森野 誠之 2022/8/9 8:00

「自社の強みを最大限に活かす」。よく耳にする言葉ですが、強みってなかなか見つかりません。そんなときは、新入社員や中途採用の社員などの新鮮な目を頼るとうまくいくようです。

何に対してお客さまがお金を出してくれているのかを考える

ユナイテッドアローズ、ディノスの責任者が語る、大企業における「DX推進」「EC強化」「オムニチャネル」の進め方 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/9658

昨年11月に「ネットショップ担当者フォーラム2021秋」で行われた講演をまとめた記事が公開されました。参考になることが多いので、ユナイテッドアローズでDX推進の責任者を務める藤原義昭氏と、DINOS CORPORATIONでEC強化の推進役を担う石川森生氏の発言から、名言というかこれは心に残しておきたいという部分だけをピックアップしていきます。

藤原テクノロジーに精通している人材は中途採用で入ってくることが多く、社内のことはまだ全然わからないものです。システム的にも人的にもキーになるものを熟知していて、より分けをどうするべきか目利きができる人の存在は結構重要ですよね。

石川すごく重要です。DINOSの場合は経営側が最初からそれをわかってくれていたので、40年プロパー選手のような社内を熟知した人を私のすぐ近くに置いてくれました。今からやりたいことをその人に相談すると、「それをやりたいならケアすべきところはここ」と教えてくれる、そういう存在です。ケアすべき部門に私が直接行くよりも、その人が地ならしをしてから行くと話が通りやすかったので、経営側がそういうチーム構成にしてくれたことはすごく助かりました。

中途で入社した人は実力があったとしても社風や仕組みがわからないので、それに慣れるまでなかなか力が発揮できません。それどころか、社歴の浅い社員や若い社員で固めることによってベテラン社員と衝突してしまい、物事がまったく進まなくなることもあります。

こうならないためにDINOSさんがとった方法は、ベテラン社員を補佐役としてすぐ近くに置くということ。何かしようと思った時のこの人に確認すれば、誰がキーマンでどうすれば動いてもらえるかがわかるのでスムーズになります。

藤原デジタル推進に向けたツールや方法論など、教科書のようなものは世の中にたくさんあるけれども、人の心が変わらないと教科書だけでは実行できないですよね。会社が進むべき方向性があり、かつインパクトの大きい変化はどうしても失敗ができないので、そういう場合は入り口をしっかり温めてから一気に加速させることが重要だと私も思います。

こちらも進め方についての重要な部分です。理屈でわかっていても心が動かないと体が動きません。そのためにはどうしても一緒に汗をかいたり、念入りに説明することが大切です。大きな企業は動きが遅くなるものの、一度動き出したら止まりません。そのあたりの構造も理解しておきたいところです。

藤原私は「KPI作りすぎ問題」が懸念されると思っています。巻物のようなExcelがあっても、見ているところは1か所といったことはよくありますし、その帳票を作るために毎週時間を取られるメンバーがいるというケースもしばしば見られます。要らない作業を排除してあげることと、「本当に効いている施策は何か」を見つけていくことが重要です。そのために、自分が経営側と現場のつなぎ役をしっかりと担って、会社として見るべきポイントを一致させていかなければならないと常に自覚しています。

誰かに新しいことをやってもらおうと思うなら、既存の業務を減らしてあげないといけないですよね。業務を増やすだけでは疲弊してしまうので。数値の管理や報告書などはポイントを絞って、アクションにつながるものだけを出してもらうようにしていけばお互いに幸せです。世の中はこれができない人が多いので、増やすところと減らすところのバランスをとるようにしましょう。

石川先ほども出ましたが、やはり「アセットの整理」だと思います。まず、自社を冷静に見たときに、他社と比べて何が秀でていて、何に対してお客さまがお金を出してくれているのかということをしっかり整理すること。その上で、デジタルを活用した面白い施策を企てていく方が、流行りものを追いかけるより圧倒的に費用対効果の高い結果が創出できると思います。今一度、自社の強みを整理してみてはどうでしょうか。

自分たちがいつも見ているものってウリにはならないと思っている人が多いです。しかし、部外者や新入社員、中途入社の人たちから見るとすごいことだらけだったりします。それ活かすためにデジタルや店舗の接客をどうしていくかを考えたほうがうまくいくことが多いです。

本で読んだようなこと、誰かに聞いたこと、今までうまくいった方法ではなくて、その場にあった手段を選ぶようにしましょう。デジタルと言えども最終的には「人」です。

今週の要チェック記事

メルマガって配信すべき?ネットショップにおけるメルマガの重要性と成果が出るポイントについて安藤さんに聞いてみた。 | よむよむCOLLAR ME
https://shop-pro.jp/yomyom-colorme/86544

なんとなく配信するだけなら意味がないですが、数値を見て検証するなら配信する意味があります。

【セミナーレポート】GA4は何が変わったのか?小川卓氏が語るGA4の魅力と変更点(Q&A付き) | 株式会社Sprocket
https://www.sprocket.bz/blog/20220729-ga4-seminar.html

そろそろ機能が出そろってきた感のあるGA4。勉強するタイミングです。

「いかがでしたか?」問題に「欲しい情報が出ない」問題… Google検索の第一人者が語る、検索で不満が募る“意外な理由”とは | 文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/56122

「SEO事業者の9割くらいは“良い会社”とは言えないので…」日本のネット検索の5%を担う第一人者はいかに生まれ、何を目指すのか | 文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/56123

SEOの今についての記事。あまり良い業者がいないようですので、パートナー探しは慎重に。

海外からリピート購入される「Tabio(タビオ)」の靴下。海外ユーザーが語る「越境してまで購入する理由」とは? | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/9989

商品に対する圧倒的な信頼感があります。日本製だからではなくて、その会社固有のファンなのでご注意を。

アパレルECで伸ばすべきはトップラインか利益率か | ECzine
https://eczine.jp/premium/detail/11479

【TSIホールディング、アダストリアに聞く】アパレル企業における顧客接点のあり方と自社ECの役割 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10034

2記事とも冒頭の記事の具体例として読むと効果的です。考え方と実務の記事はセットで。

ヤフーの新生「Yahoo!ショッピング」は商品画像“シンプル化”に。「テキスト要素2割以内」「送料無料や価格の表記禁止」など | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10041

「ガイドラインに反する画像入稿に対して、検索順位の低下、商品非表示などの不利益措置を予定している」。とのこと。

今週の名言

ブルーピリオドを読んでアートに興味を持った私が海外美大院生になる話 | りほ | note
https://note.com/rlho/n/n4b6f701386b6

決めるまではやらない理由を探し続け、覚悟を決めてからはやり方が見えてくる、というのは本当だなと実感しました。

覚悟を決めるというか、やると決めるところまでどう持っていくのか? 新しいことを始めるときに考えるのはここ。

筆者出版情報

「未経験・低予算・独学」でホームページリニューアルから始める小さい会社のウェブマーケティング必勝法

「未経験・低予算・独学」でホームページリニューアルから始める
小さい会社のウェブマーケティング必勝法

森野誠之 著
翔泳社 刊
発売日 2021年10月15日
価格 2,200円+税

この連載の筆者 森野誠之氏の著書が翔泳社から発売されました。小さな会社の“ひとり担当者”が、未経験、低予算、独学でホームページのリニューアルからウェブマーケティングまでを成功させるための指南書です。電子版、オンデマンド印刷版ともにAmazonで発売中です!

この本をAmazonで購入
この記事が役に立ったらシェア!
これは広告です

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
ecbeing.
[スポンサー]