買い物体験向上に直結する決済フロー改善4つのポイント。カゴ落ちしても実店舗で購入などビジネス全体のCVをアップさせた事例
ECビジネスを成功させるためには、商品開発や販促だけでなく、決済フローの利便性向上、カゴ落ちした顧客へのアプローチなども大切です。今回は、こうした点を工夫してコンバージョンアップに成功している米国事業者の事例を解説します。
コンバージョン率を向上させる4つのチェックアウト戦略
家具販売事業者の米American Freightは、顧客にとって見やすく利便性の高い決済フロー、ゲスト購入しやすい仕組みなど、いくつかの施策を通じて顧客の買い物体験を向上させています。
American Freightの売り上げの多くが実店舗です。その背景には、ECサイトの影響があげられます。消費者は電化製品やソファなど、大きな商品を購入する前に、オンラインで商品を確認する傾向にあるからです。
American Freightのラウリ・ジョッフェ氏(チーフマーケティングオフィサー)は、米国のEC専門誌『Digital Conmerce360』の取材で次のように話しています。
American FreightはECサイトでの買い物体験の改善を進めており、一部のお客さまに対しては、ECでの購入を後押しするためにいくつかの施策を講じています。(ジョッフェ氏)
American Freighが買い物体験の改善で実行している施策の1つに、チェックアウト(顧客の決済フロー)の改善があります。そして、採用している戦略がビジネス全体のコンバージョン率の改善につながっているのです。たとえば、オンライン上でカゴ落ちした顧客が、その後実店舗で商品を購入するといったケースです。
1ページで決済を完結させるレイアウト
チェックアウトの全プロセスを1ページで完結させることは、「コンバージョン率を向上させる上で最も重要」だとジョッフェ氏は説明しています。
American FreightのECサイトでは現在、配送先住所、請求先情報、支払い情報をすべて1ページにまとめています。約1年前まではそれぞれ別々のページで表示していましたが、それを改善したのです。
従来のECサイトの決済フローでは、チェックアウトがお客さまにとってかなり長いプロセスになっていました。商品を届けるために、住所情報、決済手段など、さまざまな顧客情報が必要だからです。決済フローにおいてお客さまがチェックアウトの進行状況を可視化できるようにしました。どのステップの入力が完了し、どのステップがまだ残っているかをすべて1ページで確認できる仕組みにしたのです。(ジョッフェ氏)
American Freightは、顧客がチェックアウトにかかる時間を短くし、できる限りシンプルな構造にすることを追求しています。
ゲスト購入を促進する
顧客に自社ECサイトで購入するためのアカウント作成を促し、アカウント情報を通じて顧客情報を得ようとする小売事業者は少なくありません。ジョッフェ氏によると、消費者はアカウントを作成せず「ゲスト」として目当ての商品のチェックアウトを好む人が多いと言います。
その点、American Freightでは、顧客データを集めることよりも、ECサイト内でのユーザーエクスペリエンスを向上させることにこだわっており、ゲスト購入を推進しています。(ジョッフェ氏)
消費者がゲスト状態でのチェックアウトを選ぶ理由は、配送関連以外の個人情報を入力したくない、小売事業者に自分の個人情報を共有したくない、などさまざまです。
American FreightのECサイトでは、購入者のうち約60%が、ゲスト状態でのチェックアウトで買い物しています。たとえ小売事業者が、アカウント登録されないことで今後の購入を促すための顧客情報が得られないとしても、お客さまが望む方法でチェックアウトできるようにすることが望ましいと言えます。(ジョッフェ氏)
支払い手法を多くそろえる
American Freightは、チェックアウトページに「PayPal」「ショッピングローン」「クレジットカード」「Google Pay」「Apple Pay」など、利用可能な支払い方法をドロップダウンで選択できるようにしています。
顧客は一度にすべての支払いオプションを確認することができ、任意の支払い方法を選択して詳細情報を確認できるように設計しているとジョッフェ氏は説明しています。
支払い方法のなかでは、「Apple Pay」と「Google Pay」は早い段階で導入しました。モバイルからワンクリックで決済できる支払い方法だからです。American FreightのEC売上に占めるこれらの決済手段の割合は増加しています。(ジョッフェ氏)
カゴ落ちした顧客を丁寧に手当てする
カゴ落ちした顧客には慎重にアプローチしています。ジョッフェ氏によると、カゴ落ちした顧客の多くは店頭で買い物をし直すそうです。
カゴ落ちしたことを通知するメールに加えて、パーソナライズしたメールも送信しています。
メッセージはパーソナライズしています。カゴ落ちの履歴を踏まえて、個々のお客さまに何か欲しいものがあることを伝えています。たとえばお客さまから「カートに何を入れたか」などの質問があればテキストで返信し、カスタマーサポートのスタッフがお客さまとやりとりします。(ジョッフェ氏)
オンライン上とはいえ、このやり取りは実際の会話に近いため、コンバージョン向上につながる良い結果を生んでいるとジョッフェ氏は話しており、この顧客コミュニケーションを他の小売事業者にも推奨しています。