通販新聞 2016/2/16 7:00

ニッセンホールディングスの2015年12月期連結業績は、売上高が前期比14.4%減の1572億8900万円、営業損失は81億5900万円(前期は72億9200万円)、経常損失は73億6300万円(同83億9300万円)、当期損失は133億2400万円(同89億2000万円)だった(前期業績は子会社の決算期変更の影響を除外した数値、前期比は同数値と比較)。赤字が続き、再建に向けて待ったなしの同社が進める構造改革とは。

前期連結業績を発表

総合通販トップ企業であるニッセンHDの歴史と歩み①

昨夏、大型家具事業からの撤退や希望退職募集などの経営合理化策を実施した、主力子会社のニッセン。ニッセン関連事業の15年12月期売上高は前期比20.8%減の842億4000万円、経常損失は77億9000万円(前年同期は73億8000万円)となった。

在庫処分を優先したことで商品単価が下落。売り上げ減と利益減双方に影響した。一方、コスト削減やプロモーション効率改善による販売固定費率が利益良化要因に。ニッセンは引き続き営業赤字が続いているものの、第3四半期(7~9月)と第4四半期(10~12月)は前年同期と比較すると改善傾向にある。カタログ発行頻度を絞ったことなどで、特に第4四半期の営業赤字は16億6000万円となり、前年同期からは12億5000万円改善した。

14年下期にカタログの発行回数を増やしたことで在庫が膨れ上がったものの、15年下期は在庫の早期処分に踏み切った。一時期は約200億円あった通販在庫の水準は、前期末で107億円まで減少している。悪化していたカタログ費用効率は発行部数の削減とページ減を進めることで軌道修正。今期はカタログの部数・ページ数最適化を進めるとともに、受注予測に使ってきたテストカタログと、新規顧客獲得を目的とした無料配布カタログを完全廃止し、有料カタログにシフトした。

今期進める構造改革でもっとも重視するのがMD改革だ。「安さのニッセンから価値のニッセンへと変えたい」(市場信行社長)。セブン&アイグループのノウハウを活用した商品として「セレクト10」を開発。例えば、春カタログで販売している「日本製裏毛パーカ」は、価格が税別5990円からと高いものの、同社通販サイトでのくちコミ評価は5段階で平均4.9点と非常に高いという。

去年春の段階では、2000円以下の商品ラインアップが中心となっていたことから、同一価格帯に集中していた品揃えを是正。今年の春カタログでは2000~2499円を中心価格帯として品揃えを厚くし、下500円から上は4000円までカバーするなど「プライス構成を以前の三角形からヒシ形に変えた」(市場社長)。

商品調達も大きく変える。欠品による売り逃し、つまり「機会ロス」と“死に筋”商品の在庫過多、つまり「デッドロス」をそれぞれ減らす。これまでは、売れ筋も死に筋も平準的に発注をかけていたが、今後は売れ筋は在庫を積み増す一方で、死に筋は発注を抑えるとともに早期在庫処分を行うという。

カタログも大幅に刷新。以前は価格を目立たせる誌面構成だったが、判型を大きくし商品の特徴を目立たせる形に。カタログも右開きに変え、雑誌風とした。さらに、スマートフォン・パソコンサイトの全面刷新も予定している。セブン-イレブンでの商品受け取り数も「予想以上」という。

今期業績予想は開示を控えているものの、こうした取り組みを通じ、ニッセンの売上高は横ばいで推移する一方、原価率や販売固定比率などを軒並み下げることで営業損益を改善する計画だ。

とはいえ、市場社長も認めるように「経営構造改革は道半ば」なのが実態。顧客数減少に対する打ち手が見いだせておらず、黒字化への道は遠い。春カタログについても「商品力は高まったが、顧客数が減ると売り上げ拡大はできない。マーケティングへの投資が急務となる」(市場社長)。

顧客層を30~40代のワーキングマザーに転換したニッセンだが、F1層と同様に競争が激しい分野だ。市場社長は「ポイントは商品力。カタログについては、届いたことをきっかけにサイトに来訪する消費者が多い。その効果を最大に高めるような使い方をしたい。ネットではSNSの活用がより重要になってくるだろう」。無料カタログを廃した中で、どう新規客を増やすのか。そして、商品力の強化は消費者に浸透するのか。市場社長が進める構造改革の成否がかかっている。

総合通販トップ企業であるニッセンHDの歴史と歩み、業績推移②

市場社長との一問一答

2月9日に行われた、ニッセンホールディングス(HD)の決算説明会における、市場社長とアナリストや記者との一問一答から抜粋し掲載する。

◇◇◇

――価格訴求から価値訴求へと戦略を変えるとのことだが、ターゲット層も変えるのか。また、広告戦略の変更は。

30代から40代のワーキングマザーを主要ターゲットと定義している。ここから離れた層についてはカタログを廃刊することで対応した。ただ、一番重要なのは、『日本製裏毛パーカー』のように『高くても良い商品だね』と顧客に言ってもらえるようなMDを進めていくことだ。一方で、稼働促進や入り口を考えた場合、リーズナブルな商品も無くさないようにしたい。当社の特性はSPA(製造小売り)なので、可能な限りプライベートブランドで低価格商品を出すという考えは踏襲する」

「広告については、今年は売り上げを拡大するためにプロモーションを積極的に行う年と位置付けている。CMや電車内広告などで『ニッセンは変わった』ことをアピールしている。今回は男性モデルを使っているが、企画したのは女性の部隊。SNSのくちコミ効果を最大に活かせるような企画を進めている。また、スマートフォン向けの販促については、LINEを活用することで成果が出ている

――MD改革について。

「商品開発やブランド管理、取引先管理と昨年春頃から幅広く進めている。春カタログは半分くらいが新しい考え方の元に投入した商品だ」

――取引企業社の絞り込みを行ったとのことだが、具体的には。

「少量多品種で進めてきたので取引先となる海外の工場が分散し、技術よりも価格にこだわってきた経緯がある。品質を上げるために取引先を絞り込んだ」

――セブン&アイグループからMD関連で何を学んだのか。

「商品開発プロセスについて、セブン-イレブンの手法、さらにグループとして注力しているチームMDの手法などだ。『セブンプレミアム』のように、一つひとつの商品をきちんと作りこむことが重要」

――春カタログの出だしは。

「見定めているところ。新しい価値訴求施策に良い反応も帰っているが、従来の顧客から『右開きはなじめない』という声もある」

――無料カタログを廃止したが、今後どう新規客を開拓するのか。

無料カタログ経由の新規客獲得の効率が明らかに低下していたこともあり、有料カタログのテストを続けてきた。新規客のネットからの獲得については、もっと拡大したい。ネットから導入した客の受け口はネットとなるが、カタログのプロモーション効果を乗せることで継続顧客としていきたい。効率を見ながら慎重に拡大する」

――セブン&アイ・ホールディングスの「omni7」への参加や今後のポイント施策は。

最優先課題は経営を立て直すことomni7への参加は現状では考えていない。ただ、セブン-イレブン受け取りなど、使える部分については同調していく。ポイントに関しては、カタログでのポイントはナナコに変える可能性はあるカタログでのポイントはナナコに変える可能性はあるが、時期は未定だ」

――カタログ経由でネットから注文する顧客の比率は。

「カタログの品番をネットで打ち込んで購入する顧客は減っている。ただ、カタログ閲覧をきっかけサイトにアクセスする人が多いのは事実。商品カタログであると同時にプロモーション効果がある。カタログのインパクトは極めて大きい」

――現状の施策では赤字縮小しかみえないが、今後の構造改革についてどう考えているか。

「詳細は答えられないが、現状の改革は道半ばだ。費用削減は手をゆるめてはいけない。また、顧客数が減少しているので、マーケティング投資が急務となる。今回の改革は中間管理職まではほぼ浸透したが、今後は社内全体や取引先にまで完全に浸透させたい。中期的な施策としては、スマートフォンの世界が変化することを踏まえて、当社のカタログの強みとネットをつなげて新ビジネスを創造したい」

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