EC担当者の9割は(きっと)見たことがないネットショップの本当の裏側、データセンターの内部に潜入!
「ネットショップの裏側」をテーマに、色んなお店やサービスの裏側を探検しているこのコーナー。今回は「データセンター」です。データセンターとは絶えることなくサーバーを動かすための、さまざまな設備を持つ施設のこと。え? 商品はないのかって? いやいや、お店のサーバーを守り続けるデータセンターこそ、本当のネットショップの裏側じゃないですか! 写真◎吉田 浩章
……なんて言ってみましたが、実は「データセンターって…なに?」という状態だった私。お話をいただいたときは不安でした。でも、われわれ取材班に交通費とお弁当を支給してくださるとおっしゃるのです! 連載11回目にして、ついに企業さまからご招待を受ける日がやって来ました! うれしい!
というわけで、はりきってやって来たのは福島県白河市。ここはIDCフロンティアさんの白河データセンター。
IDCフロンティアさんは、データセンターとクラウドサービスを提供している会社で、首都圏、北九州など、全国に9つのデータセンターを運営しています。Yahoo! JAPANグループなのでYahoo!ショッピングに出店している方にはゆかりのあるデータセンターです。
実は、今ご覧のネットショップ担当者フォーラムのサーバーもIDCフロンティアの有明データセンターにあるんです。(詳しくはWeb担当者Forumのこちらの漫画をご覧ください)。
ここ白河データセンターは、2012年10月に1号棟が竣工し、2014年6月に2号棟が稼働しました。約6万台のサーバーを収容できる能力があるそうです。
外気空調データセンターって何?
データセンターの戦いは熱との戦い。サーバーは熱を出しますが、熱は故障の原因にもなるので、サーバーを設置している部屋の冷却が必要です。従来型のデータセンターは、大きなエアコンで部屋全体をガンガン冷やしていますが、この建物はまったく別のアプローチを取っていて、建物全体がエアコンのようになっているのです。「外気空調データセンター」と言うらしいのですが、どういうことなんでしょうか? IDCフロンティアの山下さんと市川さんにお話をうかがいました。
建物全体が空調機みたいに呼吸しているんですね。そういえば外観もエアコンみたいです。
データセンターのエネルギー効率を表す「PUE」(Power Usage Effectiveness)という指標で、白河データセンターは約1.2という値だそうです。これは、サーバーが消費する電力1に対して、それ以外の空調や照明などの消費電力が0.2という意味。一般的なデータセンターはPUEが2.0くらいと言われているので、白河データセンターはエネルギー効率がとても良いデータセンターなんですね。
ところでなんで場所が白河だったのでしょうか?
「まず、外の空気を取り入れますから冷涼な気候であることですね。次に、電力供給事業者を分散する必要があることから、データセンターの集中する東京電力管内を避け東北電力管内であること。さらに、ここはネットワークの応答時間が3.5ミリ秒で東京郊外と同等です。白河には新幹線や高速道路などの社会インフラが走っているためネットワークの接続拠点にも近く、応答時間を速くするには有利なんです」(山下さん)
データセンターは災害時にも動き続けなければならないので、新たなデータセンターを作るには、地盤や災害の危険度など、さまざまな条件をクリアしなければなりません。また、各地のデータセンターは光ファイバーでつながっているけど、光ファイバーは新幹線や高速道路に沿って敷設されていることが多いので(知らなかった!)、両方とも近くにある白河は、データセンターを作るのにピッタリな場所だったようです。
呼吸するデータセンターの秘密
では実際に中を見せてもらいます!
一瞬たりとも電気を途切れさせないための備え
データセンターの使命と言えば、サーバーが稼働し続けられるように、とにかく電気を途切れさせないこと。そのための無停電電源装置と非常用自家発電機を見せてもらいました。
ほかにも、火災に対する備えとして超高感度煙検知器があちこちに設置されているそうです。これは、「コードのビニール被覆が熱くなって焦げてきました」程度の、ごくわずかな煙まで検知するそうです。
消火はサーバーを傷めない窒素ガス消火設備が用意されていますが、幸い、実際消火が必要になったことはありません。
サーバーはまだまだ増やせます
広ーいデータセンター内を歩いてきましたが、ほとんど人の気配がしません。データセンターってそれぞれの企業のシステム担当者の人が出入りするのかと思いましたが、サーバーの設定やエラーの監視などはほとんどリモートで対応できるそうです。
一般の人が絶対に入ることができないこの場所。ネットワークの秘密基地を探検する機会をいただいて、これまでになく何か神聖なものに触れるような感覚。頑丈なセキュリティーの向こうに、どんな世界が広がっているのか……とにかくドキドキな取材でした。
写真の通り、どこもかしこも無駄のないスッキリとしたデザインで、まるで宇宙船のようなセンター内。建物全体が呼吸をしているようなその場所で、お客さまのデータを確実に守るため、365日24時間、徹底した管理がなされていました。
「設計・施工・空調など、それぞれの領域のプロフェッショナル企業と弊社で、それぞれ知恵を出し合ってできた建物なんです」
山下さんのこの一言に、日本の高い技術の集大成を感じました。
私たちが普段、ネット上でたくさんの情報を得られるのも、ネットショッピングできるのも、SNSで友だちとつながれるのも、“止まらない”ことを使命に、絶えず動き続けるデータセンターがあってこそ。
データセンターに未来を支えてもらって、もっともっと生活が豊かになるようなサービスがネット上に生まれてほしいなと思います。
動画でもレポートしています。こちらもご覧ください!