Digital Commerce 360 2019/8/29 8:00

サイトの技術的な問題が、カート離脱(カゴ落ち)の原因になるのはよくあることです。しかし、幸いなことにこれらの問題は修正可能です。修正すればオンライン小売事業者はより多くのサイト訪問者に購入してもらえます。今回はカート離脱に関する5つのポイントを紹介します。

オンライン小売事業者は、シームレスで魅力的なカスタマージャーニーを構築するために膨大なリソースを投資していますが、消費者のおよそ75%がゴール直前にカート離脱しています。

料金 74%	オプションが多すぎる  時間	ユーザー体験が貧弱 	その他
米国のインターネットユーザーがオンラインショッピングでカート離脱をする主な理由(2018年3月/n=1,610)
eMarketer/ContentSquareの資料をもとにネットショップ担当者フォーラム編集部で作成

Business Insider Intelligenceの分析によると、オンライン小売事業者のカート離脱による損失は、2016年に4兆6000億ドルに登りました。とは言え明るいニュースもあります。その損失の約60%が実際は回収可能だったということです。割引やプロモーション、さらなるエンゲージメントによって収益を取り戻すことが明らかな解決策のように思えるかもしれませんが、実際のところ、ほとんどの消費者は値段の高さや迷いのせいではなく、Webサイトの技術的な問題のせいでカートを離脱してしまうのです。

例えば支払いページがクラッシュする可能性があります。支払いオプションが消費者の画面に表示されない場合があります。不法侵入者が消費者を別のWebサイトにリダイレクトする可能性があります。あるいは同様の不具合があるかもしれません。あなたのWebサイトには免疫がありますか? カート離脱した最大の原因が明らかでない場合、実際にはあなたが思っているよりも脆弱なサイトかもしれません。

幸いなことに、これらの問題はわかりやすいところに潜んでいます。つまり、主要な脆弱性に適切な注意を払うことで、小売事業者はカート離脱を抑制し、カスタマージャーニーへの投資を急速に回収することができるのです。以下に、消費者がカートを離脱する5つの理由について説明します。

1. 支払いページがモバイルと互換性がない

モバイルはeコマース売上のシェアを伸ばしており、2019年の44.7%から2021年には53.9%に増加すると予測されています。ですから、小売事業者はeコマースサイトをモバイルフレンドリーにするために十分な時間とリソースを費やしてきました。当然、Webサイトのモバイル対応を決済ページにまで拡張することは必須ですが、必ずしも行われているわけではありません

支払いページは通常iFrameで開きますが、Webサイトの他の部分のようにモバイルに適応していないかもしれません。iFrameがモバイルに統合されていることで、モバイルユーザーはシームレスにチェックアウトできるようになります。

2. SSL証明書の期限が切れている

PCI(Payments Card Industry)に準拠するには、SSL(Secure Sockets Layer)証明書や、クレジットカード番号などの機密情報を保護する契約が必要です。Webサイトをホストしているブラウザーとサーバーとの間でSSLの取得が行えなければ支払いは失敗します。

実際、ほとんどのECサイトはサードパーティーの決済プロバイダーを利用しています。支払いプロバイダーはSSL証明書を持っている必要があり、ほとんどの場合、サイト側もSSL証明書を持っている必要があります。ただし、ECサイトのSSL証明書の有効期限が切れた場合、SSLは中断され、消費者は支払いができなくなります

消費者がサイトで支払えるようにするには、更新された有効なSSL証明書を維持する必要があります。

3. カスタマージャーニーがハイジャックされている

カスタマージャーニーのハイジャックとは、消費者のコンピュータにマルウェアが潜んでいて、ECサイトの一部と見せかけた商品広告やリンクをクリックさせるという不正行為です。消費者は元のサイトから他のサイトに「ハイジャック」され、事業者は収益の5%を失っています。さらに悪いことに、ユーザーのデバイス上に存在するため、オンライン小売事業者にはわからないのです。

Namogooの調査によると、すべてのWebセッションの15%〜25%は無許可の広告とプロモーションによって「ハイジャック」されており、そのうちの70%はeコマースの消費者を競合サイトにリダイレクトする広告に関係しています。これらの広告が消費者を低価格のクーポンで誘導すると、多くがカート離脱をしてしまうのです。

小売事業者はカスタマージャーニーのハイジャックによって年間収益の2%〜5%を失っており、問題が表に出て利害関係者がそれと戦うことにコミットするまで、小売事業者は価値の高い顧客を失うことになるでしょう。

この問題に対処した方が良い理由があります。Namogooの調査によると、無許可広告にさらされた消費者は、そうでない消費者よりも高い率でコンバージョンしていることが明らかになったということです。

4. 自社サイトの「スイートスポット」を見付けていない

通常、ある地点を超えると消費者の移動はショッピングカートのどこかで1つの購入経路に収束します。重要なのは、消費者へのアップセルを早めに止めたり、ダラダラとアップセルを続けたりしないようにすることです。これ以上アップセルが発生しない「スイートスポット」を見つけることは、売上に劇的な影響を与える可能性がありますが、この問題に十分な注意を払っているEC事業者はほとんどいません。

スイートスポットは業界によって異なります。例えば、旅行業者は消費者に最後までアップセルする傾向があります。自身のサイトのスイートスポットを特定するために、テストを実施することが不可欠です。

5. カートとチェックアウトの地域性を考慮していない

文化や消費者の期待や行動は場所によって異なります。もちろん、カートの離脱率も同じです。全体的な傾向は変わりませんが、地域間に顕著な違いがあることを示唆する研究もあります。SaleCycleの世界的な調査によると、北米でのカート離脱率は74.0%、ヨーロッパでは70.9%でした。また、カートの離脱率が最も高いのはアジア太平洋地域で76.3%でしたが、同地域の消費者は配送料が理由でカートを離脱する可能性が低いことがわかりました。

北米	74%
ラテンアメリカ	75.3%
ヨーロッパ	70.9%
APAC	76.3%
アフリカ/中東	76.1%
全体	74.5%
世界のカート離脱率
SaleCycleの資料をもとにネットショップ担当者フォーラム編集部で作成

地域ごとに異なる戦略をテストすることで、小売事業者は消費者のニーズに対応し、彼らの関心を引きつけることができます。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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