも展開していきたいですね。千趣会の商品は女性がターゲットのため、豊かな生活を求める人たちにマッチします。そのため、海外展開はこれから伸びていくと思っています。

――田邉さんの私見で構いませんが、今後、通販・ECはどのようになっていくと考えていらっしゃいますか。

千趣会はオムニチャネル化を進めており、一生懸命開発した商品を、お客さまが、いつでも、どこでも、好きなツール・チャネルで購入してもらえる――そうした環境作りが重要だと考えています。それは、お客さまがそうした環境を求めてきているるためです。「カタログだけ」「ネットだけ」と固執するのは企業のコストの問題で、お客さまの利便性を高める結果にはなりません。お客さまのニーズに合ったサービスを提供することが、これまでもこれからも通販市場で商売する上では一番重要なことではないかと思います。

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