8期連続増収増益の優良企業「ワークマン」が実践する「データ経営」「デジタルシフト」とは
8期連続の増収増益で作業着の小売りでシェアNo.1のワークマン。2018年3月期の売上高は797億円、当期純利益は78億円、自己資本比率は80%を超える優良企業だ。
そのワークマンがある市場に進出したことが話題になっている。メインターゲットのガテン系向け商材ではなく、カジュアルウェアの専門店を出店したからだ。その専門店「ワークマンプラス」は9月のオープンからわずか約2か月後には、「日経トレンディ2019年ヒット予測100」の第1位にも選ばれている。
今回、ワークマンが成長を続ける理由、新市場に打って出る挑戦の一部を紹介する。キーワードは「データ経営」と「デジタルシフト」だ。
ワークマン、成長の秘訣は徹底した「データ経営」
全国展開しているワークマンの店舗数は2018年9月末時点で826店舗。その多くを支えるのがフランチャイズ・ストアで、同時期で692店、業務委託店舗は105店、直営のトレーニング・ストアは24店舗。このお店に足を運ぶのは年間3071万人(2018年3月期)にのぼる。
店舗の特徴は全国に同じ100坪標準店舗を同じ品ぞろえで展開していること。作業着を求める消費者がどの店舗へ足を運んでも、同じ売場に同じ商品が陳列されているようにしている。
全国の店舗を22の地域に分け、地域限定商品も展開するが、その比率は売り上げの5%以下。こうした標準化が店舗運営コストの大幅な削減につながり、競合との圧倒的な差別化として、消費者からは「『低価格』でかつ『高品質(耐久性が高いなど)』」と評価される。
この標準化を支えるのが「データ経営」である。その1つの例として、8つの予測アルゴリズムを駆使している「需要予測」を紹介しよう。
① 移動平均
② 移動平均+季節性プロファイル
③ 指数平滑
④ 指数平滑+季節性プロファイル
⑤ ホルト・ウィンタース(加算型)
⑥ ホルト・ウィンタース(乗算型)
⑦ ARIMA
⑧ 自動選択
この8つのアルゴリズムを駆使した需要予測機能は、ワークマンが開発した受発注システムに組み込まれている。ワークマンの本部は需要予測に基づいて自動発注し、ベンダーは自主的に納品。本部から各加盟店に商品が納入される仕組み。
加盟店をサポートする担当者としてSV(スーパーバイザー)を配置しており、そのSVが稼働店舗のパフォーマンスチェックと予測ロジックを調整。店舗在庫などの最適化を図る役割を担う。
簡単に解説したが、ロジスティックなどさまざまな業務にデータ経営を用いているワークマン。こうしたデータ活用に基づいた業務の標準化が、ワークマンの成長を支える。
作業着からアウトドア用品に参入したワケ
右肩成長のワークマンだが、「AmazonやEC専業の台頭」「あと数年で作業着市場シェアを取り切ってしまう」という危機感がある。
そこでスタートしたのが新業態と新フォーマットの開発だ。それが、「アウトドア・スポーツの新業態店」「ネット販売・法人用のPB作業服の開発」である。
ワークマンは2016年から一般消費者向けの①アウトドアウェア「FieldCore」②スポーツウェア「Find-Out」③レインスーツの「AEGIS(イージス)」――という3つの自社ブランド製品を全国の実店舗で販売をスタート。売上高は2017年3月期の30億円から2018年3月期には60億円に拡大している。
店舗では全体の2割が一般顧客に達するなど、一定の支持を得たと判断し3ブランドを一般顧客に販売する新業態「WORKMAN Plus」の出店を始めた。
ワークマンによると、カジュアルウェア市場は内外の製造小売業者の普及品が大きなシェアを取っているという。一方、高機能ウェアの低価格帯市場(4000億円の潜在市場)は手薄。ワークマンは作業着で培った「低価格」「高品質」を武器に高機能ウェアの低価格帯市場へ参入。業態店と既存店を合わせて25%の市場シェア獲得をめざしている。
もちろん、この自社ブランド製品はECサイトでも展開。「ネットに定価で絶対負けないPB」(ワークマン)として、実店舗とECサイトで新市場を攻める方針だ。
ワークマンの事例を中心に「データ経営」のプロ3人が解説
「ネットショップ担当者フォーラム 2018秋」では、ワークマンの土屋哲雄常務取締役、デジタルシフトウェーブの鈴木康弘社長、オムニチャネルコンサルタントで千趣会・執行役員の逸見光次郎氏が登壇。ワークマンの「データ経営」「デジタルシフト」の事例を中心に、小売業やEC企業に必要な経営、組織、意識改革の要諦を解説する。
「データ経営」「デジタルシフト」の詳細をもっと知りたい方は、当日のセッションにぜひ参加いただきたい。