Digital Commerce 360 2019/6/20 8:00

Forbes InsightsとArm Treasure Dataが実施した調査によると、回答者の40%が「Webサイトにパーソナルな要素を追加し、個別化したマーケティング戦略を採用することで、売り上げや平均注文額が増加した」と答え、72%が「パーソナライゼーションを実行する上で人工知能と機械学習技術が不可欠または重要である」と回答しました。

パーソナライゼーションの効果を実感する事業者たち

Forbes InsightsとArm Treasure Dataが200人のリテールマーケティング担当者を対象に実施した調査「The Clear Path to Personalization」によると、買い物客を引き付けたい小売事業者にとって、パーソナライゼーションはますます重要になっていることがわかりました。

オンライン売上と平均購入数が増えた
商品やコンテンツの提案でロイヤルティが高まった
トランザクションが増加した
ニッチ市場を狙ってシェアが拡大できた
ロイヤルティプログラムに付加価値をもたらした
「パーソナライゼーションはあなたの事業にどのような影響を与えていますか?」(n=200/3つまで選択可)
※2019年5月 Forbes Insights「The Clear Path to Personalization」をもとにネットショップ担当者フォーラム編集部で作成

具体的な数字は明らかにされていませんが、同調査の回答者の40%が「Webサイトにパーソナルな要素を追加し、個別化したマーケティング戦略を採用することで、売上や平均注文額が増加した」と答えています。

さらに、回答者の37%が「個々にカスタマイズされた製品やコンテンツの提案により、売上とLTVがアップした」と考えています。また、35%の企業でパーソナライゼーション戦略の結果、取引頻度が増加しているそうです。

顧客データプラットフォーム企業 Arm Treasure Data社のマーケティングディレクター Erik Smith氏によると、今回の調査では、メール、Webサイトのエンゲージメント、オンライン広告、リアルイベントなど、デジタルとリアルのチャネルを通じた「有意義な顧客との対話」をパーソナライゼーションと定義しました。

「小売事業者が、消費者がよく購入する製品やブランドのプロモーションメールを送ったり、過去の訪問に基づいて自社のホームページに特定の商品を表示したりすることもパーソナライゼーション含まれます」と彼は言います。

アリババの責任者「消費者とのやり取りをすべてオンラインに移行すべき」

このような潜在的な利点があるにもかかわらず、多くの企業では、消費者データのクオリティやリソース不足などの技術的な課題のため、Webサイトのパーソナライゼーションがなかなか進んでいません。調査対象者の59%は「パーソナライゼーション関連の変更は少なくとも1年先になる」と述べていますが、41%は「優先度が高い」と回答しています。

調査対象となった企業の74%は「パーソナライゼーションに充てているのはマーケティング予算の10%以下」と答えました。85%は「マーケティング予算の少なくとも20%を将来的にパーソナライゼーションに投入したい」と考えていますが、実行のタイミングは不明です。

インターネットは膨大な数の消費者とのやり取りを非常に簡単、かつ安価にするため、企業は消費者とのやり取りをすべてオンラインに移行し、すべてのデータを記録するべきです。もう妥協する必要はありません」と中国の巨大マーケットプレイス企業 アリババグループのスタッフ責任者 兼 戦略アドバイザーのマーク・ゼン氏は言います。

人工知能や人間の関わりを代替する機械ベースの技術は、少なくとも調査回答者にとっては、未知の分野のようです。60%はAIベースのパーソナライズアプリケーションを検討中、もしくは活用の初期段階にありますが、採用したいAIや機械学習の種類は特定しませんでした。

しかしAIへの関心は高く、72%が「AIと機械学習技術はパーソナライゼーション戦略を実行する上で不可欠」または「重要である」と回答しています。

AIがエンジンなら人間はガソリン

一方で、AIベースのプラットフォームには人的支援が必要だと多くの人が考えています。「マーケティング担当者としては、AIだけに頼ることはできません。販売サイクルを短縮し、効率良く管理するには、人間の関与が必要なのです」と、マーケティング代理店PAN Communications社でマーケティングおよびビジネス開担当の副社長マーク・ナードン氏は述べています。「AIがエンジンなら、人間は実際にエンジンを動かすガソリンなのです」。

AIを活用する以外に、回答者の56%が専門家によるパーソナライゼーションチームを設置55%が消費者データをより有効に活用する方法を模索中。また、50%がソーシャルメディア、メール、Webサイトなど、チャネル固有の特徴を特定してパーソナライゼーションに取り組んでいます。

また、ロイヤルティプログラムとモバイルアプリはパーソナライゼーションにとって非常に重要なチャネであることも報告されており、回答者の13%がロイヤリティプログラムと特典に、12%がモバイルアプリに、9%がショッピングカートに、5%がメールに、それぞれパーソナライゼーションの焦点を当てています。

ロイヤルティプログラムと特典
モバイルアプリとモバイルエクスペリエンス
商品
ダイレクトメール
広告
ショッピングカート
サポートとメンテナンス
価格設定
マーチャンダイジング
サービスセンター
Eメール
Webサイト
「どの分野のパーソナライゼーションに注力していますか?」
※2019年5月 Forbes Insights「The Clear Path to Personalization」をもとにネットショップ担当者フォーラム編集部で作成

アンケート回答者は以下をパーソナライゼーションの目的に挙げました。

  • ロイヤルティ、リピート購入、リテンションなど、顧客との継続的な関係維持……77%
  • 購入数と見込み客の増加……68%
  • ブランド認知とソーシャルメディアでの存在感アップ……61%
  • コンバージョン率と売上の上昇……59%
  • より良いブランドエンゲージメント……55%

「パーソナライゼーションはスピードの問題ではなく質の問題です」とナードン氏は言います。

収集した素晴らしいデータをすべて分析するには時間がかかります。まずは落ち着いて戦略的を立て、適切な方法で分析し、どのチャネルでも最も効果的に消費者にアプローチできるよう、データを使いこなしましょう。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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