「楽天市場」が強化している「不正レビュー対策」「転売対策」とは? 安心・安全に買い物できる環境作りの取り組み
楽天グループでは、運営する仮想モール「楽天市場」において、「安心・安全なショッピング環境」を提供するための取り組みを継続して行ってきた。近年は、他の仮想モールで問題となっている「不正レビュー」や「転売」に関する対策も強化。消費者にとって、安心して商品が買える仮想モールをめざすとともに、他社との差別化も図る。
楽天がめざす安心・安全なショッピング環境
消費者の不安をプラットフォーム側が解決する
同社コマース&マーケティングカンパニーコマース品質管理部の半井大輔ジェネラルマネージャーは「ECの世界は、楽天市場だけではなく、消費者にとっていろいろな選択肢がある。こうしたなかで、運営者である楽天に求められているのは『良い購買体験を提供する』ことと『嫌な購買体験を減らす、防ぐ』ことの2つではないか」を話す。
同社のめざす「安心・安全なショッピング環境」の実現は、「嫌な購買体験を減らす、防ぐ」ことにつながる。商品の良し悪しもさることながら、「法令違反表記など商品説明が不適切」「商品が偽物かもしれない」「レビューがやらせではないか」――といった消費者の「不安」を、プラットフォーマーである楽天が減らしていくことが重要だ。
そのため、ユーザーが安心して利用できるとともに、期待に沿うことができる環境を整備している。
同社が考える「安心・安全」に関連した重要な要素は4つ。
「事業者/出品者」については、楽天が定めた基準を満たす企業や個人の出店・出品に限定。さらに基準を満たした「商品/サービス」の流通を促進する。
「販売行為/店舗運営」については、ルールを順守した販売行為と倫理観のある運営を促す。そして「ルール」については、網羅性と店舗に理解してもらうための明確さを意識し制定、出店者にはルールを認知してもらった上で理解を促し、実効性を担保する。
出店審査+営業実態を厳格に調査
それぞれの要素について詳しく見ていく。「事業者/出品者」に関しては、まず「入り口」である出店審査を厳格に行っている。販売者の実在確認はもちろんのこと、営業実態も確かめている点が大きいという。
たとえば、最近他の仮想モールで問題となっている「自社では在庫を持たず、出店者がアマゾンなどで代理購入した商品を直接消費者に配送する」、いわゆる「無在庫転売」を行う店舗。半井ジェネラルマネージャーは「きちんと商品を仕入れて、販売しているかを確認することで、無在庫転売の店舗や、名義貸しの出店を出店審査の時点で弾くことができる」と指摘する。
こうした実態審査は、出店審査時だけではなく、出店後に運営への疑義が生じた場合にも実施するという。
中古品販売は独自基準を設定
「商品/サービス」に関しては、販売に関して許認可が必要な医薬品や中古品、酒類などはもちろんのこと、ユーザー保護のため、同社独自で審査が必要な商材や禁止商材を定めている。
中古ブランド品・中古ブランドノベルティー品・中古パソコン・中古医療機器に関しては、古物免許の有無だけではなく、業歴1年以上を取り扱い許可条件としている。
特に中古ブランド品については、真贋(しんがん)を鑑定するマニュアルがあるかどうかもチェックし、偽ブランド品の流通を食い止めている。
CBD含有商品などは慎重な対応
法規制前であっても、人体や生命に危険をおよぼす商材は禁止していている。たとえば、「大麻グミ」による健康被害が相次いだ問題で、大麻に似た合成化合物「HHCH」を含んだ商材の販売自粛を通知するとともに、健康被害恐れがある類似成分「HHCP」も法規制前に禁止商材化し、モニタリングを実施している。
楽天市場ではCBD含有商品を取り扱う際、違法成分であるTHCが含まれていない書類を商品ページに記載する必要がある。ただ、疑わしい商品が出てきた場合でも、その判断には違法成分を所持し鑑定する必要があるため、国内での鑑定は難しい。そこで、大麻由来成分を鑑定するために、アメリカの検査機関「Anresco」との連携も開始した。
「やらせレビュー」は公開の場で警告
「販売行為/店舗運営」については、まずユーザーが店舗の不適切な行為や不適切な商品を通報するためのフォームを実施。昨年からは「根拠がないにも関わらずSDGsをうたう行為」の通報にも対応した。また、人工知能(AI)による景品表示法違反・薬機法違反・不正レビューのモニタリング監視も強めている。
近年、強化しているのは不正レビュー対策だ。X(旧ツイッター)に「不適切レビュー担当」というアカウントを開設。最近は、店舗が自作自演でレビューを投稿するのではなく、外部事業者が「やらせレビューのバイト」をSNS上で募集するケースが増えているためだ。「『楽天レビュー募集中!』といった募集ポストを発見した場合は、X社に通報してアカウント停止をお願いするとともに、公式アカウントが返信して公開の場で警告することで、ユーザーの応募も未然に防いでいる」(半井ジェネラルマネージャー)
こうした地道な活動が功を奏し、「あくまで当社の調査ではあるが、Xで『レビュー募集』などのワードで検索をすると、楽天市場を対象とした、やらせレビューの募集ポストは、競合他社よりかなり少なくなっている」という。
規約、ガイドライン制定でルール厳格化
運営する仮想モール「楽天市場」において、「安心・安全なショッピング環境」を提供するための取り組みを継続して行っている楽天グループ。同社が考える「安心・安全」に関連した重要な要素の4つ目は「ルール」。楽天市場の出店規約をもとに、各種規約やガイドラインを制定している。最近の例では、定額課金を伴う電子機器などが増えてきたことを受けて、取り扱いガイドラインを決めた。
たとえば「5万9800円の会話AIロボットを利用するのに、ソリューション代金として月々1500円必要」という商品。一部でユーザーとの間にトラブルが発生していたことから、こうしたサブスク型商品については「別途楽天市場外での課金契約が必要となる」といった「必須記載事項」を商品ページに明記することを順守するよう求めている。
税関や企業とも連携し取り締まり強化
また、外部機関や企業との連携も進めている。模倣品対策としては、2012年から権利者との提携で権利侵害取り締まり活動を開始。現在では1750以上のブランドが鑑定可能となっている。「物の善し悪しは当社では判断できない部分もあるので、ブランド権利者からの申し出や確認をベースにしながら、店舗にも事実確認を行い、権利侵害品が流通しないようにしている」(半井ジェネラルマネージャー)
さらに、2014年から実施してきた財務省関税局との連携に関しては、2023年12月に覚書を締結。楽天と関税局は意見交換の場を設けるほか、楽天と税関による情報交換を強化し、模倣品業者の特定と取り締まりを行うというものだ。
メーカーとの連携で推し進める3つの禁止
近年、強化を進めているのは、メーカーと連携した転売対策だ。半井ジェネラルマネージャーは「法律で規制されていない領域なので、取り組み自体が難しい」としながらも、「消費者心理としては『買いたいものが買えず、適正価格より高く売られている』ことへの不満は大きい」ことから、3つの観点から対策を進めている。
①便乗値上げの禁止
1つは自然災害などに乗じた便乗値上げの禁止。これは、コロナ禍におけるマスクや消毒液などの転売がわかりやすい例だ。
②食品の転売禁止
2つ目は、食品の転売禁止。楽天市場においては、小売店で一般消費者向けに販売された食品の販売行為を禁じている。食品は保管状態に問題がある恐れがあるほか、購入後ユーザーに届くまでの日数によっては品質に影響がおよぶ可能性があるなど、健康被害が生じる危険性があるからだ。
③メーカーが転売禁止を公表している商品の転売規制
さらに3つ目として、メーカーが転売禁止を公表している商品の転売も禁じている。2021年8月には、食品メーカー12社との取り組みを開始。各社からの反響もあり、提携先は今年2月時点で50社まで拡大している。
たとえば、鎌倉紅谷の「クルミッ子」という菓子は、人気商品のため店頭でも品薄が続いている。「正規価格の倍以上で売られているケースもあった。そのため、店舗側に仕入れルートを確認し、小売りで買った商品を転売していることが分かった時点で出品を取り下げさせた」(半井ジェネラルマネージャー)
メーカー各社とは定期的に会合を行っており、「転売とみられる事業者から購入した消費者からの問い合わせが減った」という好意的な声が出ている。
低評価レビューは減少傾向
こうした取り組みにより、楽天市場におけるショップレビューの平均点はここ4年ほどで上昇しているほか、低評価のレビューを投稿されるショップの率も減少傾向にあるという。半井ジェネラルマネージャーは「“嫌な購買体験”を起こさせない仕組みを作るために、AIを活用したモニタリングを進めていきたい」と展望を語る。
国内でも「製品安全制約」スタート
昨年には、リコール製品や安全ではない製品から消費者を守るための日本版「製品安全誓約」がスタートした。販売される製品の品質を高めていくことは、プラットフォーマーにとって喫緊の課題といえる。
品質改善につながる仕組みづくりに意欲
半井ジェネラルマネージャーは「楽天だけで対応するのは難しいので、低評価レビューを分析して『商品の何が良くないのか』『どこを解決しなければいけないのか』を割り出し、販売する事業者やメーカーと連携することで、品質改善まで踏み込んでアドバイスできる仕組みを作っていきたい」と意欲を語る。
※画像、サイトURLなどをネットショップ担当者フォーラム編集部が追加している場合もあります。
※見出しはネットショップ担当者フォーラム編集部が編集している場合もあります。
「通販新聞」について
「通販新聞」は、通信販売・ネット通販業界に関連する宅配(オフィス配)をメインとしたニュース情報紙です。物品からサービス商品全般にわたる通販実施企業の最新動向をもとに、各社のマーチャンダイジング、媒体戦略、フルフィルメント動向など、成長を続ける通販・EC業界の情報をわかりやすく伝え、ビジネスのヒントを提供しています。
このコーナーでは、通販新聞編集部の協力により、毎週発行している「通販新聞」からピックアップした通販・ECのニュースや記事などをお届けしていきます。
→ 年間購読を申し込む(通販新聞のサイト)
→ 通販新聞の過去記事を読む(通販新聞のサイト)
→ 通販新聞についてもっと詳しく知りたい