補助金を受けたい人もツールを提供する人もザックリわかる「IT導入補助金 2019」
4月15日から「サービス等生産性向上IT導入支援事業」(IT導入補助金)の支援事業者の登録が開始された。本年から申請するツールの数に応じて「A類型」「B類型」に分けられ、「A類型」の場合は導入費用80万円以上300万円未満の2分の1以内、「B類型」の場合は300万円以上900万円未満の2分の1以内の補助を受けられる。また、申請はツールベンダではなく申請者(補助を受ける事業者)が行うよう指定されるなど、前年度とはいくつか変更点がある。IT導入補助金事務局の発表をもとに、2019年度の「サービス等生産性向上IT導入支援事業」について解説する。
CONTENTS
- IT導入補助金交付までの流れ
- 補助の対象となるITツール
- 申請者(補助事業者)の条件
- 審査の加点となる施策
- 申請時の必要書類
- 補助率とスケジュール
- IT導入支援事業者の条件
1. 補助金交付までの流れ
大まかな流れとしては、IT導入支援事業者(ツールベンダー)がツールを申請し、ツールを導入する申請者(補助事業者)が、事務局に交付を申請する。ITツールを導入した後、実績報告書を作成・提出すると補助金が交付される。
2. 補助の対象となるITツール
対象になるITツールは、「システム化が不十分な業務分野に導入されるソフトウェアと関連するオプション、役務からなり、補助事業者の労働生産性向上に資するもの」と定義されている。
IT導入支援事業者はITツールを事前に登録しなければならない。ツールの登録開始日は2019年4月19日(金)(事業者としての登録申請は4月15日から)。2018年度事業で登録済みのITツールについては情報を引用して登録できる。申請されたITツールは10営業日後程度で採否が通知される。
昨年までの「機能」(20種類)が、下記①〜⑩の「プロセス」に集約された。
【 ソフトウエア 】
業務パッケージ(8つの業務プロセス)
① 顧客対応、販売支援
② 決済、債権債務、資金回収管理
③ 調達、供給、在庫、物流
④ 人材配置
⑤ 業種固有プロセス(実行系)
⑥ 業種固有プロセス(支援系)
⑦ 会計、財務、資産、経営
⑧ 総務、人事、給与、労務
効率化パッケージ
⑨ 自動化、分析……RPA、BI、BP分析、作業工程分析など
汎用パッケージ
⑩ 汎用……グループウエア、文書管理、SaaSのライブラリーなど
【 オプション 】
- 機能拡張……フォーマット変換、バックアップ、ファイル管理などのユーティリティー、Webサーバー、DBサーバー、システム運用などのミドルウェアパッケージ、マクロやVBAなどの業務テンプレートなど
- データ連係ツール……EAI製品など
- セキュリティー製品……PCやソフトウェアの保護、暗号化ソフト、認証・監視システムなど
- ホームページ関連費……顧客とのインタラクティブなやり取りが可能になるシステムなど、業務プロセスを補うためのホームページ制作費が補助対象。一方通行の情報発信をするホームページの制作費は対象外
【 役務 】
- 導入コンサルティング……交付決定後に発生するソフトウエア導入に向けた導入計画や教育計画の策定などの「詳細設計
- 導入設定マニュアル作成・導入研修……上の導入コンサルティングにもとづく導入作業
- 保守サポート……トラブル時の対応、問合せ対応、バージョンアップ対応など、導入後1年分のサポート業務
あくまで「労働生産性向上に資するもの」を対象としているため、下記は対象外。
- ハードウェア
- 組み込み系ソフト
- スクラッチ開発
- 料金体系が従量課金方式のもの
- 広告宣伝費を含むもの
- 会員登録した利用者に対する情報提供サービス
- 緊急時連絡システムやBCPシステムなど、恒常的に利用されないもの
- VR、AR用コンテンツ制作、デジタルサイネージ用コンテンツなどのコンテンツ制作やコンテンツ配信管理システム
- 利用者が所有する資産やブランドの価値を高める目的のもの
3. 申請者(補助事業者)の条件
申請できるのは中小企業・小規模事業者。申請にあたってはIT導入支援事業者が自社のITツールの登録を完了させ、申請者(補助事業者)を招待し、申請者が「申請マイページ」を開設する。申請開始は一次公募が2019年5月27日(月)開始予定、二次公募が2019年7月中旬開始予定となっている。
申請者は「経営判断ツール」で自社の事業の見直しを行う。「経営判断ツール」の診断結果と、選択されたITツールのマッチングは審査の対象になる。
補助事業者の要件
- 日本国内で事業を行う中小企業・小規模事業者等(法人または個人)
- 業種は飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象
- 法人の場合は「みなし大企業」でないこと
- 本事業の実施により、生産性の伸び率が3年後に1%以上、4年後に1.5%、5年後に2%以上となる計画を立てられること(「経営診断ツール」で生産性を計測し、目標策定を行う)
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」(中小企業、小規模事業者等みずからが情報セキュリティに取り組むことを自己宣言する精度)において、「★(1つ星)」または「★★(2つ星)」の宣言を行うこと
- 風俗営業、性風俗関連、接客業務受託営業を営むものでないもの
- 事業者または法人の役員が反社会的勢力でないこと、また反社会的勢力との関係を有しないこと
- IT導入支援事業者(その法人の役員、従業員を含む)は、補助事業者にはなれない
昨年までは代理申請が可能だったが今回から不可となり、SMSを使用した本人確認が実施される。Eメールアドレスについても第三者が利用できるアドレスだと発覚した場合は「申請の不採択、もしくは交付決定の取り消しとなる場合がある」としている。 補助金申請には下記の書類が必要。
必要書類(法人の場合)
- 発行から3か月以内の履歴事項全部証明書
- 平成30年〜31年中に納税した法人税の納税証明書(その1もしくはその2)
必要書類(個人事業主の場合)
- 有効期限内の運転免許証、運転経歴証明書、発行から3か月以内の住民票のいずれか
- 平成30年分の所得税の納税証明書(その1もしくはその2)と税務署の受領印(もしくは受信通知)のある所得税確定申告書
下記に該当している場合は審査の際に加点となる。
審査の際に加点となる施策
- 「生産性向上特別措置法」(平成30年法律第25号)にもとづく特別措置に関して固定資産税の特例率をゼロの措置を講じた自治体に所属している(先端設備等導入計画の認定は不要)
- 「地域未来投資促進法」の地域未来牽引企業」であること
- 「おもてなし規格認証2019」を取得していること(2018年に金、紺、紫認証を取得し、当該認証が有効の場合は不要)
- ITツール登録時にクラウド製品として登録されたソフトウェアを導入する場合
4. 補助金の上限・下限とスケジュール
補助金額とスケジュールは「A類型」「B類型」で異なる。
対象となるITツールの「ソフトウェア」のうち、青枠内から1つ以上、赤枠内から計2つ以上が含まれる申請を「A類型」、青枠内から3つ以上、赤枠内から計5つ以上が含まれる申請を「B類型」とする。申請者は申請時にどちらの類型かを選択する必要がある。
公募期間 | 採択予定日 | 補助金の上限/下限 | 補助率 | 効果報告 (2020年4月〜2022年4月) | |
---|---|---|---|---|---|
A類型 | 2019年5月27日(月)〜 6月12日(水) | 6月26日(水) | 上限額:150万円未満 下限額:40万円 | 2分の1以内 | 3回 |
B類型 | 2019年5月27日(月)〜 6月28日(金) | 7月16日(火) | 上限額:450万円未満 下限額:150万円 | 2分の1以内 | 5回 |
5. IT導入支援事業者の条件
IT導入支援事業者は申請者のパートナーとして本事業を実施する。役割として「導入されるITツールによって申請者が生産性の向上効果を最大限に引き出すことを支援する」と定めているほか、事務局から申請者への指示・指導の媒介者として、適切な補助を遂行することなどを定めている。
IT導入支援事業者の要件(要約)
- 安定的な事業基盤と実務実体、フォローアップ体制があること
- 事務局が定める要件を満たすITツールを提供できること
- 情報セキュリティ対策の管理が実施されていること
- 事務局に虚偽なく正確な情報を提出し、変更、修正の必要が生じた場合は速やかに対応すること。提出した情報は匿名性を確保しつつ公表される場合があることに同意すること
- 関係法律、公募要項、交付規定などに記載の内容を順守できること。また、補助事業者に対し、本事業の公募要項、交付規定等の内容を十分説明し、理解の上で交付申請を行わせること
- 補助事業者との間に発生する係争、トラブルについては真摯(しんし)に対応して解決すること
IT導入支援事業者として登録するには、上記を含め20項目の要件についての確認・同意が必要(太字は今年変更があった個所)。
新規登録開始日は2019年4月15日(月)から(終了日未定)。新規登録の場合は申請者同様、発行から3か月以内の履歴事項全部証明書と平成30年〜31年中に納税した法人税の納税証明書(その1もしくはその2)が必要。昨年登録済みの事業者は、既存のIT事業者ポータルからアカウントの更新と登録情報の移行を行う。
個人事業主や、ITツールの販売・導入を行わないIT関連コンサルティングの場合、代金の受領を収納代行業者が行っている場合などは「コンソーシアム」を構成することでIT導入支援事業者として登録できる(「コンソーシアム」については関連リンクのスライドP14〜P22を参照のこと)。