「安さ」よりも「利便性」を重視するイマドキの消費行動。1万人調査でわかったこと
イマドキの消費者はどんな基準で商品を購入するのだろうか。ネットショップの売り上げを伸ばすには、消費動向を把握することは必要不可欠なこと。野村総合研究所が1万人を対象に行った調査によると、「利便性消費(購入する際に安さよりも利便性を重視)」の割合が、2000年の37%から2015年には43%へと増加したことがわかった。
手軽で便利なスマートフォンの普及、忙しい共働き世帯の増加が1つの要因のようだ。「価格にこだわらず、便利な手段を利用して欲しいものを買う」という消費スタイルが増えている――野村総合研究所はこのように指摘している。
スマホの普及などで価格にこだわらない消費者が増加中
野村総研が導き出した「4つの消費スタイル」分布の推移を見てみよう。調査方法はこちらを参照
「プレミアム消費」とは、自分のお気に入りにこだわり、プレミアム(付加価値)に対してしっかりと対価を払うという消費スタイル。「徹底探索消費」は、商品に対するこだわりがあり価格を重視するスタイルで、多くの情報を集めて気に入ったものを安い価格で購入しようとする。
「利便性消費」は、商品に対するこだわりよりも、価格の安さに対するこだわりもない消費スタイル。商品や価格を重視しない代わりに、利便性を重視する。「安さ納得消費」は、商品に対するこだわりはなく価格の安さで評価する消費スタイルを意味する。
「利便性消費(購入する際に安さよりも利便性を重視)」の割合は、2000年の37%から2015年には43%へと増加。一方、価格重視の「安さ納得消費」は2000年と比べて16ポイント減少し、24%となった。
気に入った付加価値には対価を支払う「プレミアム消費」は2009年調査と比べるとほぼ横ばい。「徹底探索消費」は2012年と比べて3ポイント減の11%となった。
今回調査でわかったのは、「安さ重視」の消費傾向が減少し、「プレミアム消費」は横ばい傾向だったものの、安さよりも利便性を重視する「利便性消費」が拡大傾向にあることだ。
野村総研によると、スマホの普及、忙しい共働き世帯が増えたことにより、「価格にあまりこだわらず、便利な手段を利用して欲しいものを買う」というスタイルを採用する人が増えたと考えている。
世帯年収が高くなるほど「利便性」を重視する傾向にある
では、消費スタイルの変化を世帯形態別、世帯年収別に見てみよう。
調査によると、2015年の共働き世帯は54.7%で、過去に野村総研が行った調査で最も高い(2012年は49.2%)。共働き世帯の世帯年収構成では、1000万円以上が6.8%、500万以上1000万年未満が63.8%。共働き世帯では年収500万円以上が70.6%にのぼる。
世帯形態別の消費スタイルの割合は、夫婦共働き(両方とも正社員)で約5割が利便性を重視する「利便性消費」に分類。安さを重視する「安さ納得消費」は約20%で、他の世帯形態のなかで最も低い。
世帯年収別の消費スタイルの割合を見てもその傾向が顕著。年収が増えるにつれて「利便性消費」の割合が増加。一方、「安さ納得消費」は減少傾向にある。
野村総研によると、「利便性消費」は年収の高い共働き夫婦・双方が無職の夫婦であるシニア層に多く分布しているという。
全体調査による「基本的な消費価値観」でも、価格重視の傾向は減少傾向にあるようだ。「とにかく安いものを買いたい」とする志向は継続的に減少。「品質」「安全」「自分のライフスタイルへのこだわり」も減少傾向にあるという。
野村総研は近年の消費スタイルの変化を次のようにまとめている。
- 「とにかく安いものを買いたい」とする低価格志向は減少傾向
- 「商品を買う前にいろいろ情報を集める」「よく検討してから買う」などの情報収集志向は2009年をピークに頭打ち。
- 「利便性消費」(こだわりが薄く手に入りやす物を買う(価格は高くてもよい)というスタイルが大きく増加
- 「利便性消費」は比較的年収の高い共働き夫婦かシニアが多い。特に「お金はあるが時間はない」共働き世帯が2012年から2015年にかけて増加していることが、利便性消費の拡大に関係している。
調査方法
- 調査名:「生活者1万人アンケート調査」
- 実施時期:2015年7~8月
※同様の調査を1997年、2000年、2003年、2006年、2009年、2012年にも実施 - 方法:訪問留置法
- サンプル抽出方法:層化二段無作為抽出法
- 対象:全国の満15~79歳の男女個人
- 有効回答数:1万316人