通販新聞 2022/2/22 7:00

持続可能な社会の実現に向けてサステナブルを意識した通販実施企業が増えてきている。環境を守り、資源を無駄にせず、次代の生活・環境を守る取り組みは、今や事業者にとって企業責任という観点のほか、「サステナブルな取り組みを行う企業の商品を購入したい」など消費者の関心も高まりつつあり、ビジネスにも直結する重要な施策と言える。すでにさまざまな取り組みを行う注目すべき通販実施企業各社の考えや試み、進捗などを見ていく。

買取り時の廃棄衣料を削減

ブランド品の宅配買い取りサービス「ブランディア」を運営するデファクトスタンダードでは、リユース事業で生じる廃棄衣料の削減に向けた取り組みを進めている。

同社では買い取りを希望する顧客から、不要となったブランド品を宅配キットを通じて受け付けて、査定・買い取りを実施している。

その過程において、品質表示などのタグが切り取られてしまっていて法律上再販ができないもの、あるいは破損して買い取り対象とはならないようなものがどうしても生じてしまうという。

通常はそのまま廃棄処分することになるが、環境問題を考えて2030年までにブランディアで生じる廃棄衣料をゼロにするプロジェクトを昨年10月から開始した。

衣料品を圧縮加工したリサイクルボードに

特に注力した内容では、廃棄する衣料を協力会社に無償提供してアップサイクルし、別素材として有効活用する企画がある。これは、不要となった衣料品を圧縮加工して「PANECO®(パネコ)」というリサイクルボードに変えるというもの。

同ボードは強度があり、家具や小物、内装資材などさまざまな用途に活用が可能で、同ボードで作った什器などが廃棄になる場合でも、再びリサイクルすることができる循環性に優れた資材となっている。同社でも、運営する実店舗において同ボードを壁面やテーブルなどに活用している。

廃棄衣料の量はその月によって異なるものの、同社の場合、昨年はトータルで月間約4トン(1万点以上の商品数)ぐらいの廃棄が生まれていたが、この内の約6割を同取り組みで再活用できた

通販新聞 サステナブル SDGs ブランディア 廃棄衣料を原料とした罹災区部ボード PANECO
廃棄衣料を原料としたリサイクルボード「PANECO®」
(画像は「PANECO®」サイトから編集部が伽キャプチャし追加)

リメイク用として服飾大学、専門学校に提供

また、物量自体はそこまで大きなものではないものの、服飾関係の大学や専門学校にもリメイク用として廃棄衣料を無償提供している取り組みがある。

一例として、大妻女子大学(家政学部被服学科染色デザイン研究室)に無償提供した際には、同校で5種類の技法を用いてアップサイクルし、アートフラワーであったり、傘を染め直したり、テディベアなどを作成した。

これは、服から服に作り直しても、再びその服が不要となってしまって廃棄となる可能性もあるため、あくまでも「思い出」として取って置けるようなものをテーマにアップサイクルに取り組んでいたようだ。

提供した大学や専門学校での他の事例を見ると、防災用品に変えたり、子供服にリメイクして寄付にチャレンジしたりなど、提供した各校によってそれぞれ異なる内容で活用を図っていった。

損得ではなく「ものを大事にすること」が企業責任

そのほかにも、購入した商品自体を長く使ってもらうという視点も持っており、実店舗で商品購入時に革製品などの手入れに使えるメンテナンスクリームなどを提供。手入れするだけでも物持ちがとても良くなることから、商品寿命をいかに長くできるかを考えた顧客対応に取り組んでいる

一般的に、企業が環境対策に本腰を入れる際、その取り組みに必要となるコストでハードルが生じてしまう場合もある。同社でもリサイクルボードは、通常のボードを比べると、リサイクルのための加工賃などがかかってしまうため、多少割高になってしまうという。

しかしながら、「長い目で見た時に、環境や自分たちの事業自体を長く行うためには、こうした活動を自社で行うことは当たり前のことだと思う」(同社)と説明。損得や見返りを求めるのではなく、リユース事業に携わる立場としても、ものを大事にすることが企業責任であるとしている。

メーカーの廃盤品を割引価格で販売

アスクルでは運営する通販サイト「LOHACO(ロハコ)」でメーカーの廃盤品などを通常価格よりも割り引いて販売する専門コーナー「Go Ethical(ゴーエシカル)」を展開中。

店頭での品ぞろえの変更や通常販売時期が終了したことなどで小売店からメーカーに返品され、これまでは破棄処分としていた店頭戻り品や旧包材活用品を通常価格よりも安価に販売し、廃棄ロスを防ぎ、商品を有効活用する取り組みとして19年11月から開始したものだ。

通販新聞 サステナブル SDGs LOHACO Go Ethical
「LOHACO」で展開している「Go Ethical(ゴーエシカル)」

一見、アウトレット品の販売とさほど変わらない取り組みに見えるが、実はさまざまなメーカーが参画して化粧品において廃盤品を販売する売り場は実店舗、通販サイトを含めてもあまりない。化粧品各社はブランド価値の保護やこれまでの商習慣などを理由に、廃盤品の販売を認めることはほとんどなく、基本は廃棄しているためだ。

目的に共感した20社のメーカーが参画

アスクルでは大手メーカーを対象に「ロハコ」で収集した各種データをもとにマーケティング戦略や商品開発などの研究ができる「LOHACO ECマーケティングラボ」を組織しており、各メーカーとのつながりが深く、アスクルがめざす方向性などについてもメーカー各社にわかりやすく示していることもあり、「“安さ”ではなく“廃棄削減”に光を当てることで廃盤品を廃棄せずに販売し、世の中から無駄な廃棄をゼロにする」という「ゴーエシカル」の目的に共感したメーカーの担当者が社内調整に尽力し、実現できた取り込みだという。

廃盤品というだけで、商品自体の品質は高く、また価格も安く購入できることなどから顧客からの反応も上々のよう。

これまでに販売されたことで対象品を廃棄せずともよくなった累計廃棄削減数は1月下旬時点で16万個を突破しているという。

「当初は数社からスタートしたが、無駄な廃棄を削減するという取り組みに参加下さるメーカーは着実に増えている」(同社)とし現状、日本ロレアルやファンケル、オルビス、ロート製薬のほか、今年1月からは花王も加わり、20社のメーカー・ブランドが参画中で、今後もメーカーの参加を呼び掛けていく考え。

通販新聞 サステナブル SDGs GoEthical参画メーカー・ブランド
「Go Ethical」参画メーカー・ブランド(2022年2月21日時点)
(画像は「LOHACO」サイトから編集部が伽キャプチャし追加)

アスクルでは「ゴーエシカル」のほか、環境配慮商品などを集めたセール「エシカルデイズ」を昨年12月3~16日まで開催するなどの試みを実施しており、今後も商品販売と絡めた施策を進めていく考えという。

楽天グループは長野県と支援プロジェクトを実施

楽天グループは2月9日、長野県内の事業者を対象とし、県内事業者のSDGsに関する取り組み推進を後押しするためのプロジェクト「SDGs推進企業アクションプロジェクト」の会合をオンラインで実施した。

長野県では、企業が経営戦略としてSDGsを活用することを支援する制度「長野県SDGs推進企業登録制度」を定めている。同制度に加盟し「楽天市場」にも出店している、馬刺し専門店の若丸から「同制度登録企業の取り組みを促進できないか」という相談が楽天にあり、楽天・若丸・長野県の3者でプロジェクトを開始した。

プロジェクトの目的は「SDGsに具体的なアクションを持って取り組みたいと考えている県内企業が一歩を踏み出し、SDGsに取り組む意義と価値を実感できるようにすること」。参加企業は8社では、3回目の会合となる9日は、第2回に定めた目標と取り組みに向けた活動の進捗報告が行われた。

通販新聞 サステナブル SDGs 楽天グループと長野県の支援プロジェクト SDGs推進企業アクションプロジェクト
楽天グループと長野県が行っている「SDGs推進企業アクションプロジェクト」

「こども食堂」支援、野菜くずの肥料への活用を進める企業も

「楽天市場」にも出店する、おやき製造販売のいろは堂では「廃棄物の削減」「ジェンダー・多様性」「郷土文化の継承」という3つのテーマに取り組んでいる。

食品製造事業者にとって、食品廃棄物の削減は従来から大きな課題となっているが、いろは堂ではただ削減するだけではなく、「こども食堂」の支援や、新商品の販売につなげる取り組みを実施している。

さらには昨年、環境省のガイドラインに基づく「エコアクション21」の認証を取得した。2022年に向けた目標としては「生産量対比1%の削減」、25年は「同5%の削減」、30年は「同10%の削減」を掲げている。

おやきの廃棄物である、野菜くずを近隣の共同作業所の肥料として使い、さらには作業所で生産した野菜を同社で使用するという循環を構築することをめざしている。

通販新聞 サステナブル SDGs いろは堂 エコアクション21の認証を取得
2021年に「いろは堂」は「エコアクション21」の認証を取得
(画像は「いろは堂」サイトから編集部がキャプチャし追加)

また、加工過程で出るドリップを廃棄物として処理せず、スープや調味料などの新商品開発を検討。さらには、重量が規定以下であったり、形が不良だったりするおやきを「こども食堂」に寄贈する取り組みも行っている。

同社ではこれまで、「こども食堂」については継続的に取り組みをしてきたものの、廃棄物削減につながるNPO法人との連携や、ドリップを使った商品開発は実現まで至っていない。

従業員からは「こども食堂」との取り組みで「感謝されることに喜びを感じている」といった声が、さらにはエコアクション21の取り組みにより「意識変化が生まれてきた」といった声が出ているという。

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