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オンラインで商品を販売する際、ネット上の巨大勢力Amazon(アマゾン)とパートナーシップを結ぶことはもはや避けられないでしょう。しかし、小売事業者は自社にしかない強みを保っておくことが必要です。

年に1度の小売事業者の大規模カンファレンス「Shoptalk」がラスベガス開催された際、いつも通りMacy's(メイシーズ)やWalmart Inc.(ウォルマート)、Nordstrom(ノードストローム)といった巨大企業の話が出ました。しかし、今回みんなが話したがったのは、(驚くべきことに)アマゾンについてでした。

小規模オンライン通販事業者から、伝統的な実店舗ブランドまで、みんなが同じ質問をしたのです。

アマゾンがマーケットシェアを独占するなか、自社ECサイトでの販売に意味があるのか?

他に類を見ないアマゾンの顧客数を利用して、アマゾンだけで販売した方が得策なのか?

その答えは「両方とも正解」です。

アマゾンに関しては、アマゾンを打ち負かすとか、アマゾンとパートナー組む、という単純な話ではすでになくなっています。最も確実なことは、ネット上で急速に成長しているアマゾン号に乗り込むと同時に、オンライン上での自社のアイデンティティを確立していくことです。なぜその中庸なやり方が最も確実な方法なのか、理由を解説します。

アマゾンは諸刃の剣

オンライン上の売り上げの43%を占めるアマゾンの影響を無視することは、実際は不可能です※1。今のアマゾンは15年前のウォルマートのようです。

どこからでもアクセスでき、インターネットで商品を探すときに消費者が最初に訪れる場所となっています。規模の小さな小売事業者のみならず、卸売販売業者もアマゾンに参加したいと思うはずです。

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※1 米国ネット通販市場におけるアマゾンの売上比率(編注:編集部が過去記事をもとに追記)
出典:インターネットリテイラー、ChannelAdvisor、Slice Intelligence、米国商務省
※市場シェアにはアマゾンが自社で販売した製品および、同社のマーケットプレイスで販売された製品が含まれる

しかしながら、アマゾンと組むことで払わなければいけない代償があります。多くのアマゾン顧客はアマゾンへのロイヤルティが高く、アマゾンでしか買い物をしません。そのため、自社のブランディングをアマゾン内で行っても、ロイヤルティを高めることは難しいのです。また、アマゾンは小売事業者や商品に対して忠誠心などまったく持っていません

ウォルマートと同様に、アマゾンは中間事業者です。パートナーシップを組めば、アマゾンのサイト内で販売できますが、販促用のプレミアムを得たり、バーチャルな陳列棚で良い場所が確保できたりする保証はありません。検索結果で4ページ目に表示されるような事態になったら、真剣に商品を探している消費者の目にしか止まらないでしょう。

つまり、アマゾンにすべてを委ねると、小売事業者は多くのメリットを失います。ブランディングを行い、ストーリーを伝え、消費者と関係性を築いていくといった機会を失うのです。

トイザらスが最も良い事例でしょう。2000年にトイザらスはアマゾンと10年間の独占契約をしました(編注:トイザらスの公式サイトをアマゾン内に開設し、玩具ジャンルで唯一販売業者となる契約内容だったという)。

しかし、2004年には他のおもちゃ販売業者がアマゾンに大量参入してきました。トイザらスはアマゾンでの競争力を失っただけではなく、ECのオペレーションをアマゾンに頼っていたたため、オンライン上で自社のアイデンティティを築くことができませんでした。アマゾンで売り上げが落ち込んだとき、消費者がブランドとつながる別の場所がまったくなかったのです。

このことが、トイザらスを襲った経営難の理由の1つになったとも言えるでしょう。トイザらスはかつて、大変尊敬されていたブランドでしたが、2018年には、古いやり方で失敗した犠牲者の1つになりました。

自社サイトで販売するメリット

アマゾンで販売すれば、露出も増え、ブランドを見つけてもらえる可能性が高くなりますが、思い出に残るカスタマーエクスペリエンスを提供することはできません。記憶に残るカスタマーエクスペリエンスこそが、顧客との長期にわたる関係を築いていくのです。

消費者は、興味のある商品について多くの情報を求め、気に入ったブランドとのユニークなカスタマーエクスペリエンスを期待しています。実店舗であってもオンライン上であっても同様です。ですから、自社ECサイトを持つことが極めて重要なのです。

アマゾンがブランドを最初に試してもらうための前菜だとしたら、自社サイトは5つの料理が用意されたフルコースのようなものです。ここで重要なのは、自社サイトを最大限に生かすためには、アマゾンで提供しているような面白みのない在庫表示やチェックアウト方法を提供するだけではいけない、ということです。

消費者にとって、真の目的地となる必要があります。成功している小売事業者のサイトは、多くのことを同時にうまくこなしています。ブランドのアイデンティティを示し、より多くの在庫を表示し、消費者との直接的な会話を可能にし、消費者の購買行動を表す貴重なデータを収集してます。最も大切なことは、サイトへの流入を促すだけではなく、実店舗への訪問も促進していることです。

この点において成功しているのがAldo社です。モールへ出店しているブランドが苦戦しているなか、カナダの靴メーカーであるAldoはオンライン戦略に成功し、数年前に立ち上げたサイトで売り上げが倍増しました。

2,000以上ある実店舗でもコンバージョン率が増加しています。最も成功した施策は、消費者がお店の前を通り過ぎる時、オンラインでチェックしていた商品をモバイルのアプリを通じて知らせることだったそうです。

全米中のモールに出店していないとしても、ブランドに親しみを持ってもらうためには、自社サイトを立ち上げることは不可欠です。規模の小さい小売事業者には特にメリットが大きいでしょう。

何年にもわたって、アマゾンでひっそりと販売しているカナダ・ケベック州の企業Shore Furniture(編注:家具の製造販売業者)のような卸売販売者業者にとってもメリットがあります。

オンラインで成功しようと模索していた時、Shore Furniture社の最大の特徴はカスタマーサービスだということがわかりました。第三者のベンダーでは超えることができないサービスを持っていたのです。

オンラインでお店を持つことによって、より人間味溢れる企業になり、2週間早く出産した女性のために、ゆりかごが間に合うように送付するなど、顧客のために労を厭わない企業の姿勢が強調されるようになりました。以前は大きな百貨店でしか商品を見つけられなかった消費者と、自社サイト通して直接コミュケーションできるようになったのです。

小売パートナーにもまだ販売していますが、自社サイトだけで売り上げを伸ばすことができるのは、常に変化している小売業界では非常に重要なことです。

◇◇◇

アマゾンに大きな注目が集まるなか、アマゾンだけが唯一の方法だと考えるのは簡単なことです。しかしながら、自社のECサイトを持つことでアイデンティティを確立し、消費者との関わりを持ち、強固でロイヤルティの高いファン層を作ることが不可欠です。

この先何年もアマゾンはオンラインのマーケットプレイスを独占していくかもしれませんが、アマゾンを打ち負かす努力をするにしても、アマゾンとパートナーを組むにしても、この先、小売事業者が生き残るには主導権を持つことが大切なのです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア「Internet RETAILER」の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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