LINEが描くショッピング構想――新施策、事業構想、1年目の評価などをEC事業の新旧・責任者に聞く
ECは儲からない。EC領域に入ってもまた失敗する。
LINEがCtoCフリマアプリ「LINE MALL」から撤退した2017年5月以降、「LINEショッピング」の事業立ち上げに奔走していたLINEの藤原彰二氏(現在はO2O事業室 副室長)は、こんな否定的な声が耳に入ることがあったと振り返る。
EC市場からの撤退、そして「LINEショッピング」での再参入。サービス2年目となる2019年3月期には、早々に流通総額1000億円突破が視野に入るまで「LINEショッピング」は拡大した。
そんなさなか、実務のトップとして事業を率いてきた藤原氏は「LINEショッピング」から卒業。2年間費やしたオンライン版「LINEショッピング」から離れ、今後はオフライン版「LINEショッピング」に集中するという。2年目を迎えた「LINEショッピング」について話を聞いた。
新機能!画像で商品を検索する「ショッピングレンズ」
藤原氏のバトンタッチを受け、実務トップに就いたのはLINEショッピング プロジェクトリーダーの田村翔平氏。その田村氏が手がけるプロダクト企画の“処女作”が2018年6月28日、リリースされた。
サービス名は写真や画像で商品検索できる新機能「ショッピングレンズ」。「LINEショッピング」に掲載されている6000万点以上のアイテムの中から、ほしい商品をビジュアルだけで探すことができるようにする機能。
その場で商品を撮影したりスマホに保存していた画像をアップロードすると、画像解析技術を用いて近しい商品を検索する。
こうした画像から商品を探す画像検索機能は、「楽天市場」が2018年4月までにファッションとインテリアジャンルの検索対象に導入。「ユニクロ」「Amazon」のアプリなどで利用できるが、一部企業にとどまっている。
商品を探す際、商品名や特定ブランドの入力、カテゴリーの深掘などでしか商品の検索方法はありませんでした。「ショッピングレンズ」によって、商品名がわからなくても洋服や家具などを撮影した写真、ファッション雑誌、Instagram(インスタグラム)などのSNSをスクリーンショットした画像から、類似商品を検索する事ができるようになります。“イメージしていた洋服を手軽に見つけたい”というユーザーニーズに応えることができるようになります。(田村氏)
イメージ検索は特にファッション分野で効果を発揮
LINEが約500名のスマートフォンユーザーに行った調査では、「普段洋服を購入する際に参考にするものは何ですか?」の問いに対して、最も多かった回答が「店頭ディスプレイ」、次いで「ファッション雑誌」「オンライン情報(ブランドのホームページやECサイトなど)」が上位を占めるなど、視覚的な情報を重要視していることがわかっている。
「イメージサーチ」は「LINEショッピング」内をより回遊してもらうための施策です。画像から商品を探して購入できるこの仕組みは、参加する企業にとって新規顧客の獲得につながると感じています。(田村氏)
「LINEショッピング」この1年
年間流通額1000億円が視野に入ったという「LINEショッピング」は現在、30社以上の通販・EC事業者が利用。2017年12月度の流通額は前月比で25.5%増、2018年1-3月期(第1四半期)は前四半期比で27.2%増と右肩上がりの成長を続けている。
この1年はポイントをフックとしてユーザーが集まる場所作りを進めました。直近3か月(2018年1-3月)でのリピート購入率は38%。1度購入したユーザーがさらに購入していくサイクルが出来上がってきました。(藤原氏)
このLINE側の発言を裏付けるように、「LINEショッピング」に参加している千趣会でも実証されている。千趣会の担当者はこう話す。
現在、利用しているアフィリエイトサイトの中で、「LINEショッピング」は新規顧客の獲得人数が最も多いです。しかも、「LINEショッピング」で獲得した新規顧客のLTV(顧客生涯価値)は、他のアフィリエイトサイトより2~3ポイント高いことが、この1年間で数字として表れました。(千趣会)
「LINEショッピング」2年目に取り組むこと
オンライン版「LINEショッピング」から離れ、今後はオフライン版「LINEショッピング」に集中する藤原氏。置き土産としてオンライン版「LINEショッピング」が2年目に取り組むことの1つに「決済」をあげた。
LINEの決済サービスといえば「LINE Pay」だが、最近では三光マーケティングフーズが運営する「金の蔵」「アカマル屋」「月の雫」、第一興商、ゲオグループなどさまざまな小売店・飲食店などが加盟店として導入している。
「LINEショッピング」は現状、サービス内に決済機能を搭載せず、参加した自社ECサイトに約7300万人のLINEユーザーを誘導する仕組み。「LINEショッピング」経由で買い物した消費者にはLINEポイントが付与される、いわゆる“ポイントサイト”の位置付けとなる。
LINEショッピングの「LINE Pay」活用といった言及は避けたものの、「2年目は新感覚のショッピングモールにしていく。マーチャント側のCVを上げる施策を行っていく」と藤原氏は話す。
そして、藤原氏が本腰を入れていくというオフライン版の「LINEショッピング」。これまで、「LINEショッピング」のデータと自社データを統合し、CRMに活用する取り組みが始まっている。
ディノス・セシールは店舗での会計時にLINEの専用バーコードを読み取ることで、店舗の購買データと「LINEショッピング」での買い物履歴を統合。ユーザーデータや購買データをCRMに活用している。
2018年5月に「LINEショッピング」に参加したコメ兵。「『LINEショッピング』はECモールではなく、アフィリエイトモデルのため、顧客データを自社で取得してCRMに活用できる」(コメ兵)として、自社のOtoO戦略の一環として「LINEショッピング」への参加を決めた。
具体的なことはまだ言えません。オフライン店舗にユーザーを積極的に送客してマネタイズしている企業はありません。それが達成できたら、LINE社としての広告価値は桁違いに上がります。僕がこれから取り組むのはオフライン版『LINEショッピング』の構築です。そして、数年後に田村が率いるオンライン版『LINEショッピング』と合流する。こんな構想を描いています。(藤原氏)