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D2Cの浸透、消費行動の劇的な変化、動画活用のコマースなど市場環境が大きく変わっているEC市場。今後、デジタル化が加速する「ECの未来」はどうなっているのだろうか? EC実施事業者はどのような取り組みを求められるのだろうか? 人気ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムの青木耕平代表取締役、デザイン・イノベーション・ファーム「Takram」のディレクター/ビジネスデザイナーで『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』(NEWSPICKS PUBLISHING)の著者である佐々木康裕氏、ヤプリの金子洋平執行役員(モデレータ)のパネルディスカッションから、その解を見つけてみたい。

※アプリプラットフォーム「ヤプリ」のオンラインイベント「ヤプリサミット」で行われた基調講演「ECのミライ」の内容を、記事化したものです。3回にわたって紹介していきます。

日本でも「D2C」に注目が集まり始めた理由

コロナ禍で進んだ「Digitize or Die」

金子洋平氏(以下、金子氏):まず、お2人の自己紹介をお願いします。

青木耕平氏(以下、青木氏):雑貨やアパレルを総合的に扱っているECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営しています。従来ECサイトは長く利用いただくために、広告販促にコストを割いてきたと思いますが、当社の場合は、自社で作るさまざまなコンテンツを使って新しいお客さまとの出会いを創出したり、既存のお客さまに長く使ってもらえるような取り組みをしています。最近のホットなトピックとしては、映画を制作中で、ちょうど撮影が始まるところです。

「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコム代表取締役 青木耕平氏(画像:ヤプリ提供)

佐々木康裕氏(以下、佐々木氏): Takramは、新規事業を作りたいクライアント向けに、コンサルティングサービスを提供している会社です。ちょうど今年の頭に、『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』という本を出したこともあり、D2Cを立ち上げたいスタートアップ、大企業のなかでD2Cブランドを立ち上げたい企業と関わりながら、多くのプロジェクトを手がけています。個人的にも、「ブランドとは?」、消費者の価値観がどう変わっているのかに興味があるので、仕事に関わらず普段からウォッチしています。

金子氏:「D2C」は、国内でもバズワード的に加熱していますよね。海外ではユニコーン企業になったD2Cブランドもあります。Takramさんは、丸井さんと一緒にD2C支援をしていたりしますが、なぜ今、日本でもD2Cに注目が集まっているのでしょうか?

佐々木氏:近年デジタルシフトが叫ばれていますが、特にコロナ禍になり、「Digitize or Die(デジタル化か死か)」の流れが加速しています。この、早急にデジタル化が求められる状況に、「D2C」がくっついたと捉えています。

それでなぜ「D2C」自体がこんなにバズワード化しているかというと、D2Cは必ずしも、“スタートアップの専売特許”ではないことがわかってきたからなんですね。

海外の事例で見てもD2Cスタートアップはいっぱいありますが、実は「Nike」やスーパーマーケットチェーンの「Walmart」、「ペプシ」といった世界最大レベルのブランド価値や売上規模を持つ会社がどんどんD2Cに舵を切っています。そんな大企業がD2Cに進出するのだから、自分たちができないわけがないと、いろいろな会社がフォローしている。つまりスタートアップに限らず、大企業のD2Cも盛り上がってきているので、これほどバズワード化してきているんですね。

Takramのディレクター/ビジネスデザイナー 佐々木康裕氏(画像:ヤプリ提供)

D2Cは「マインド」

顧客とマーケットの関わり方に対する一つの「プロテスト」

金子氏:青木さんは、「北欧、暮らしの道具店」を経営しながら、どのように「D2C」の盛り上がりを見ていますか?

青木氏:実は、定義がよく分かっていないんですよね。いまだに自分のなかで、「これは『D2C』?」など、線引きが明確じゃないところがあります。その中で考えているのが、D2Cとはつまり、「マインド」なのかなと。

「俺たちはパンクだ!」「HipHopだ!」みたいな感じと近くて、いわゆる顧客とマーケットの関わり方に対する1つのプロテスト(※反抗、異議を申し立てること)なんでしょうか?

佐々木氏:その通りだと思います。

青木氏:我々は自分たちの存在を、「D2C」として定義していませんが、もともと既存の「秩序があるもの」に対して、プロテストをする気持ちはあるんですね。「この状況のなかに甘んじていたくない」「自分たちの秩序や状況を生み出したい」と思ってきているので、共感できるマインドだなと思っています。

これまでもお客さまにダイレクトに売るという手法は存在してきましたが、運営者のマインドとして、「直接ユーザーとつながり、指名で選ばれたい」と、ハッキリと1つの固まりとして表れるようになったのは、確かに新しいですよね。

僕らがECを始めたときは、「ロングテール」という考え方が強くて、あらゆるモールを活用し、多数の商品データを提供し、とにかくどこかで買ってもらえればという感じでした。

「北欧、暮らしの道具店」トップページ(画像:サイトからキャプチャ)

金子氏:以前は、「SKUが多ければ正義」という感じありましたね。

青木氏:そうした状況と比較すると、マインドはすごく変わってきましたし、既存のプラットフォームとの距離の取り方に特徴があるのかなと見ています。もちろんプラットフォームの存在は否定しませんが、たとえば、当社としては良い距離を保ちながら、「独立した小国」でありたいという思いがあります。

自分たちが大国じゃないのはわかっていますし、大国になれるかというとそれもなさそう。でも「独立した小国でいたい」。私たちはD2Cではないかもしれませんが、「プロテスト運動」というマインドは共通しているのかもしれませんね。

佐々木氏:「D2Cはビジネスモデルである」とも言えますが、青木さんが指摘されるように「マインドセットである」という方が、いろいろ物事を捉えやすいと思います。

今までは、お客さんを集める人、売る人、作る人とわかれていましたよね。そういう構造に対して、D2Cはある意味反旗を翻すじゃないですけれど、顧客に「自分たちの世界観を純度100%で届けたい」という思いがあり、そして「届けられるはずだ」という信念がある。それこそがD2Cなのかなと。

「北欧、暮らしの道具店」さんは、Podcastを配信したり、映画を作ったり、InstagramやYouTubeでも世界観を直接届けています。まさに純度100%で、さらにいろいろな方法で届けている。複数の経路を使ってコミュニケーションを取りながら、「小国を築く」ところはD2Cっぽさがあるなと思います。

「ブランディング」が競争戦略に

金子氏:以前は、商品点数を増やそう、SEOを強化して販売していこう、モールは在庫連動してどんどん商圏を広げていこうという流れがありました。それがここ1~2年で、お客さんとダイレクトにつながって丁寧なコミュニケーションをして、世界観を伝えていきましょうとなるなど、大きな変化があったと思います。世の中のマインドセットが変わってきたとも言えると思うのですが、何か「トリガー」があったのでしょうか?

ヤプリ執行役員、金子洋平氏(画像:ヤプリ提供)

佐々木氏:「コモディティ化のスピード」が、劇的に速くなったことかなと見ています。金子さんがおっしゃるように、SKUを広げて、価格を下げて、クーポンを配って……というやり方は、いずれ限界が見えることは明白です。

そうした中である種の競争戦略として、品ぞろえや価格じゃないところ、つまり「ブランディング」という一番真似しにくいところに、企業が競争軸を置くようになってきた。

コモディティ化された商品や、従来の販売戦略に対して消費者側も慣れてきて、「もうそういうの飽きたよ」という感覚に陥っているというか。ECで買うときの「(気分が)アガらない」ってあるじゃないですか? 作業的に買い物しているような。

でも百貨店やデパートを訪れたり、友だちと一緒に買い物していたりすると、やっぱり楽しいですよね。

欲しいモノはもう揃った。そのなかで買い物やブランドに、ライフスタイルそのものや創業者が持つスタンスを一緒に購入したい、と考える人が増えてきたのではないでしょうか。

モノが帯びる「コンテキスト性」に対する価値が、どんどん高まってきたのではないかと思っています。

※第2回は11/16日公開予定です。

(収録日:2020年9月8日、構成:ネットショップ担当者フォーラム編集部 公文 紫都)

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公文 紫都

ネットショップ担当者フォーラム編集部

公文 紫都(Shizu Kumon)

通販・EC業界専門紙記者、ITベンチャー勤務を経て2012年に独立。8年間フリーでライターをした後、2020年4月からネットショップ担当者フォーラム編集部に在籍。4年間NYで暮らしていた経験を生かし、海外の展示会取材なども積極的に行っている。猫派。@shidu

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