健康食品、雑貨、化粧品で比較広告をするときの注意点
前回の連載では、“比較広告とは何か”をご紹介しました。景品表示法での比較広告のあり方ですので、基本的概念としておさえておくと良いでしょう。今回は健康食品、雑貨そして化粧品でも比較広告は可能なのか。そしてその注意ポイントを整理します。
健康食品や雑貨は通常の要件を満たせば比較広告は可能
健康食品の場合、「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日厚生省薬務局長通知:通称46通知)にある通り、「成分」「剤形」「用法用量」「効能効果」の4つの視点からみて「無承認無許可医薬品」と判断された場合、薬機法に抵触します。
雑貨の場合も「無承認無許可医療機器」と判断される場合は薬機法に抵触します。
そのため、通常は健康食品や雑貨は薬機法で規制されるものではなく、化粧品のルールとしておなじみの「医薬品等適正広告基準」の制限は受けず、比較広告行うことそのものは「可能」と言えます。
たとえば、健康食品の比較広告の例として「含有成分量の比較」を良く見ます。これは前回の連載でお伝えした、
- 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
- 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること。
- 比較の方法が公正であること
の3要件を満たしているのであれば、手法としては可能です。ただし、試験・調査によって得られた結果で、専門家、専門団体もしくは専門機関の見解、または学術文献など、その根拠が客観的なものである必要があります。
たとえば、「※当社調べ」といった注釈のある自社データの場合であればそれが客観的なものであるかがポイントとなります。自社データも根拠となりえますが、客観的に実証されているとはみなされない場合もありますので、注意が必要です。
化粧品は「医薬等適性広告基準」により比較広告に対し厳しい規制
化粧品の場合は「医薬品等適正広告基準」で以下のように定められています。
【基準9】
他社の製品のひぼう広告の制限
医薬品等の品質、効能効果等、安全性その他について、他社の製品をひぼうするような広告は行わないものとする。
この基準9の留意事項として、
(1)ひぼう広告について
本項に抵触する表現例としては、次のようなものがある。ア 他社の製品の品質等について実際のものより悪く表現する場合
例: 「他社の口紅は流行おくれのものばかりである」イ 他社のものの内容について事実を表現した場合
例: 「どこでもまだ××式製造方法です」(2) 漠然と比較する場合について
漠然と比較する場合であっても、基準3(6)に抵触するおそれもあるので注意すること。
- 参考:【基準3(6)】
効能効果等又は安全性を保証する表現の禁止
医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実であることを保証をするような表現をしないものとする。(3) 自社製品の比較広告について
製品の比較広告を行う場合、その対象製品は自社製品の範囲で行い、その対象製品の名称を明示した場合に限る。しかし、この場合でも説明不足にならないよう十分に注意すること。
とあります。
つまり、化粧品では他社製品の誹謗および他社製品と比較することそのものが不可ということになります。特定の会社の名前をあげたり、また一部を伏せ字にしたりすることはもちろん不可ですし、A社、B社などといった形で見せる方法も不可です。
そしてそれだけではなく、『漠然と比較する場合』も制限されています。
たとえば、「一般のコラーゲン」「これまでのヒアルロン酸」といった“一般的な”“これまでの”という表現を用いることも不可になる可能性があるということも重要なポイントです。
併せて、日本化粧品工業連合会「化粧品等の適正広告ガイドライン 2012年版」を参照してみましょう。【他社の製品のひぼう広告の制限】という章で、誹謗に該当する表現例が紹介されています。その中に『他社のものの内容について事実を表現した場合』として「一般の洗顔料では落としきれなかったメイクまで」というものが例としてあげられ、「他社の製品や既存カテゴリー等を比較の対象に広告を行うと、他社ひぼうにつながり易いので注意すること」との注意コメントが付与されています。
注意すること、というレベルではありますが、例文では不可ということであげられておりますので、基本的には「一般の」という漠然とした比較であったとしても表現としては不可ということになるのではないかと思います。
他にも下記のようなものが例として考えられます。
- 弊社のコラーゲンは、今までのコラーゲンとは違います。
- かつてない(今までにない)○○!
このような表現も、抵触する恐れがあります。
また、2015年10月に東京都によって行われた医薬品等広告講習会では、「肌トラブルの原因○○(成分名)を含んでいません」という表現は、成分○○を含む製品に対しての他社誹謗につながる恐れがあるとしています。併せて注意が必要です。
化粧品は自社製品との比較であれば比較広告が可能
では、化粧品において比較広告は全くできないのでしょうか。「医薬品等適正広告基準 基準9」の留意事項(3)にあるように事実に基づき、自社製品との比較であれば可能です。
たとえば、「今までの洗顔料とは洗浄力が違います。」という表現があった場合おいて、そのまま使用すると他社比較に繋がり、かつ、効能効果等又は安全性を保証する表現とも解釈され不可になってしまう可能性がありますが、
※当社従来品 ◎◎◎(商品名)と比較
という記載を行い、事実に基づいた説明を行うことで可能となります。
商品の説明を行う際に、商品の良さを伝えたい意図から他社との違いに触れてしまう事がありますが、場合によってはルールに抵触してしまう可能性がありますので注意しましょう。
今一度、商材ごとにルールを整理して、できることとできないことを把握すれば、適法内でお客さまの心をグッと掴む広告表現を生み出すことができそうですね。
なお、健康食品、雑貨そして化粧品共通の事項として、広告媒体においては、掲載他社への配慮やモラルなどの問題から、比較広告に関し自主的に規制が行われることもありますので、その場合には各広告媒体社の判断を仰いでください。