赤松 節子[執筆] 11/20 8:00

企画やアプローチには理由や目標売上があり、そのためには対象顧客を抽出することが重要――これが当たり前だと考えている人は多いのではないでしょうか。けれど、毎回過去の実績を見ながら試行錯誤するなかで、「企画の度に対象の顧客を抽出するのは面倒」「その時間を企画や制作の時間に充てられたら」と思ったことはありませんか? こう考えている担当者の方には、セグメントした顧客を一定期間固定化することお勧めします。毎回企画に合わせて顧客を抽出していた時間を別の作業に充てられるほか、何よりもCRMの観点で見た場合により大きなメリットを発揮できます。それはどのような方法なのか、解説していきます。

チームスポーツと進学校の例に見るセグメントの重要性

日本が優勝した2023年3月の「World Baseball Classic(ワールド ベースボール クラシック)」。この時のスターティングメンバーは優勝までの7試合、1番センターのラーズ・ヌートバー選手から6番ファーストの岡本和真選手まで、ほぼメンバーを固定して戦っています。

トリノリンクス 都度販売 2023年ワールドベースボールクラシックのスタメン
2023年3月の「World Baseball Classic」のスターティングメンバーについて

これは、監督以下首脳陣が出塁率、走力、打率、長打力、打点率、犠打率、守備力など、各種指標をもとにスタメンを決めているのでしょう。野球に限らず、バレーボール、サッカー、ラグビー、バスケットボールなどチームスポーツの世界では同じようなデータに基づいたメンバー決定が行われ、スタメンと控えの選手では出場時間に大きな差が生まれています。

また、進学に力を入れている学校はどうでしょうか。学生の能力によってクラス分けをし、目標に合わせた最適な学習の機会を提供する学校が増えていると聞きます(もちろんそのようなクラス分けをしていない学校もあります)。会社でも能力の高い人材、期待値の高い人材には成果の大きい仕事を任せるケースが多いのではないでしょうか。

スポーツも受験も会社も、成果を最大化するために実績を識別し、継続した機会を用意することが合理的だと考えているのではないでしょうか。スポーツにはシーズンがあり、学業には学期がある。この期間中の各選手や生徒の能力を正しく評価し、メンバー選定やクラス分けしていると考えられます。

これをCRMマーケティングに適用したどうなるでしょうか?

評価期間はどのくらいにすれば良い?

顧客グループにあたるセグメントを固定するために、ある一定期間における顧客購買動向を確認する必要があります。大切なのが、評価期間です。スポーツで言えばシーズン中の業績でスタメンが決まり、選手個人としては年俸が決まります。学業では、各テスト結果の積み上げ、学期や学年のタイミングでクラス替えをします。

小売りの場合、販売商品によって異なりますが、季節によって消費者が必要とするタイミングが変わります。評価期間は3か月では短すぎ、1年では長いと言えます。お勧めは半年間、顧客のグループを固定すること。6か月という期間のなかで各顧客のLTVを最大化するために、どのようにセグメントごとの顧客にアプローチするか、シナリオを立てた企画が組みやすくなるでしょう。

セグメントを決める3つの指標

顧客を正しく識別するためには、定めた評価期間のなかで「継続率」「購買力」「購入間隔」の3つを大きな指標にすると良いでしょう。

顧客の継続率

評価期間内に行ったアクションの積み上げから、1人ひとりの継続率を算出します。下のグラフは、ある企業の継続率を算出した資料です。上位客ほど継続率が高く、低くなるにつれ休眠化が進んでいます。顧客グループによって継続率が異なるのがわかるでしょう。

トリノリンクス 都度販売 ある企業の顧客の継続率について
ある企業の顧客の継続率。顧客グループによって継続率がまったく異なる

顧客の購買力

評価期間中における、継続率で分けた顧客1人ひとりの受注金額を見ることで、各顧客の購買力がわかります。

トリノリンクス 都度販売 顧客の購買力について
顧客の購買力について。継続率で分けた顧客1人ひとりの違いを識別する

都度実績を確認し判断するのではなく、評価期間を決めてそのなかで継続率、購買力、購入間隔から顧客の優劣(評価)を判断します。算出した評価を過去から積み上げていくことで、CRMに重要な「継続」を加えた優劣のセグメント分けを行うことが可能になります。

顧客の購入間隔

定期契約販売で売り上げの見込みが立てやすいのは、契約上購入サイクルが決まっているためです。これが大きなメリットでもあり、「都度販売」が敬遠される理由の1つでもあります。

しかし、購入のタイミングがわかったらどうでしょうか。同じ購入タイミングの顧客をグルーピングして企画・アクションを行えば、ヒットする確率は上がります。とはいえ、異なる顧客の購入間隔を見つけるのは容易ではありません。

そこで重要になるのが、「評価期間」と「継続率」です。評価期間内における顧客の継続率と購買力から、顧客の購入タイミングが見えてきます。コンスタントに購入しているのか、前の評価期間よりも購入間隔が離れているのか――。「都度販売」でも、おおよその継続率の高さによって購入間隔の近いグループに分けることが可能です。

顧客セグメントを固定することのメリットとは?

野球では、主力バッターは少々のスランプでもスタメンに起用されることが多いですが、それは他の選手より貢献確率が高いからです。これもデータに基づいた判断だと考えられます。

顧客セグメントも同様で、貢献度の高い(継続率の高い)顧客にはどんどん商品や企画を提案し、企業の良さを知ってもらいながら利益確保をめざします。少し購入間隔が空いてきた(継続率が落ちてきた)顧客には、復活してもらうために購入しやすい商品や企画を提案し、できるだけ顧客との接点を持てるようにします

また、継続率の低い顧客は購入率も低いため、広告費用をかけてアプローチするなど、顧客の購買力がわかることで、それまでの戦略に「誰に」が加わり、より企画のイメージが作りやすくなります。

具体的なメリットについて解説します。

1. 効果的・現実的なCRM

顧客を正しく識別できると、「上位客が未購入」「購入がないと休眠客にランクダウンしてしまう」といった状態がわかり、対象の顧客にだけアプローチすることで効果的かつ現実的なCRMが可能になります。

2. 大幅なコストダウン

もし、6か月間セグメントが変わらなければ、あらかじめ6か月分のプランニングができます。連続したアプローチや個々の施策効率改善は前述の通りですが、製作や資材などをまとめて発注できれば、大幅な経費削減が見込めます

3. シナリオ事例

評価期間を6か月とした場合、下の図のように6か月の連続シナリオを組むことができ、施策効率と経費効率を引き上げることができます。

トリノリンクス 都度販売 6か月の連続シナリオの例
6か月の連続シナリオを設計できることで、試作効率と経費効率を向上できる

上記以外のセグメントを固定するメリットは、評価期間(6か月)が終わる前に各セグメントの未購入者がわかることです。優良客のセグメントにいる未購入者と休眠客のセグメントにいる未購入者がわかったら、どちらにどれくらいの費用をかけてアプローチをするでしょうか?

評価期間が終わるまでに購入してもらうためのシナリオを基にした企画が立てやすくなることで、必然的に評価期間(6か月)でのLTVを最大化する合理的な戦略立案につながるのです。

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