ヤマトのデリバリー事業の収益が大幅改善――宅急便単価702円まで上昇などで営業利益は6倍増の407億円

宅急便の取扱個数は減ったものの、2期連続の値上げで利益率は大幅に改善した

渡部 和章

2019年5月13日 8:00

ヤマトホールディングスの2019年3月期連結決算における「デリバリー事業」の営業利益は、前期比503.6%増の407億8700万円だった。宅急便の取扱個数は前の期を下回ったものの、単価が約14%上昇したことで利益率が改善した。デリバリー事業の収益性改善で、連結営業利益は同63.%増の583億4500万円となった。

ヤマトホールディングスのデリバリー事業営業費用総括表(通期)
通期のデリバリー事業営業費用総括表(画像はヤマトホールディングスの決算説明会資料を編集部がキャプチャ)

宅配荷物(宅急便・宅急便コンパクト・ネコポス)の取扱個数は同1.8%減の18億353万個。

商品別では「宅急便」と「宅急便コンパクト」の合計が同5.1%減の16億6828万個と減少した一方で、「ネコポス」は同72.2%増の1億3525万個と大幅に増えた。

ヤマトホールディングスの小口荷物の取扱個数
小口荷物の取扱個数(画像はヤマトホールディングスの決算説明会資料を編集部がキャプチャ)

「ネコポス」を除いた「宅急便」(宅急便・宅急便コンパクト)の単価は同14.1%増の702円。2018年3月期からプライシングの適正化を推進しており、単価は2年で128円上昇している。

ヤマトホールディングスの宅急便単価の推移
宅急便単価の推移(画像はヤマトホールディングスの決算説明会資料を編集部がキャプチャ)

集配効率の改善も進む

集配効率の向上など、デリバリー事業の構造改革を進めたことも増益に寄与した。2019年3月末の「自宅外での受け取り比率」は1年前より1.7ポイント高い6.6%。宅配ロッカー「PUDOステーション」の設置台数は1年で約1.5倍の3913台に増えた。また、「クロネコメンバーズ会員」の人数も前年比約1.3倍の2800万人に増えている。

ヤマトホールディングスのタッチポイントの拡充について
タッチポイントの拡充について(画像はヤマトホールディングスの決算説明会資料を編集部がキャプチャ)

労働時間短縮などの「働き方改革」も進めており、1カ月間の残業時間が80時間を超えた社員の延べ人数は、2017年3月期と比べて0.3%の水準まで減少した。年次有給休暇の取得率が上昇したほか、退職者の比率が低下するなど、「働き方改革」が進んでいるという。

集配体制の構築に向けた増員などに伴い、連結営業費用の人件費は前期比349億(4.4%)増えている。

契約改定で再び運賃の値上げ要請も

ヤマトホールディングスは2019年3月期決算説明会で、今後は集配体制の強化に伴い、法人顧客の荷物の取扱個数が増加する見通しだと説明した。また、顧客の取引状況を踏まえながら、大口の法人顧客を中心に価格の適正化を継続して推進するとしている。

ネットショップ担当者フォーラム編集部の取材では、2019年に入ってから複数のEC事業者が、価格契約の改定などに伴い運賃の値上げ要請を再び受けていた。あるEC事業者によると、他の大手配送キャリアも追随するように、契約更新時に値上げを要請するケースがあるという。

中には運賃が大幅に上がる見通しのEC事業者もあり、2019年も続く配送コストの上昇に「売っても売っても薄利多売の状況」といった諦めに近い声も上がっている。

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