Digital Commerce 360[転載元] 2022/9/8 8:00

小売事業者がマーケットプレイスでビジネスを行う際、慎重になるべき要素もあります。米国最大のディスカウント小売および産業用パッケージ供給会社「Paper Mart」のアリソン・マクガイア氏(マーケティング担当副社長)は、Amazonのマーケットプレイスと距離を空けています。

Amazonから撤退した理由

その① 高い手数料

マクガイア氏は最近、Amazonでの商品販売をやめることにしました。その理由はさまざまだと言います。まず、Amazonのフルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)の高い手数料が問題でした。 

FBAプログラムは手数料が高くて大変でした。Amazonは取引のたびにさらに2ドルを請求します。それがどんどん膨らんで、ある時点で"いい加減にして欲しい"という感じになりました。(マクガイア氏)

さらに、Amazonのマーケットプレイス出品者向け規制は、Paper Martのスタッフに負担を強いていました。 

FBAでは、すべての商品に異なるラベルを貼る必要があります。すべてのラベルを貼り直し、ダッシュボードで注文を入力し、すべての箱の重量を報告するなど、追加で必要な要件があります。仕事の流れが中断され、非常に手間がかかります。そのため、ある時点から利益の分析を行う必要があります。手作業が必要になると、私たちにとっては割に合わないんです。(マクガイア氏)

理由② お客の競合

Amazonのマーケットプレイスから撤退することを決めた2つ目の要因は、Paper Martのギフトバッグ、テープ、装飾用リボンなどをAmazonのマーケットプレイス内で購入し、転売する自社顧客と競合することがわかったためです。

顧客と争いたくなかったのです。転売者がすべての作業を行い、Amazonで商品を販売することを望んでいるのであれば、転売者から見るとなぜPaper Martも同じことをするのか、ということになるのです。Amazonは、大幅な値引きや低いマージンを喜んで受け入れるという、奇妙なマーケットプレイス。そのようなチャネルは、おそらく自前で仕事をしている中小企業なら、上手く機能すると思いますし、多分彼らにとっては、それが唯一のチャネルなのでしょう 。

マーケットプレイスで販売するかどうかの決め方

マーケットプレイスで販売するかどうかの選択は、小売事業者にとっては難しい判断です。

多くの場合、マーケットプレイスでは、より多くの消費者にリーチでき、小売事業者はすぐに売り上げを伸ばすことができます。一方、売り上げに対する大きな課金、その他の手数料が発生、加えてマーケットプレイス上の他の多くの商品のなかに埋もれてしまい、注目を集めることが難しくなるケースがあります

では、小売事業者はどのようにマーケットプレイスでの販売を決定すればよいのでしょうか?どの商品がどのマーケットプレイスで最も効果的に販売できるのでしょうか?

業界の専門家によると、重要な要因は、どのマーケットプレイスでも消費者の特徴にあると言います。CI&Tのリテール戦略ディレクターであるメリッサ・ミンコウ氏は、こう指摘します。

 ブランドはコア顧客がすでにいる場所に行くことが大切です。マーケットプレイスで販売される商品は、そのプラットフォームに対する利用者の期待に沿うモノでなければいけません。

中核となる顧客は通常、最もトレンディな商品を求めてマーケットプレイスにアクセスするのでしょうか? それとも定番商品を求めているのでしょうか? そのマーケットプレイスは、コアな消費者の中ですでにどのように位置づけられているのでしょうか? 商品はどのように販売されるのでしょうか?

つまり、選ばれた商品の隣にはどんなブランドが配置されるのでしょう?それが、マーケットプレイスの品ぞろえを決定することになるのです。

マーケットプレイスで販売するメリット

マーケットプレイスで販売する小売事業者の多くは、新しい市場へ参入するためにマーケットプレイスを利用します。AmazonやWalmart、その他何百ものマーケットプレイスに出店することで、潜在的な顧客にブランドを紹介することができるという考え方です。

しかしミンコウ氏は、既存の小売事業者と新参者の両方が、マーケットプレイスでリーチできる消費者から利益を得る可能性があると言います。

興味深いことに、ブランドが消費者によく知られ、望まれている場合も、そうでない場合も、マーケットプレイスで販売することがブランドにとって最善の利益になることが多いのです。

以前は純粋なDtoCだったブランドの多くは、今ではマーケットプレイス経由の販売を戦略の1つにしています。ミンコウ氏は、小売企業に戦略、テクノロジー、デザインのサービスを提供しています。

一方、マーケットプレイスは、他にはない商品の発見機会を提供することで、知名度の低いブランドの成長を助けることができます。そのブランドの商品が高い評価を得て、検索結果の上位で表示されるようになれば、新しい顧客を獲得することができます。

これは、Google、Amazon、Facebook、Walmartなど、あらゆるデジタルマーケティングおよびショッピングチャネルへ商品コンテンツ配信を行うProductsup社のCIOであるマーセル・ホラーバック氏が、小売事業者に対して行っているアドバイスに近いものがあります。

重要なのは、マーケットプレイス間の標準化と多様性の適切な組み合わせを見つけることです。

複数のマーケットプレイスで商品を表示する方法は、一貫している必要があります。ブランドは、画像や説明文などの商品コンテンツが一致していることを確認するだけでなく、価格や在庫状況も同期させる必要があります。しかし、一貫性とは、ブランドがすべてのマーケットプレイスに同じカタログコンテンツを送信することを意味するものではありません。Amazonで商品を宣伝するには、Facebookマーケットプレイスのようなチャネルで販売するのとは異なるアプローチが必要です。たとえばAmazonでは、ブランドは、動画などの追加コンテンツで充実させることができ、より魅力的な体験を作ることができます。(ホラーバック)

パレートの法則を当てはめる

マーケットプレイスのなかでは、自国の大手モールへの出店から始めるのが、ほとんどのブランドにとって最も理にかなっています。

私は、ここで常にパレートの原則を適用します。現実には、1つのマーケットプレイスが収益の80%を占めることが予想されます。米国では、Amazonから始めてその後、Walmartに拡大することを意味します。(ホラーバック氏)」

パレートの法則とは、多くの結果について、20%の要因から80%の結果が生まれるというものです。

Amazonで全売上げの8割を占めるケースも

クッキーカッターの製造・販売を手がけるAnn Clerk Cookie Cuttersのトム・ファンク氏(eコマース担当ディレクター)は、「Amazonは当社が展開する販売チャネル唯一のマーケットプレイスで、おそらく全売上の約80%を占めています」と話します。 

ファンクス氏によると、Ann Clerkの全売上の30%は、オーストラリア、日本、イギリス、アラブ首長国連邦など、消費者がマーケットプレイスにアクセスできる米国外17の市場経由です。

対照的に、ギフト商品のブランド「Just What You Need」を販売している タミカ・リッチー 氏は、eBay(Digital Commerce 360発行 オンライン マーケットプレイス データベースで第5位)Etsy、Amazon など複数のマーケットプレイスで検索、広告用に商品を最適化しています。

大手小売事業者の動き

大手の小売事業者がマーケットプレイスをどのように見ているかを考察することは、非常に有益なことです。このデータによると、ほとんどの小売事業者はマーケットプレイスを利用する価値があると考えています。

米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』の分析によると、売上トップ1000位の小売企業と、 2000 位~3000位の小売企業の半数以上が、マーケットプレイスで販売を行っています

米国のEC売上上位1000社のうち各マーケットプレイスで販売している割合(出典:『Digital Commerce』の北米EC事業トップ1000社データベース)
米国のEC売上上位1000社のうち各マーケットプレイスで販売している割合(出典:『Digital Commerce』の北米EC事業トップ1000社データベース)

米国最大の小売事業者にとって、Amazonは自社に利益をもたらす企業でもあり、圧倒的な強者でもあります

Amazonは、米国最大のオンライン小売事業者であると同時に、米国を拠点とする最大のオンラインマーケットプレイスです。つまり、他のトップ小売企業にとって、競争相手にもマーケティングパートナーにもなり得るということです。

しかし、マーケットプレイスで販売している企業の割合に関するデータは、競合リスクにもかかわらず、米国のほとんどのトップ小売企業が、Amazonのマーケットプレイスでビジネスを行うことを望んでいることを示唆しています

さらに重要なのは、マーケットプレイスで販売する小売事業者は、そうでない小売事業者に比べて、総合的にEC売上が高い伸びを示しているというデータです

米国のEC売上上位1000社のマーケットプレイス販売の有無別EC売上成長率(出典:『Digital Commerce』の北米EC事業トップ1000社データベース)
米国のEC売上上位1000社のマーケットプレイス販売の有無別EC売上成長率(出典:『Digital Commerce』の北米EC事業トップ1000社データベース)

しかし、Amazonでの販売を選択した小売事業者では、大きく異なる戦術を展開することが多いようです。

たとえば、Similarwebの調査によると、Nikeは2019年にAmazonでの直接販売を停止しました。その決定前の2019年第3四半期(2018年12月-2019年2月期)、AmazonにおけるNikeのファーストパーティセラー(1P)の売上高は、同サイトでのNikeの全販売の約36%でした。

これに対し、Johnson and Johnsonは、1Pの販売をすべて第三者(3P)であるPharmapacks.comに委託。これにより、Amazonでの販売メリットを享受しながら、ブランドマネジメントや運営を効果的に第三者に委託することができました。

ニッチなマーケットを見つける 

小売事業者のなかには、自社商品のために特定のマーケットプレイスタイプ、つまりニッチマーケットプレイスを検討したいと考える事業者がいるかもしれません。

ニッチマーケットプレイスとは、特定のカテゴリーで販売する非量販店型のマーケットプレイスのことです。オンラインマーケットプレイストップ100位のなかには、46のニッチマーケットプレイスがあります。 

その例としては、以下のようなものがあります。

  • Houzz(オンラインマーケットプレイス17位):家庭用品や家具を販売
  • Choron24(同29位):ドイツに本拠を置く宝飾品のマーケットプレイス
  • Drizly(同41位):地元の小売店からお酒を配達する

最新のニッチマーケットプレイス

最新のニッチマーケットプレイスは、中古の楽器や機材を扱うマーケットプレイス「Gear Exchange」です。親会社であるSweetwaterのウェブサイトで新しい楽器の販売を促進することを主な目的の1つとする、珍しいビジネスモデルを持っています。アンディ・ロス副社長はこう言います。

これは確かな成長戦略です。sweetwater.comが新商品で知られているのと並行して展開される、ある種パラレルワールドのようなものです。

Gear Exchangeのキーポイントは、売り手がSweetwaterのギフトカードという形で支払いを受ければ、機材の販売に伴う手数料を回避できることです。 

その商品を販売した金額の100%を受け取ることができ、あなたはそれをSweetwaterギフトカードに入れ、そのサイトにある何百万もの商品のいずれかでそれを使用できます。これが購買力の向上です。これこそ、最も費用対効果の高い販売・購入方法なのです。Sweetwaterは、活発な新商品販売者と活発な中古商品販売者の市場を結びつけています。そのつながりがユニークなのです。(ロス副社長)

魅力的なマーケットプレイスを探す 

最終的に、マーケットプレイスを選択することは、ブランド自身にしかできない決定です。そしてそれは、ブランドのビジネス全体にとって何が有効で何が有効でないかを知ることに帰結します。

Paper MartはAmazonから離れたかもしれませんが、マーケットプレイスの世界を完全に放棄したわけではありません。 

「Walmartのマーケットプレイスには残っています」とマクガイア氏は説明。「法外な手数料を取られることもないようです。それに、その方が私たちには都合がいいんです」

重要なのは、Paper Martが4年前にWalmartのマーケットプレイスに参加したのは、そこで商品が転売されていなかったからだということです。

自分たちの顧客と競合しない場所が必要でした。そして、Walmartだけで買い物をする新しい顧客を見つける、まったく新しい機会になりました。自社ブランドと自社商品を展開していますが、我々だけがWalmartのマーケットプレイスで独占的に販売しています。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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