通販新聞 2016/10/14 9:30

ニッセンホールディングス(HD)のカタログ販売やインターネット技術を高く評価しており、当社グループのリアルな店舗という強みと融合することで、新たなシナジー効果が生まれると判断し、提携した。

2013年12月、セブン&アイ・ホールディングス(HD)ニッセンHDによる資本業務提携締結発表の記者会見で、セブン&アイHDの村田紀敏社長(当時)はこう語り、ニッセンHD買収のメリットを強調した。しかし子会社化から2年半、ニッセンHDの業績は悪化する一方で、セブン&アイHD側が期待していたようなオムニチャネル関連における目立った成果は出ないまま、ニッセンHDは完全子会社化されることになった。

ニッセンHDではこれまで、衣料品や家具などで「値ごろ感」を打ち出すことで店舗などへの優位性を保つ典型的な総合通販のビジネスモデルで成長してきた。消費者の間にも「安さのニッセン」というイメージは浸透していたが、SPA(製造小売業)の発展がこうした優位性を失わせた。安価で流行を取り入れた商品を随時投入できるSPAに対し、カタログ通販は商品企画から販売まで1年近いタイムラグが生まれてしまうからだ。

ニッセンHDでは、ネット販売においても価格面での優位性を保つ戦略を仕掛けてきた。例えば04年秋には、消費税の総額表示を期に商品価格を一律5%値下げ。09年秋カタログでは前年秋カタログ比で平均10%価格を引き下げた。09年当時のニッセン佐村信哉社長は、本紙のインタビューに対し「ネットで強くなろうと思ったら、プライスリーダーにならなければいけない」などと語っていた。

ただ、ネット販売を良く使う若年層女性からは「安っぽい」と受け止められがちだったニッセンの商品。ユニクロに代表されるSPAにはブランド価値という点で大きく引き離されていた。そこで10年からはブランドイメージの転換を図るべく、社内に戦略プランニング本部を設置。女優の香里奈さんをイメージキャラクターに起用したテレビCMなどを展開するなどの施策で「手ごろな商品を扱っている」というブランド観を確立、F1層のファン開拓を狙ったわけだ。

だが、こうした戦略も実を結ばなかった。11年12月期決算のアパレル売上高は減収に。特にリピート率の悪化が深刻だった。ニッセンHD佐村信哉社長(12年1月当時)は、「ネットのライバルとの競争に負けている」と原因を分析。楽天市場やスタートトゥデイの「ゾゾタウン」などに「価格や品揃えで負けている」(当時の佐村社長)ことがリピート率悪化につながっていた。

07年には投資会社のアドバンテッジパートナーズがサービスを提供するファンドを引受先に第三者割当を実施。一時は「他の大手総合通販との提携や合併を模索する動きも進んでいた」(業界関係者)という。他の大手総合通販に比べると財務体質は弱く、08年12月期には自己資本比率が14.2%まで低下。10年12月期は39.7%まで持ち直したものの、セブン&アイHDによる買収前となる13年12月期の自己資本比率は27.7%。その後は最終赤字が続き、今中間期は債務超過寸前まで追い込まれた。

家具撤退で稼働客大幅減

2014年1月にセブン&アイ・ホールディングス(HD)の子会社となったニッセンホールディングス(HD)。だが、業績回復の兆しは見えなかった。

カタログ通販企業の弱点といえるのが、「カタログの発行時期と販売する商品の季節感が合致していない」という点。ニッセンHDでは13年時点で、売り上げ不振の原因を「気候に合わせて必要な時期に必要な衣料品を買う傾向が進展したことが大きい。例えば、夏物の衣料品であれば、暑くなってからでないと買わなくなってきている」(広報企画室)と分析。そこで、カタログのページ数を減らす代わりに配布頻度を増やすことで、季節感のある商品を、カタログでも販売できる体制を目指した。

しかし、この戦略は失敗に終わる。14年8月に発行した初秋号以降のカタログ発行回数を、従来の2回から3回に増やして売り上げ回復を目指したが、品揃えの不足やカタログ有効期間の重なり、閑散期となる盆休みにカタログを発行したことなどにより、14年下期の売り上げは計画を大きく下回り、販売固定費率も悪化した。

14年末には社長が市場信行氏に交代。15年12月期はカタログ発行回数減少や不採算事業の整理・縮小を進めた。ページ数を減らした薄型カタログに転換し、カタログ発行回数を削減。F1層女性の獲得を狙った販促をやめ、ワーキングマザーとファミリー層にターゲットを絞った。これに伴い、主力ターゲットから外れるシニア向けカタログや和装カタログ、ハイティーン向けカタログなど整理・縮小した。

15年8月には大規模な経営合理化を実施。ソファーやベッドといった大型家具事業から撤退。さらに、120人もの希望退職を募集した。大型家具事業では、破損防止のために配送時に2名体制で対応していたことや、原油高による配送原価高騰などにより、配送コストが大幅に増加しており、赤字が拡大していた。

15年12月期の連結業績は、赤字幅がさらに拡大した。今期はカタログのビジュアルを一新し、ファッション雑誌を意識したスタイルとするなど大幅に刷新(画像は刷新後の2016年春カタログ)。これまで受注予測に使ってきたテストカタログと、新規顧客獲得を目的とした無料配布カタログを完全に廃止し、有料カタログにシフトした。

通販新聞が分析する「セブン&アイホールディングス子会社ニッセン凋落の理由

さらに、「安さのニッセンから価値のニッセンへと変えたい」(市場信行社長)として、MD改革を打ち出した。セブン&アイグループのノウハウを活用した商品として「セレクト10」を開発。15年春の段階では、2000円以下の商品ラインアップが中心となっていたことから、同一価格帯に集中した品揃えを是正。今年の春カタログでは2000~2499円を中心価格帯として品揃えを厚くし、下は500円から上は4000円までカバーするなど「プライス構成を以前の三角形からヒシ形に変えた」(市場社長)。

しかし、今期も不振は続く。ニッセンの月次売上高は、今年6月まで17カ月連続前年同期を下回った。2月には大型家具事業から撤退した影響で、家具とインテリア商品、アパレルを同時に購入していた顧客が離れ、想定以上に稼働客数が減少したという。ニッセンHDの今中間期の純資産は6900万円で債務超過寸前となった。

さらに、ニッセンHDの資金繰りに重大なリスクが生じる可能性まで出ていたことから、6月初めにはセブン&アイHDに対し、債務超過リスクや銀行や取引先からの与信低下、資金繰りリスク等に対処するため、完全子会社となることを前提に、財務・事業の両面での経営支援を願い出たという。

大規模な合理化必至

ついに上場廃止に追い込まれたニッセンホールディングス(HD)。売り上げも大幅に減少している同社だが、今後はどうなるのだろうか。

7月からニッセンの通販サイトで買い物をした顧客に対し、全国のセブン―イレブン店舗で使えるドリンクの無料引換券をプレゼント、セブン―イレブンでソフトドリンクを購入したユーザーに対しては、ニッセンの通販サイトで使える200円引きクーポンを発行するキャンペーンを行っているが、ひとまずはグループ会社とのこうした共同販促を進めていくことになりそうだ。また、セブン&アイグループの電子マネー「ナナコ」の導入(ニッセンは共通ポイント「Tポイント」を採用)が進むかどうかも注目される。これまでは子会社化による目立った相乗効果が見えていなかっただけに、業績回復にはより密接な連携が不可欠だろう。

ただ、ニッセンの不振は「さまざまな商材を品揃えして手頃な価格で売る」という、総合通販が採用してきたビジネスモデルそのものの行き詰まりが根幹にあるため、主力事業であるアパレルの抜本的な立て直しや合理化は避けられない。

8月2日に公表したプレスリリースに記載された事業計画では、17年12月期から20年12月期にかけて、戦略商品の投入と販促効率の改善による顧客基盤の拡大と稼働促進、商品定番化とASEANを中心とした海外調達シフトによる原価の削減などを進めるとしており、20年12月期の売上高は1559億円(今期見込みは1279億円)、営業損益は31億円の黒字(同102億円の赤字)を見込んでいる。

だが、この数字を額面通り受け取ることはできない。稼働顧客が減少し赤字が続いている状況で、主力商材である衣料品の競争力を早期に取り戻すのは極めて厳しいとみられるからだ。

グループのオムニチャネル戦略から外された格好だけに、セブン&アイ・ホールディングス(HD)にとって、今のニッセンHDは“お荷物”というべき存在となっている。当初、セブン&アイHDが評価していたニッセンHDの顧客リストやビジネスモデルといったものは「まったく価値がなかったということだろう」(ある通販企業の幹部)。

ニッセンHDの中で数少ない好調事業といえる、大きめサイズアパレル「スマイルランド」(画像はスマイルランドの通販サイト)は、レディースアパレルの売り上げのうち約20&を占めるまでに成長している。こうした特殊サイズアパレルに特化し、その他のアパレル事業は切り捨てられることも十分考えられる。

通販新聞が分析する「セブン&アイホールディングス子会社ニッセン凋落の理由

先の通販企業幹部は「ギフトのシャディや特殊サイズアパレルなど一部の事業は残るだろうが、それ以外のカタログを中心とした通販ビジネスについては、リストラを進めながら数年以内に消滅するのではないか」と予測する。

ニッセンHDでは8月25日、9月27日付での社長交代を発表した。市場信行社長とセブン&アイHD執行役員の永松文彦副社長ら3人が退任し、社長には脇田珠樹取締役が昇格。主力子会社ニッセンでも、市場社長が退き、羽渕淳執行役員が社長に就任する。

ニッセンHDでは今回の社長交代について「経営責任を明確にした」(広報IR部)と説明。脇田氏はニチメン(現・双日)出身で、02年にサンダーバード国際経営大学院で経営学修士(MBA)を取得した。ニッセンにおいては、09年に戦略プランニング本部を立ち上げた際、本部長に就任。ニッセンブランドを再構築するための施策を進めていた。同氏は生え抜きではないだけに、大規模な事業整理をしやすい立場とみることができる。一方、羽渕氏は大きめサイズアパレルブランド「スマイルランド」を立ち上げた実績がある。

今回の人事は、さらなる事業縮小と特殊サイズへの特化を示したものといえそうだ。大型家具事業撤退に続く、第2弾の大規模な経営合理化が近々待ち構えている可能性は高い。

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