楽天の国内EC流通総額は約3.4兆円で、伸び率は13.6%【2017年度の実績まとめ】
楽天の2017年度(2017年1~12月期)国内EC流通総額は前期比13.6%増の3兆3912億円だった。伸び率は2016年度と比べて1.6ポイント拡大し、高い成長率を維持している。三木谷浩史社長の説明などから、楽天の2017年度をまとめてみる。
2016年度(2016年12月期)の国内EC流通総額は2兆9853億円。2017年2月に発表した流通総額は3兆95億円だったが、今回の決算発表時に「爽快ドラッグとケンコーコムの合併等のタイミングで直販ビジネスの流通総額定義の見直しがあった為、数値を遡及修正している」とした。
国内EC流通総額は「楽天市場」の流通総額に加え、トラベル、楽天マート、楽びんなどの流通額を合算した額。
2017年度は四半期ベースで2ケタ成長を維持し、通期で2ケタ台の成長率を維持している。
2017年度の国内EC流通総額の四半期ベースの推移
- 2017年10~12月期(第4四半期) 前年同期比13.0%増の9583億円
- 2017年7~9月期(第3四半期) 前年同期比13.6%増の8505億円
- 2017年4~6月期(第2四半期) 前年同期比15.2%増の8123億円
- 2017年1~3月期(第1四半期) 前年同期比12.8%増の7701億円
流通総額の拡大、要因は?
スーパーポイントアッププログラム(SPU)
SPUはエントリー不要でポイントを最大7倍付与するもの。「SPUを強化し、Amazonの背中を追いかけている」(三木谷社長)と話すように、2017年10月からは楽天ブックスがSPUに追加。2017年12月度の楽天ブックスの流通額は前年同月比で33%拡大した。
SPUの提供によって、ライトユーザーからロイヤルユーザーへの育成が順調に推移したという。2015年12月度と2017年12月度を比較すると、
- ダイヤモンド/プラチナ会員の1月あたりのユニーク購入者数 → 35%増
- ダイヤモンド/プラチナ会員の1月あたりの注文件数 → 33%増
- 市場アプリ流通総額 80%増
- 楽天市場モバイル流通総額比率 56% → 65%
SPUには、楽天カードで決済するとポイント付与率が増えるといったキャンペーンなどもある。「楽天市場」の流通総額における楽天カード決済比率は継続的に拡大中で、2017年12月度は55.9%まで増えている。
直販の強化
楽天ブックスのSPU追加で流通総額が拡大。また、日用品の直販ビジネスを手がけるRakuten Direct(爽快ドラッグ + ケンコーコム)の売上高は740億円に達し、「売上収益は競合大手を上回る」(楽天)としている。
楽天は、価格や配送、ジャンルの特性を重視した戦略を推進しており、2018年1月に米国大手の小売企業ウォルマート・ストアーズとの戦略的提携を発表。2017年12月にはビックカメラと合弁会社を設立し、2018年4月から家電分野を中心としたネット通販を始めることを発表している。
三木谷社長は大手小売企業との連携などを踏まえ、「国内EC流通総額は4兆円が見えてきた」と話した。
CtoCの強化
楽天の「ラクマ」、グループのFablicが運営する「フリル」のCtoC事業の年間流通総額の規模は1400億円(2017年12月度の流通総額から参照)という。
なお、「ラクマ」と「フリル」は2月26日にサービス統合。新サービス「ラクマ」としてフリマアプリの運営を一本化する。
今後の施策
One ペイメント
「楽天市場」における決済の方向性として、楽天が「楽天市場」の決済を一括管理する構想「One Payment」に言及。「楽天ペイ(楽天市場決済)」の導入によって、消費者は複数店舗の商品を一度の決済で買い物ができるといった仕組みに移行する。
楽天がすべての店舗で利用できる決済手段を統一。ユーザーの利便性や店舗の決済業務の軽減を実現するという。
ワンデリバリー
三木谷社長は1月の「新春カンファレンス」で言及した「ワンデリバリー」構想にも触れ、「ファーストワンマイルとラストワンマイルも楽天が管理できるようにする」と三木谷社長は説明した。
今後、労働力不足によって物流関連業務のオートメーション化が重要になると三木谷社長は言及。「相模原の倉庫などではすでに自動化が行われている。倉庫内オペレーションは他社に比べて優位だと思う」と言う。
物流拠点の整備も進める。現在、関東に2か所(市川、相模原)、関西に1か所(川西)を構えているが、これを10か所まで拡大することをめざす。北は北海道、西は福岡まで増やし、配送スピードや配送コストの低減につなげる方針だ。