森野 誠之 2019/9/10 8:00
ネッ担まとめ

中川政七商店が楽天市場を撤退した理由は「自分たちが求める体験を提供できないから」。手数料とかを気にして撤退するのとはかなり違います。

良い体験とそれによって生まれる信頼。売上はこの積み重ね

中川政七商店が「楽天撤退」1年でEC売上を急回復できた理由 | BUSINESS INSIDER JAPAN
https://www.businessinsider.jp/post-197793

まとめると、

  • 3年前はメルマガをうまく運用できていなかったり、お客さまに有用な情報をアピールできていなかったりと、バケツに穴が空いている状態だった。改善の積み上げで売上が伸び、楽天から撤退することにした
  • 体験が良くなければお客さまは再来訪しない。楽天店の売上はEC全体の4割を担っていたが、ブランドの総合体験を重要視して決断した
  • 売上減は当然怖かったが、ブランドが求める体験ではない形で購買や顧客体験が積み上がることのほうがずっと怖かった

現在の消費者は何を重視するかというと、まず失敗したくない、だから商品レビューを多く見ます。(買い物で)失敗したくないという閾値をこえたら、より良質のサービスを求める。マイナスをゼロにしてから、プラスの閾値を加点形式で考えてものが売れていくというのが、今の購買者にはある。

となると、やるべきことはまずお客様の信頼感を得ること。そして、最終的に共感してもらうこと。そのためには、信頼を積み上げていくことが大事です。
─中川政七商店 取締役兼コミュニケーション本部 本部長 緒方 恵氏

全体から感じるのは良い顧客体験を追及しているということ。それによって得られた信頼感を積み上げること。この2つをしっかりやった結果、楽天市場から退店しても売上を回復できたようです。

手数料が高いとか、売れなくなったとか、そんな理由で撤退を考えていても上手くいかないんでしょうね。

自分で考えるから自分事になって面白くなっていく

「おもろいことを全力でやる」。バックヤードの人たちが活躍する壁紙屋本舗 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/6737

EC企画はお客さんの声が聞こえないのが悩みだったんですが、自分で企画して発売してみると「こういう色がほしかった」といった反応をいただいて、それがすごくやりがいになりました。
みんな面白いことを探し求めているんです。パートも社員も関係なく、良い企画があれば商品化に向けて進められます。みんながゼロから作った商品が売れていくのを見ると、もっとがんばろうと思います
─壁紙屋本舗 EC企画運営チーム 久木佐奈恵さん

ただ作ってWebで公開するだけではダメ。「誰に何を伝えたいのか、それを常に考えろ」と言われます。
─壁紙屋本舗 プリンティング、ロジスティックチーム リーダー 高橋祐輔さん

社長がよく「お客様が聞きたいことを答えるのではなく、なぜ聞いてるのかを考えろ」と言うんですが、お客様がどうしてそれを聞いているのか、わからない状態で答えているとクレームにつながります。聞かれたことだけに答えていると、答えになってないことがあるんです。だから、こちらから聞かなくてはいけない。「どうして聞いているのか」を考える力が求められます。
─壁紙屋本舗 カスタマーサポート リーダー 土井友里さん

紹介した3つの言葉だけで、何を考えていてどうしているのかがわかりますね。自分たちで考えて発信→ただ発信するのではなくて相手を考える→反応があった場合はなぜそうなったを考える。

ユーザーとしてはここまで考えてくれているお店なら信頼できますし、買ってみようと思いますよね。いわゆるマーケティングっぽいテクニカルなことよりも、こういった心の部分に目を向けてはどうでしょうか?

新規顧客は獲得できた。問題はそこから先

EC・通販事業者の悩み事・困り事「既存顧客の満足度向上」が3年連続で増加 | eコマースコンバージョンラボ
https://ecclab.empowershop.co.jp/archives/62587

まとめると、

  • エルテックスの調査によると、EC・通販事業者の悩み事や困り事は「既存の顧客の満足度の向上」が3年連続で増加している
  • EC・通販パッケージを導入する際に重視する点は、コストや納期などが下がり、「自社の業務を理解しているか」「会社が信頼できるか」といった項目が上昇している
  • 「ビジネス上重要と思われるもの」は、コストの削減だけが上昇し、売上と新規顧客獲得の2項目はここ5年間での最低数値となった
「あなたの会社、事業所の通信販売事業について、ビジネス上重要と思われるもの」(エルテックス調査)
「あなたの会社、事業所の通信販売事業について、ビジネス上重要と思われるもの」
https://ecclab.empowershop.co.jp/archives/62587より編集部でキャプチャ

新規顧客を獲得してもその人たちがリピートしてくれないと意味がないので、顧客満足度に目が向いている感じですね。新規顧客獲得のための手段はたくさんありますし、お金でどうにかなったりしますが、前述の中川政七商店さんと壁紙屋本舗さんの事例を見ると、リピーター獲得には時間と情熱が必要です。

ここは担当者レベルでは何ともならないので、カスタマーサクセスなどの流行り言葉に乗っかるのではなく、経営層から意識を変えないといけないですね。

EC全般

「消費税増税対策」月額サービスで毎日一本なにか飲める駅自販機が登場 | Yahoo!ニュース(山本一郎)
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20190903-00141082/

本のサブスク「shelff」が9月1日より正式サービス開始 定額で本が月3冊届く | ECzine
https://eczine.jp/news/detail/6980

サブスク自販機は980円/月が1か月後に強制的に2,480円/月になってしまうということで話題になりましたよね。サブスクは期間と料金をわかりやすくして、辞めやすくしないと続かないでしょう。

「メルペイあと払い」限度額はメルカリの“使い方”で判断 勤続年数や年収ではなく「どれだけ約束が守れるか」 | ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1909/04/news105.html

この考え方は面白いですね。AIとかで信用度を出すのではなく、払ったかどうかだけで判断。

より自由度の高いECサイト構築が可能に アートトレーディング社がshopifyとWordPressの連携に対応したサービスを提供 | ECのミカタ
https://ecnomikata.com/ecnews/23524/

自由度が高い=カスタマイズ費が発生&メンテナンス費も発生……。安易に飛びつくと危ないです。

EC・通販事業者が活用するSNSのトップはLINE | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/6779

LINEはやり取りにも使うので他のSNSと比べるのはちょっとおかしい気も。

解約に関する表示で景表法違反、育毛剤ECに措置命令…埼玉県 | 通販通信
https://www.tsuhannews.jp/72486

「前例があまりない」事案での摘発が増えている……とのこと。

人気店の商品をアプリで注文・駅でまとめて受け取り、PICKSと阪急阪神が大阪梅田に受取特化店舗オープンへ | TechCrunch Japan
https://jp.techcrunch.com/2019/09/02/picks-toriclo/

ヤマト運輸、宅急便の発送手続きをスマホで完結できるサービスを提供開始!送り先などのWeb入力やオンライン決済で集荷所に出すだけ。最大200円OFFも | S-MAX
http://s-max.jp/archives/1778781.html

ヤマト運輸が消費増税で運賃・料金を改定、「キャッシュレス決済運賃」の新設と「デジタル割」割引額拡大など | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/6789

ヤフーと佐川急便が連携。Yahoo! JAPANアプリなどで荷物のお届けを通知 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/6785

楽天、「Rakuten EXPRESS」を東北地方に拡大 宮城県仙台市・名取市・多賀城市が対象に | ECzine
https://eczine.jp/news/detail/6983

ちょっと数が多いですが配送関連を。便利そうなサービス、料金の変更などは素早くお客さんに展開したいですね。

今週の名言

これから生き抜いていくには情報を集めるだけではなくて自分の中で考え直すことが大事になってくるんです。

「事象の意味」を深く考える人が機会を拓く。 新たな時代に呼応するマーケターを育てる人材育成コンサルタント山本直人さん | Marketeer
https://marketeer.jp/yamamoto/

私はこの毎週のまとめが考え直す時間です。みなさんは考え直す習慣がありますか?

筆者出版情報

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