中川 昌俊 2014/8/25 12:00

モールの年間流通額は1兆7000億円を超え、日本のEC市場の約3割が楽天市場経由といわれている。2014年は消費税増税に加え、昨年9月に実施した優勝セール、11月の日本一セールが今年は開催が難しいため、昨年のような大きな成長は期待できない状況にある。ヤフーショッピングが出店料無料化を実施するなど、取り巻く環境が変わりつつあるなか、楽天では「プレミアムモール化」を推進することで出店者の満足度を高め、さらに成長力を高める戦略を進めている。楽天が進めていく戦略について楽天市場を統括する高橋理人常務執行役員に話を聞いた。

流通額の約40%がスマートデバイス経由、楽天が一番モバイルECが進んでいる

――消費税増税の影響が予想された4~6月期の国内EC流通総額は、結果的に前年同期比8.1%増。実感として消費税の影響はどうだったか。

実店舗の場合、増税前に商品を買いに行こうと思っていても、結局足を運べなかったというケースがあるが、ネット通販の場合、増税前に購入することは容易だ。実際に増税前の駆け込み購入が多く発生し流通額も大幅に伸びたので、増税による反動が大きくなるのではないかと懸念していた。4月、5月、6月と売り上げが戻り、数字としても前年同月を超えることができた現状を考えると、それほど影響はなかったのではないかと思っている。直近で行った「お買い物マラソン」も内部で設定していた目標を大幅に上回り、一部高額商品を除いて消費者の購入意欲は戻ってきていると考えている。

――スマートデバイス(スマホ・タブレット)経由の流通額も順調に拡大している。

最近は流通額の約40%がスマートデバイス経由になっている。また、一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)が発表している日本のモバイルECマーケットの規模をもとに算出すると、楽天市場のシェアは約50%。多くの企業がモバイルECを戦略的に強化しているが、システム的にもデザイン的にも楽天が一番進んでいることは間違いない。スマホやタブレットのそれぞれの機種に応じて最も買い物しやすいデザインを常に検討し、最適なデザインを採用している。

店舗がECCを定期的に評価する取り組みを開始

――7月から8月にかけて全国で楽天EXPOを開催。参加した出店者の反響はどうだったか。

今年は「together」というテーマで開催したが、これは、他社との最大の違いである、楽天と出店者の関係、出店者同士の関係、出店者と消費者との関係の濃密さを表したもので、出店者同士のコミュニケーションを促進するようなワークショップやフォーラムを拡充した。参加した出店者からは「さまざまな人と話すことができた」という声が多く挙がり、好評だった。

楽天が出店者と同じ目線でより近い関係を築かなければならないと考えたのは、昨年の不当な二重価格表示に関する問題が発覚したことや、その後、社員の関与が明らかになった問題があったため。実際、こうした問題が発生した後、楽天内部で反省し、「楽天市場は何のために存在していて、どこに向かいたいのか」ということを何度も話し合った。こうした議論を積み重ねることで、再び楽天がやるべきことがはっきりしたと考えている。

こうした考え方の基、最近始めたのが、店舗が担当のECコンサルタントを定期的に評価すること。今までは、担当のECコンサルタントの評価は店舗の売り上げを伸ばすことが最も重要な指標としてきた。しかし、それだけでなく、担当店舗としっかりコミュニケーションをとっているか、担当店舗から信頼されているかなどをアンケートを通じて伝えてもらうようにした。今まで以上にECコンサルタントは店舗のことを考えた行動をとる必要が出てくるだろう。それが各出店者と楽天との距離を縮めることにつなると考えている

――楽天の出店者には地方の出店者も多い。最近ではヤマト運輸や佐川急便が配送コストの適正化ということで距離別の配送料金を採用。結果的に地方の出店者が困っているという声をよく聞く。この問題に関して、楽天ではどう考えているか。

楽天としてできることは、当社の物流サービスを強化することで、地方の出店者でも安く利用できる環境を提供するということにある。一部では楽天は物流サービスを縮小する方向で動いているという見方もされているが、そんなことはない。確かに、物流センターの設置計画を変更するなどの動きはあるが、それは、現状のサービス状況に合わせた動きだ。引き続き、サービスレベルを高めてより多くの出店者に利用してもらえるようにしていこうと考えている。

――これから年末にかけて力を入れていくことは。

先日発表した無料の動画講座「楽天RUx」は今年中に1000コンテンツまで増やしていくつもりで、急ピッチで充実を進めていく。今回の無料動画化で、店舗のすべての従業員に見てもらいやすい環境になった。社員教育に使ってほしいと思っている。

先日のEXPOで発表したが、システムもさらに強化をしていく。「プレミアムモール」として出店者に対し、ほかにはないサービスを提供、より近い立場で展開していくことを改めて確認した。消費者だけでなく、これまで以上に出店者にも満足してもらえる取り組みを進めていく。

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