EC売上アップの鍵は決済にあり! 承認率改善、不正対策、海外展開に効く決済ソリューションとは
「決済」はECにおける大きな要素でありながら、プロフィットよりもコストの印象が強いことは否めない。しかし、グローバル決済ソリューションを提供するAdyen Japanは「決済こそ売り上げを伸ばす原動力」だと力説する。
Adyen Japanは決済を最適化することで「承認率改善による売上アップ」「不正対策と売上最大化の両立」「海外展開による売上アップ」が実現可能だと話す。Adyen Japanの営業統括本部長 佐野匠氏と、カスタマーサクセス統括本部長の東隆三氏が解説する
膨大な決済データが売上アップに貢献
Adyen(アディエン)は決済代行、不正対策、海外決済までをカバーするソリューションを提供する企業だ。オランダのアムステルダムに本社を置き、世界中に28の拠点を持つ。グローバルにおける年間の取引流通総額は日本円にして約150兆円にのぼり、日夜膨大な決済トランザクションを処理している。
Adyenの強みは「通常3社にまたがる決済のプロセスを1社でまとめられること」(佐野氏)だ。クレジットカード決済が実行される裏には、複数の金融機関などによる複雑なデータのリレーが存在する。
加盟店となるEC事業者の対面には決済代行会社(ゲートウェイ)があるが、ここから直接クレジットカードブランドやカード発行会社(イシュアー)に行くわけではない。間に不正対策や、アクワイアラーと呼ばれるクレジットカードやデビットカードでの決済承認のリスクエスト処理を行う銀行系の会社を挟む。その先にVISAなどのクレジットカードブランドがあり、さらにその先でエポスやセゾンといったカード発行会社につながり、決済の承認が行われるという流れになる。
一方、Adyenの決済ソリューションでは、ゲートウェイ、不正対策、アクワイアラーをまとめてAdyenが担う。
決済代行会社、不正対策の会社、アクワイアラーなど、3社で行っていたプロセスをAdyenだけでカバーできる。メリットは、1つにまとまることで中間コストを排除できることと、トラブルシューティングが早いこと。決済にまつわるプロセスが複数あると窓口も分かれる。するとトラブルがあった際に原因の特定が難しくなりがちだ。
また、通常アクワイアラーが持つデータは加盟店の決済データには届きにくく、分析などに活用することが難しい。Adyenはアクワイアラーの役割も担っているため、この部分のデータも保持している。これにより決済承認率の改善や、不正対策の最適化を実現できている。(佐野氏)
決済承認率はアップできる!
佐野氏は、売上貢献インパクトが大きい決済周りの最適化の1つに「決済承認率の改善」をあげる。ユーザーがECにおいてクレジットカード決済を行う際、カード会社による決済承認(オーソライゼーション)が行われる。この際、決済エラーとなってしまう取引も多くあると言われている。
EC事業者はCV獲得に向けて、集客に工夫を凝らし、ランディングページのオプティマイゼーションを行うなどあらゆる最適化に取り組んでいる。しかし、いざ決済という段階で取りこぼしが起きている可能性がある。この部分は決済ソリューションによって解決できる。(佐野氏)
クレジットカード決済がエラーとなる理由はさまざまあるが、ソリューションによって承認率を高められるポイントの1つとして「決済時のカード会社へのデータ受け渡し」の最適化があるという。
カード会社のオーソライゼーションは、実はデータフォーマットが統一されていない。たとえば、あるカード会社は有効期限年の受け取りフォーマットが4桁だが、別の会社では2桁というように、会社によってデータ処理にクセがある。カード会社ごとにデーターフォーマットを出し分けるのはなかなか難しく、定型の形でデータを流した時に「その形式では受け取れない」「不正と認識する」という形でエラーとなるケースが実は非常に多い。(佐野氏)
Adyenではこうしたエラーを最大限防ぐ仕組みができており、決済エラーをすくい上げているという。国内の事例でいうと、シューズブランドの「On Tokyo」では、2023年にAdyenのネットワークトークンなどを導入し、承認率が向上。売り上げが900万円以上アップした。
当社では年間150兆円におよぶ決済トランザクションを処理している。世界中のカード発行会社のデータフォーマットのクセを分析し、マシンラーニングを用いてフォーマットをカスタマイズしてデータを投げている。これによって決済の承認率の底上げを実現している。相手方となるカード会社にとって一番受け取りやすいルートに合わせ、新しい情報を何回も投げ、改善を実現している。(佐野氏)
不正対策は決済承認率とのバランスが重要
決済に関わる部分では、不正対策もEC業界全体で喫緊の課題となっている。不正の手口は年々高度化・複雑化しており、日本政府は不正防止に向けすべてのEC事業者に対し、2025年3月末までの「3-Dセキュア2.0」の導入を義務付ける方針を示している。
一方で、不正対策は闇雲に強化すれば良いわけではない。絞ることばかりに目が行ってしまうと、弾かなくて良い取り引きまで弾いてしまい、決済承認率を激減させてしまうことにもつながりかねない。不正の削減と決済承認率は、絶妙なバランスを取ることが重要になってくるということだ。ではそのバランスをどうやってとるか。Adyenでは「データ収集」と「チューニング」がポイントだという。
不正対策はツールの導入や、3-Dセキュア2.0の導入で解決、というわけにはいかない。まず不正対策はこの先も永遠に続いていくとご理解いただく必要がある。そのうえで、現状把握ができていないと対策の打ちようがない。
まずはデータとしてどの金額帯、どの国のどんなカードの承認率が落ちているか、また不正の割合が上がっているか、ということをリアルタイムでウォッチしていかなくてはいけない。状況は常に変わるため、その都度チューニングを繰り返していく必要がある。(佐野氏)
Adyenでは不正の削減と決済承認率の最適なバランスをとるための支援も行う。偽陽性を20%削減、チャージバック率を27%低下した事例もあるという。これを実現するのがやはり「データ」と「チューニング」で、Adyenの膨大なトランザクションデータに基づくマシンラーニングが支えている。
不正検知はいったんルールをセットして完了ではない。Adyenのある加盟店では、Adyen側で持っている決済のデータと、加盟店側で持っているデータを組み合わせて日々分析している。そこから必要に応じてルールのカスタマイズを行う。
こうした取り組みを地道に続け、結果として不正でブロックする割合が常時5%以下となった。全体的にクリーンなトランザクションを送れるようになり、全体の承認率の底上げにも貢献できている。(東氏)
海外決済も一本化で柔軟な海外展開が可能
決済は海外展開の可能性も広げる。海外展開を検討する際に障壁として立ちはだかるのが、国ごとに決済周りのあらゆる点が異なることだ。決済手段、通貨、端末、サポート、振込サイクル、さらには各国の法律や税制、商習慣などの理解など、決済事業者に求められる知識は多岐にわたる。Adyenは、統一された決済基盤で多様な決済手段や通貨にも対応でき、あらゆるデータを1つにできる。
これまでは展開国ごとに、決済代行のパートナーと契約するのが当たり前だった。ただ、データも集めにくく手間ばかり増えてしまう。Adyenに任せていただければ世界中対応できる。契約も1つで済み、振込みサイクルも1つで済む。オペレーションも楽になり経理部門にも安心していただける。また為替の部分でのコストダウンにもつながってくる。(佐野氏)
Adyenの決済ソリューションを活用した海外展開の例としては、前述のシューズブランド「On Tokyo」の事例がある。スイス発祥の「On」はアジア太平洋地域初の旗艦店「On Tokyo」を2022年にオープンした。その際、Adyenの対面決済システムを採用。モダンなストアデザインにフィットするレジ無し決済を取り入れた。
また、実店舗の決済とオンラインの決済を統合し、代引きなどさまざまな決済方法を提供しつつ、両チャネルの取引を1つのプラットフォームでコントロールすることを実現した。
海外展開のECと実店舗の決済トランザクションを1つの管理ページで管理できる。Adyenの決済ソリューションは展開国を増やすスピードを上げていく部分を強力にサポートできる。(佐野氏)
このようにAdyenでは決済ソリューションを通じたECの売上アップをサポートしている。
決済ソリューションは、承認率の改善や不正対策における偽陽性の低減など、EC事業者の売上利益に直接良いインパクトをもたらすことができる。こうした部分に手が出せていないEC事業者は多いと思う。ぜひこうした部分にも目を向けてチャレンジしてほしい。(佐野氏)