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楽天の三木谷浩史社長が独自の配送ネットワーク構想「ワンデリバリー」をぶち上げてから約半年。7月17日に開かれた「楽天EXPO2018」で、三木谷社長は「ワンデリバリー」構想、MNO(モバイルネットワークオペレーター)として参入する携帯キャリア事業、「One Payment」構想などを語った。4000人以上の出店者の前であかした構想や方針をまとめた。

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2020年までに独自配送ネットワークを構築

2017年は配送ネットワークがパンクした。楽天の直販サービスも出荷制限をしなければならない状況に陥った。(配送については)出店者の皆さんと一緒に新しいことをやらなければ、店舗も楽天の将来もない。

2018年1月、こう危機感をあらわにし、楽天グループの新しい挑戦として三木谷社長がぶち上げた「ワンデリバリー」。7月17日の「楽天EXPO2018」で、三木谷社長は次のように配送問題の原因に言及した。

(物流問題で)配送を受け付けてもらえないケースが出てきたり、送料も上がっている。この根本的な原因はどこにあるのだろうか? 宅配便というCtoCという個人間取引の仕組みにBtoCの荷物を載っけているところに無理が生じてきた。

EC市場の急拡大で、不在再配達、配送量規制、送料値上げといった問題が顕在化――。三木谷社長は、「『ワンデリバリー』は新しいチャレンジだが、やりたいことというよりも、やらなければならない。そうしなければ将来は開けない」と意気込みを語る。

現在、「楽天市場」ではECプラットフォーム側が購買データ、配送キャリアが配送データを持つ構造となっている。販売側と配送側で情報が分断されており、三木谷社長はこうした構造が問題となっていると指摘。

楽天は、購買データに加え、配送データも管理することで商品の注文から配送までの仕組みを一気通貫で整備。受け取りの利便性向上、再配達削減、配送状況の可視化などの実現をめざす。

楽天のワンデリバリー構想
店舗、ユーザー、楽天の3者を有機的につなぎ、AI(人工知能)やビッグデータを使って効率化してくという

お買い物マラソン、楽天スーパーセールで購入した場合、人によっては一度に荷物を持ってきてほしいという人もいる。商品を(玄関などに)置いていってという人もいる。500円の文房具から10万円のハンドバッグまで同じように外注して配送していた。今後はそれらを一元管理していく。積極的な形で、物流、ラストワンマイルに参加することが“Make Sense”(道理にかなうの意味)だ。(三木谷社長)

「楽天EXPO2018」で公表された「ワンデリバリー」構想に関するイメージ動画

現在、楽天は関東に2か所(市川、相模原)、関西に1か所(川西)、商品の保管から出荷までを手がける物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」の物流センターを構えている。日本GLPが開発する大型物流施設「GLP流山」の全フロア、「GLP枚方」の一部を貸借。2019年までの稼働をめざす。

新施設では、最先端のマテリアルハンドリングシステムを導入。人手不足が進む中、運営の大幅な効率化・省人化に取り組むとしている。

翌日配達サービス「あす楽」は全国90%以上をカバーし、土日祝日、365日出荷が可能になる2019年には稼働したい。(三木谷社長)

「楽天スーパーロジスティクス」の新設計画
「楽天スーパーロジスティクス」の新設計画

ちなみに、楽天は東京23区内で独自配送を実施中。楽天ブックス、「Rakuten Direct(楽天ダイレクト)」で運用しているという。「今後は店舗の皆さんの商品を届けていきたい。楽天は2020年をターゲットに全速力で展開していく」(三木谷社長)

楽天BOXを活用したピックアップ場所の多様化、置き配配送通知、自宅外受け取り日時・場所指定などを展開していく
楽天BOXを活用したピックアップ場所の多様化、置き配配送通知、自宅外受け取り日時・場所指定などを展開していく

ワンペイ構想、2018年末までに全店舗導入

楽天は2017年に決済サービスのブランドを「楽天ペイ」として統合。「楽天ペイ(実店舗決済)」「楽天ペイ(アプリ決済)」「楽天ペイ(オンライン決済)」といったサービスの提供を通じ、楽天IDによる他社サイトや実店舗での決済を実現。楽天IDの利用拡大を図っている。

「楽天市場」の決済を一括管理する構想が「One Payment」。「楽天ペイ(楽天市場決済)」によって、すべての店舗で利用できる決済手段を統一することで、支払いの一元化、入金サイクルの統一などが期待できるとした。

「One Payment」で実現できること
「One Payment」で実現できること

2018年末に向けて全店舗に導入する。店舗の皆さんにはご理解いただけているかなと思う。1店舗の抜けもなく実現していくことが全体の底上げになる。(三木谷社長)

チャット機能拡大

店舗スタッフと消費者がチャットできる機能で、2017年から試験的に運用を始めた「チャット機能」。これまで約100店舗が試験導入した。

導入店舗では、未利用者と比べて転換率が14.8ポイント向上、平均注文額は未利用者比135.5%流通効果は楽天の試算で0.41%増という。

楽天が公表したチャット機能の導入効果
チャット機能の導入効果

店舗スタッフがコンシェルジュ、これが楽天のコンセプト。商品について一番詳しいのは店舗である。だが、店舗側が(消費者からの)全質問に答えるのは大変。AI(人工知能)搭載のAI Chatbotを全店舗に導入していこうと思っている。(三木谷社長)

こう話した三木谷社長は、簡単な質問にはAIが回答する仕組みを整備。すでにトライアルでAIチャットボットの活用を始めているという。

AIチャットボットの進化にも言及した三木谷社長。「今後もキーボードで文字を叩き続けるのか? それともボイスが主流になっていくのか?」(三木谷社長)。三木谷社長は音声検索といった行動が増えると指摘し、ゴルフ場予約サービス「楽天GORA」で取り組んでいる「ボイスサーチ」に言及した。

「楽天GORA」のボイスサーチを利用してゴルフ場を予約すると、楽天トラベルでの宿泊、購入履歴に応じて楽天市場での商品購入提案といったレコメンドも行う事例を披露。そして、次のように話した。

ボイスサーチは楽天グループの全サービスが絡んでくる。ゴルフ場予約から楽天トラベル、楽天市場で買ったことがある商品の提案。このような形でAIチャットボットについても導入していく。(三木谷社長)

楽天が公表したボイスサーチの事例
ボイスサーチの事例

クロスボーダーECは拡大中

越境ECのシェアはますます大きくなるので、楽天グループも強化していく。楽天はJD.com、米国eBayなど、海外のさまざまなパートナーと連動、提携している。(三木谷社長)

楽天の越境ECは、JD.com、米国eBayなど、海外のさまざまなパートナーと連動、提携している
クロスボーダーECにおける連動・連携先

楽天のクロスボーダーは拡大傾向が続いており、2017年の流通総額は2012年と比べて8倍に拡大しているという。

楽天が公表したクロスボーダーEC流通総額と海外販売ランキング
クロスボーダーEC流通総額と海外販売ランキング

「楽天市場」などの取扱商品を対象とした海外向けの配送サービス「Rakuten Global Express(楽天グローバルエクスプレス、RGE)」を2017年にスタート。海外ユーザーにより便利な物流サービスを提供するとした。

言語の壁について三木谷社長は、「コミュニケーションも重要なので、チャットボットも自動翻訳によって多言語対応していく」としている。

O2Oを強化し店舗の集客施策に活用

現状のEC化率は5.79%。残りの95%を皆さんと一緒に取り込んでいきたい。日本の家計消費は245兆円もある。楽天はショッピング以外のオフラインマーケットも獲得し、出店者の皆さんの集客施策に活用する。そして、店舗を持っている皆さんには、集客支援などをしていく。

オフライン市場を取り巻く環境
オフライン市場を取り巻く環境

こう話した三木谷社長は、リアルでも使える楽天ペイ、キャッシュレス決済を推進しOtoOを拡大していく方針を説明。「ペイメント」「デリバリー」に加え、重要視しているのが位置情報だ。

(位置情報技術を開発するスタートアップである)米国のカーブサイドを買収した。AIなどを使って、消費者の位置情報から商品の到着時間を予測することができるのが特徴で、今後は荷物の到着予定時間などを正確に伝えていくことが重要になる。(三木谷社長)

楽天のOtoO戦略
楽天のOtoO戦略

携帯キャリア事業で「楽天市場」を底上げ

「楽天市場」の流通総額は、2018年3月時点で66.5%がモバイル経由。元旦(2018年1月1日)のモバイル流通総額では、訪問比率86.1%。流通総額比率76.7%がモバイル経由だった。今後、モバイル経由の比率は85%~90%になると思う。(三木谷社長)

「楽天市場」のモバイル経由流通総額
「楽天市場」のモバイル経由流通総額

このようにモバイル流通額に言及した三木谷氏は続けて、「楽天はMNO(モバイルネットワークオペレータ)として携帯キャリア事業へ挑戦する」と出店者に宣言。

現在、家計に占める通信料金の割合・負担が増えていることに触れ、「通信料金をリーズナブルに提供し、便利でいかに早く提供できるか、そして、携帯キャリアというモバイルの“根っこ”の部分を押さえて『楽天市場』の流通額を増やしていけるかが重要になる」と出店者に訴えた。

電話通信料と家計負担の推移
電話通信料と家計負担の推移

楽天グループは9700万人の会員にリッチなサービスを提供しており、ポイントプログラムは1兆ポイントを発行。ポイント対応店舗数は70万店舗を超えている。このモバイルエコシステムを生かし、ソフトバンク、KDDI、NTTドコモドコモではなく楽天がトップになる――そうした世界を作っていこうと思っている。

夢ではなく、現実にやってきた実績を考えれば、実現できる。さまざまな技術が入ってきているので圧倒的な技術力で勝負し、ナンバーワンキャリアになる。そして、日本の半分くらいは楽天モバイルを使っている世界を実現したい。(三木谷社長)

楽天はモバイルエコシステムを構築し、「楽天市場」への誘導などにつなげていく
楽天はモバイルエコシステムを構築し、「楽天市場」への誘導などにつなげていく
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瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

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