藤田遥 2020/1/6 8:00

中国EC最大のショッピングイベント「独身の日」。中国ECモール「天猫(Tmall)」のイベントとして2009年にスタートして以来、年々規模が広がっている。11月29日に行われたNint主催のセミナーで、代表取締役の吉野順子氏が、中国ECの現況と2019年の独身の日を振り返った。

「独身の日」全体流通額の約7割を「Tmall」が占める

Nintでは中国越境ECデータ分析サービス「Nint China」のデータに基づき、アリババの「独身の日」データを独自に集計。吉野氏がその動向をレポートした。

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Nint代表取締役の吉野順子氏

中国EC市場は現在、BtoCの割合が増加している。アリババグループが運営する「淘宝(タオバオ)国際」「天猫国際(Tmall Global)」を比べてみると、2016年は「淘宝(タオバオ)国際」が89.6%、BtoCの「天猫国際(Tmall Global)」が10.4%。それが、2019年上期には「淘宝(タオバオ)国際」は73.4%にまで下がり、「天猫国際(Tmall Global)」は26.6%にまで増加している。

BtoCの割合が増えているとはいえ、CtoCの割合が多いことに変わりはないことは意識すべき点である。(吉野氏)

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2019年上期の中国EC市場における淘宝国際と天猫国際の割合(画像はセミナー資料より編集部がキャプチャ)

2019年「独身の日」は「天猫(Tmall)」が取扱高を伸ばし、日本円ベースでは前年比25%増となる2兆8700億円を記録。これはアリババグループ全体の流通総額約4兆1000億円のうち約7割を占める計算になる。「天猫国際(Tmall Global)」は前年比30%増と大きな伸び率となった。

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2019年「独身の日」流通額の内訳(画像はセミナー資料より編集部がキャプチャ)

「Tmall」ではデジタル家電が1位

「Tmall」のカテゴリ動向を見ると、1位がデジタル家電(21.10%)。服・靴・バッグ(20.41%)、美容関連(17.95%)と続いた。これまでは服などのアパレル関連が1位を獲得していたが、2019年に初めてデジタル家電がトップに躍り出た。

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「独身の日」における「Tmall」のカテゴリ動向(画像はセミナー資料より編集部がキャプチャ)

KOLを中心としたライブコーマスで若年層を獲得

美容関連で注目すべき点は、カテゴリ3位のEstee Lauder(エスティー・ローダー)で、流通額は前年比219%増。1万円を超える美容液、4万円以上の化粧水、美容液、クリームのセットなど高額商品を中心にプロモーションを行い、流通額が伸びた。若者に人気のKOLが動画ライブコマースで商品の宣伝を行い、新規の若年層ユーザーの獲得に注力したことも影響しているという。

順位ブランド
1L'oreal
2Lancome
3Estee Lauder
4Olay
5SK-Ⅱ
6PECHOIN/百雀羚
7CHANDO/自然堂
8The history of whoo/后
9Shiseido
10Sulwhasoo/雪花秀
「Tmall」の化粧品ブランドTOP10(表はセミナー資料より編集部が作成)
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主流になりつつある人気KOLによるライブコマース(画像はセミナー資料より編集部がキャプチャ)

2位の服・靴・バッグカテゴリは前年比8%増。新規ユーザーが減少しているようで、伸び率が穏やかになっている。

「Tmall Global」日本ブランドの販売動向

「Tmall Global」に出店している日本ブランドの流通額TOP10を見ると、ムーニーやメリーズ、資生堂などがランクイン。吉野氏が注目したのは6位に入った「DR.ARRIVO(ドクターアリーボ)」。主に高額な美顔器の販売を行うブランドで、前年比510%増と大きな伸長率を記録した。

「ドクターアリーボ」は2019年5月に旗艦店を出店しており、典型的な越境ECの形で成功を収めている。(吉野氏)

「ドクターアリーボ」が伸びた理由として、「独身の日」に向けたPRや動画コマースのほか、旗艦店の出店前に「タオバオ」でKOLを活用した販促活動をを展開。その後、「Tmall」内で販売して基盤を築いた後、「Tmall Global」に旗艦店を出店したという流れがある。

順位ブランド
1ムーニー
2メリーズ
3Shiseido
4Curel
5Dr. Ci. Labo
6DR.ARRIVO
7Casio
8SK-Ⅱ
9ウテナ
10任天堂
「Tmall Global」の日本ブランドTOP10(表はセミナー資料より編集部が作成)

2020年はライブコマースがポイントに

2019年の「独身の日」はKOLを活用した新規ユーザーの獲得や商品PRが人気となっていた。「今後、ライブコマースは流行から主流の手法になる」と吉野氏は説明。有名ブランドによる人気KOLの登用が増える場合、他社ブランドとの差別化をどれだけ行えるかが重要になってくるという。

EC法が中国にもたらした変化

2019年の中国ECに関する大きな出来事は、消費者保護や関税の強化といった観点から、1月に「電子商取引法(EC法)」が施行されたこと。これにより、非正規流通の監督・取り締まりが強化されることになった。

11月には「中国国際輸入博覧会」において、中国政府は引き続き輸入を重視し関税を引き下げる方向だと宣言。これを受け、阿里巴巴(アリババ)は今後5年で2000億ドル相当の輸入を達成すると発表している。

国として非正規の流通を取り締まりながら輸入を重視する。プラットフォームもその流れに沿って力を入れていくことになる。(吉野氏)

EC法の施行で「淘宝(タオバオ)国際」のショップ数が減少

EC法の施行により、「淘宝(タオバオ)国際」と「Tmall Global」における販売ショップ数や取扱高に影響があった。

2018年11月以降、「淘宝(タオバオ)国際」の販売ショップ数、取扱高ともに減少した。これは2019年1月のEC法施行前、2018年11月~12月にかけてショップが在庫処分などを一斉に行ったため。その後、一定規模で下げ止まっている。

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「淘宝(タオバオ)国際」のショップ数と取扱高の推移(画像はセミナー資料より編集部がキャプチャ)

一方、「Tmall Global」は堅調にショップ数、取扱高ともに増加傾向にある。その理由としては、EC法施行によってCtoCからBtoCで海外製品を購入する流れができていること、出店審査の緩和によって出店数が増加したことがあげられる。

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「Tmall」のショップ数と売り上げ規模の推移(画像はセミナー資料より編集部がキャプチャ)
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