朝比美帆 2/16 7:00
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ネット通販が一般的な買い物手段として定着した今、商品を探して選ぶ消費者の行動もガラリと変わってきた。従来はGoogle検索と、テキストや画像による商品説明が用いられていた消費および販促行動が、現在ではSNSを活用した検索や、検索結果に画像が多用されていることに加え、動画閲覧といったビジュアル中心の商品訴求が台頭してきた。コロナ禍によって消費行動がいっそう変化した今、小売・EC事業者にとっての有効な販促とは何か――。変化に対応しながら実績を上げる小売・EC事業者の事例を、ビジュアルマーケティングプラットフォームを展開するvisumo(ビジュモ)の井上純取締役が解説する。

ビジュアルマーケティングプラットフォームを展開するvisumo(ビジュモ)の井上純取締役

消費行動の変化に伴い増すビジュアル検索の重要度

たとえば、ウィンドウショッピングをしているときにはビジュアル情報が商品への興味関心がわく起点となり、実際に購入しようと思ったときにスペックやレビュー、ショッピングガイドなどのテキスト情報を確認していると思う。何か面白い商品・サービスがないかと探している段階ではビジュアル情報が見られ、購入直前ではテキスト情報が見られているように、タイミングによってアテンションを高める情報は異なるが、昨今ではこのビジュアル起点でアテンションを引くことの重要性が増している。(井上氏)

商品・サービスを漠然と探している段階で消費者のアテンションを引くのはビジュアル情報
商品・サービスを漠然と探している段階で消費者のアテンションを引くのはビジュアル情報

昨今の消費行動の多様化を踏まえ、井上氏はこのようにビジュアルマーケティングの重要性を説明する。

Googleの調査によると、ネット通販をする消費者の5割が、商品購入の意思決定にビジュアル情報が役に立つと回答した。実店舗のウィンドウショッピングに限らず、ネット上でもビジュアル情報が購買に大きく影響していることがわかる。

Googleでは画像検索以外の検索オプションメニューでも画像が多く掲載されている
Googleでは画像検索以外の検索オプションメニューでも画像が多く掲載されている

ビジュアル情報の重要性が増したことでGoogle検索エンジンの検索結果も変化した。「ナイキ スニーカー」で検索した場合に、以前はテキスト情報だけが検索結果に表示されていたリスティング広告までもが画像付きで表示されるようになったほか、Googleショッピングも同様の設計へと移行している。

テキスト検索をする“ググる”という行為は、「検索結果の1ページ目が最も見られやすい」という消費者行動のもと、公式販売サイトなどSEOが有効に働いているコンテンツが上位表示される仕組みになっている。その一方で、SNS上で画像やそれにひも付くタグ情報などから検索する“タグる”(ハッシュタグ検索)という行為も行われるようになった

テキスト検索をする“ググる”に加え、“タグる”という行為が台頭
テキスト検索をする“ググる”に加え、“タグる”という行為が台頭

SNSごとに独自のアルゴリズムがあるため、ハッシュタグ検索をしても人気のコンテンツが優先的に表示される状況もあるだろうが、“ググる”との大きな違いは、検索したときに最新のコンテンツが上位表示されるリアルタイム性にある。情報の鮮度を求める消費者層は特に“タグる”という行為が多くなると考えられる。

訪問したいサイトや知りたい情報などの目的が決まっている場合には“ググる”方が早く、目的がぼんやりとしている中で情報をインプットしたい場合には“タグる”――といった消費行動が広がっているため、「消費者の目的に合わせてどう辿って来させるか、“ググる”と“タグる”をうまく使い分けて導線設計をする必要がある」(井上氏)と話す。

visumo 取締役 井上純氏
visumo 取締役 井上純氏

ECサイトのコンテンツも変革期に

ビジュアルの重要性が増し、企業の取り組みも変わりつつある。「ECサイトのコンテンツの在り方」もその1つだ。

従来からのECサイトは上部に大きなバナーを置き、その下のトピックス、新商品、レコメンドなどの項目には白抜きの商品画像を置いていくといった構成が一般的だった。しかし最近では、InstagramなどSNSで投稿されている“映える”画像やコンテンツを置き、消費者の目を引こうとする企業が増えている

「visumo」の導入企業でも、“映える”画像を置くコーナーを設けて導線を追加したことで、ページビュー(PV)が5~10%アップしたという事例も出てきている。ECサイトの中でも、消費者は面白そうなコンテンツから商品にたどり着くことがデータからもわかった。(井上氏)

ECサイト上に“映える”コンテンツを置き、消費者の目を引く取り組みは広がっている
ECサイト上に“映える”コンテンツを置き、消費者の目を引く取り組みは広がっている

“映える”コンテンツを増やす上で、顧客が撮影した写真を使用することも有効な手段となるが、コロナ禍によってオフラインでの顧客接点は減ってしまった。この対策として、デジタルチャネルでいかに消費者とつながるかと試行錯誤する企業が増えたという。

SNSで消費者に向けて質問や問い掛けを積極的に行い双方向のやり取りをすることで、今までは実店舗でしかつながれなかった消費者との接点をデジタル上で持ち、マーケティングデータを増やす取り組みが活発化している

消費者がSNSに投稿した画像をECサイトなどで利用する際は、著作権者となる投稿者の許諾が必要になるが、これも接点を作る良いきっかけとなる。たとえば、投稿者に対して「画像を使用させてください」と依頼し、その投稿者から「ぜひ使ってください」といった返答がもらえれば、そこからコミュニケーションが生まれる上、“映える”コンテンツの増加にもつながるからだ。

ビジュアルの重要性が増し、企業のSNS活用に対する体制にも変化が現れてきているという。

visumoが実施した調査によると、SNSに3人以上が関わる体制を作って運用する企業が多数を占めていた。SNS運用専門の部門を立ち上げた企業もある。もちろん、これは企業規模にもよるため、専任を置かずにSNSを運用しているケースもあるが、このコロナ禍で企業にとってのSNSの役割と、SNSに対する企業の姿勢が大きく変わってきたと感じている。(井上氏)

ワークマン、シップス、コーセーが手がけるビジュアルマーケティング

ここから、ビジュアルマーケティングツール「visumo」を導入してビジュアルマーケティングを上手に活用している企業の事例を紹介する。

ワークマンの事例

Instagramに投稿した自社ブランド「#ワークマン」「#ワークマン女子」「#ワークマンプラス」のコンテンツを、ECサイトに「workmanフォト」として掲載しているワークマン。アンバサダーマーケティングに力を入れており、公式アカウントによる高品質な投稿のほか、ユーザー、アンバサダーの投稿写真を集約して掲載している。

掲載の許諾を取る際に「身長や着用サイズを教えてください」と問いかけるなど、ほかの消費者が画像を見たときに購買を後押しするような有効な情報を引き出して、コンテンツの充実化を図っている。

文章の評価が10個あるより、1枚の画の方がよほど真実味を帯びていて高い価値がある。商品の良さやライフスタイルの中での着こなしが伝えられるため、この取り組みを推進している」。ワークマンの土屋哲雄専務はこのようなお考えのもと、ECサイトでビジュアルマーケティングを展開されている。(井上氏)

ワークマンはECサイト上にユーザーやアンバサダーの画像を取り集めたLP「workmanフォト」を設置
ワークマンはECサイト上にユーザーやアンバサダーの画像を取り集めたLP「workmanフォト」を設置

「workmanフォト」は、「ワークマン女子」「ワークウェア」「アウトドア」「ライダー」「釣り」というジャンルで投稿されたコンテンツを集約したLP(ランディングページ)を用意している。

複数のLPを用意している場合、一般的には更新作業(投稿された写真の使用許諾、埋め込み作業など)にかかる時間とリソースが必要となる。

その点「visumo」には、「#ワークマン」「#ワークマン女子」「#ワークマンプラス」などでタグ付けされたInstagram上の投稿を効率的に収集(投稿者の許諾を得る工程を含む)、掲載、販促コンテンツにつなげる機能を搭載。各キーワードのLPは、都度更新作業をすることなく、自動的に更新されている。

各LPにはInstagramで投稿されていた最新の写真や動画が掲載される。リピーターにとっては新しい商品の発見につながり、初めて訪問した消費者にとってもさまざまな商品を深く知ることができる。Instagramの写真や動画をECサイトに掲載するだけではなく、手間とリソースをかけることなくLPを更新できることも「visumo」の特徴となっている。(井上氏)

SHIPSの事例

衣類や小物などのセレクトショップ「SHIPS」を展開するシップスは、ライブコマース「SHIPS SHOPPING TV」、YouTubeで展開する「SHIPS Channel」、Instagramの「IGTV」(長尺動画投稿・共有サービス)など6チャンネルで動画を配信している。

ユーザー属性や目的などに合わせて、展開するメディアごとにさまざまな動画を制作しているという。

SHIPSは顧客の目的やニーズに合わせて複数のチャンネルで動画を配信
SHIPSは顧客の目的やニーズに合わせて複数のチャンネルで動画を配信

シップスではこれらの動画を自社ECサイトでアーカイブ化して掲載。ライブコマースは専用コーナーに集約、商品関連の動画は商品詳細ページに掲載し、動画コンテンツを通じた接客に活用している

ECサイトへの動画掲載は、「visumo」に搭載されている、Instagramに投稿された写真や動画、IGTVを掲載する機能を活用。掲載した写真や動画経由のPV数、売上データを分析できる「visumo」を使い、次のアクションを検討している。また、動画で紹介している商品を動画の下にひも付けて表示したり、長尺の動画には目次を付けてユーザーが見たい箇所をピンポイントで再生できるようにするなど、視聴体験を高めるための「visumo」の機能を存分に活用している。

自社ECサイトでの動画活用の効果

EC事業者が動画活用を進める背景について「SNSマーケティングでアテンションを取りたい。より多くのアテンションを取るために動画を活用しようとしている」と井上氏は説明する。

MMD研究所の調査(2019年版:スマートフォン利用者実態調査)によると、若年層のスマホ利用時間は1日3~4時間。その内の約50%は「SNS」「動画」に関するアプリという。

Z世代などに対して、マスに変わる新しいアプローチ方法として動画配信チャンネルが注目されている。ただ、「コンバージョンさせる」「アテンションを取る」といった目的だけに動画を活用するのは“もったいない”。今は接客動画などさまざまなタイプの動画を作る企業が増えている。(井上氏)

商品説明に関する接客動画もSNSでコンバージョンを獲得するために活用するだけではなく、自社で運営するオウンドメディアで活用しようという流れが主流になってきているようだ。

SNSで配信した動画を自社ECサイトなどオウンドメディアで再利用する意義は大きい
SNSで配信した動画を自社ECサイトなどオウンドメディアで再利用する意義は大きい

たとえばInstagramで50万人のフォロワーがいても、SNSでリーチできない層も多くいるであろうことを考慮すると、その数倍のユーザーを持てるポテンシャルが見込まれる。「Instagramライブで流した動画は、もっと他の人に見てもらわなければもったいない」と井上氏。続けてこう言う。

Instagramライブの費用対効果を問われた時に、経営サイドに対して数字(売上高)で納得してもらうのはなかなか厳しい。その動画を自社ECサイトなどで活用すれば、さらに多くの人たちに見てもらえる。売上貢献や視聴に関するKPIなど各種数値を経営側に見せることができるので、より動画制作に力を入れるための体制作りへの投資がしやすくなるのではないか。(井上氏)

また、自社ECサイトに動画を活用すると、総合的にSEO効果があると井上氏は言う。

自社ECサイトに動画があると、ユーザーの滞在時間が増え、回遊性も上がりやすくなるユーザーがサイトに滞在する良質なサイトと検索エンジンに評価され、総合的にSEOの効果があると言える。(井上氏)

コーセーの事例

コーセーでは「visumo video」を活用し、新しいコンテンツ展開を進めている。コロナ禍により以前のような店舗接客が難しくなり、Webの接客力を向上させる取り組みに力を入れているようだ。

店舗スタッフが行っているIGTVなどのライブショッピング動画をECサイトでアーカイブ配信し、Instagram以外でも動画を露出することで、幅広いユーザーへ動画コンテンツを届けて購入の機会損失を防いでいる。また、店舗スタッフのスマートフォンから本部が簡単にビジュアル素材を収集できる「visumo」の機能を使い、掲載までのフローが効率的に行われている。

動画の尺は約30分。スキップ再生できる「visumo」の目次・チャプター機能で、ユーザーに無駄のない視聴体験を提供している。また、動画を見ながら紹介している商品のページも同時に確認することが可能。商品を購入したい場合は、同じ画面内に表示されている商品画像をクリックすると商品ページへ遷移できる。これは、動画の視聴中に商品ページへ移動しても動画を表示し続ける「visumo」のピクチャーinピクチャー機能を活用することで実現できる仕組みとなっている。ユーザーは遷移した先のページからいつでも動画に戻ることができ、続きから視聴できる。

「visumo」には、動画への目次追加や、ピクチャーinピクチャー機能など、動画視聴の体験に合わせた機能を搭載している。ピクチャーinピクチャー機能は商品詳細ページを見て購入に至らなかった場合も、動画に戻れば他のアイテムへ移動可能なので、回遊性のアップも期待できる。(井上氏)

ビジュアルマーケティングを手軽に始める方法

井上氏は動画の重要性と、取り組む企業事例を踏まえて、商品詳細ページを充実化すべきと訴える。

ネット通販専業などダイレクトマーケティング実施企業やD2C企業などは販売がネット上に限られるため、これまでも商品詳細ページを中心としたECサイトの充実化に取り組んできた。

一方、主要販路がネット以外にあり、オフラインでの顧客接点が豊富なメーカーEC、SPAブランド、小売業の商品詳細ページの情報量は、決して多いとは言えないと井上氏は指摘する。

ネットショッピングは買い物手段として一般的になった今、EC実施企業にとって「商品詳細ページの充実は必要不可欠」(井上氏)。接客コメント、スタイリング、動画、UGCのほか、さまざまなブランドが従来から取り組んでいる特集、ブログ、レビューなども「商品詳細ページに並べて、接客力を高めることが必要だ」だと井上氏は強調する。

小売業であれば、店舗スタッフの接客ノウハウを商品紹介のコンテンツに反映しサイトを盛り上げる。たとえば、商品詳細ページに動画を差し込めば、実店舗に足を運んで店舗スタッフに「この商品のどこが特徴ですか?」と聞いたような接客を受けることができる。「visumo」のようなツールを使えば、そういった施策が簡単に利用できるようになる。(井上氏)

ビジュアルマーケティングツール「visumo」とは

「visumo」は、ブランディングや商品訴求を強化するビジュアルデータを一元管理できるビジュアルマーケティングプラットフォームで、サービス開始から4年で導入社数450社を超えた。主に4つの機能が用意されている。

「visumo」の提供する主な4つの機能
「visumo」の提供する主な4つの機能
  1. visumo social
    Instagram上の写真や動画をECサイト、オウンドメディアに活用できる機能。コンテンツ充実だけではなく、コロナ禍では、SNS経由の顧客接点の創出、アンバサダーマーケティングの促進といった施策での活用事例が増えた。
  2. visumo video
    YouTubeやIGTVなどで活用している動画データを、最適な容量に圧縮。自社サイトやオウンドメディアなどでストリーミング配信できる機能。前述した目次チャプター、ピクチャーinピクチャーといった機能がある。
  3. visumo snap
    アンバサダーやスタッフが投稿できる機能。アンバサダーやスタッフが撮影したコンテンツをECサイトに投稿できる。スマホから簡単に投稿可能。
  4. visumo comment
    スタッフやアンバサダーの撮影コンテンツ、接客コメントなどがECサイトに掲載できる機能。スマホから簡単に投稿できる。

「visumo」を導入すれば、商品1つひとつの良さを接客コメントや動画、画像などを用いてオウンドメディアやECサイトに掲載できるようになる。しかも、ノーコードで手軽に実現できるため、企業のDX推進の観点からも広く活用が進んでいる。(井上氏)

「visumo」を活用すれば、“簡単”にコンテンツ運用ができるようになる
「visumo」を活用すれば、“簡単”にコンテンツ運用ができるようになる

良質な顧客体験を提供するために、ECサイトでの適切な情報提供の重要度はさらに増していくであろう。ECサイトを運営する事業者は、「デジタルチャネルで情報を充実させる必要があり、そのためにはEC部門だけでは完結できないコンテンツ作りが必要になる」と井上氏は指摘する。

実店舗でスマートフォンからECサイトを見る行為は一般的に行われているほか、今後はオフラインのテクノロジーも進化していくと考えられる。そのなかで、活用できるコンテンツをしっかりと用意しておき、運用できる体制を整えておく必要は大きいという。

  • ECサイトはただ商品を売るだけでの場所ではない
  • 消費者にとって商品を知るための大事な場所
  • スタッフにとって、接客知識を知る大事な場所

ECサイトにはこのような価値がある“場”だと井上氏は強調。続けて「『visumo』はテクノロジーを通じてECビジネスを手がける企業の、組織全体でコンテンツを創るDX推進のサポートができる」と訴えている。

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