【2016年上半期まとめ】Amazonの戦略転換、配送コストのUP、熊本地震など
2016年も半年が経過し、早くも折り返し地点を迎えた。今年は例年になく多くの出来事があり、通販業界のみならず社会全体に大きな影を落とした熊本地震をはじめ、消費増税の延期決定、大規模な顧客情報の流出などインパクトのあるニュースが相次いだ。各社の動きとしてもアマゾンの送料無料化中止や日本郵便の大口料金値上げなど業界全体に影響を及ぼすものがあり、非常に印象的な半年間だったと言える。この上半期で通販業界に起きた主な出来事を振り返ってみる。
年頭から通販企業各社の頭を悩ませた問題が、“暖冬”による冬物商戦の苦戦だ。一部では春物商品やレジャー関連用品が先売れするような恩恵があったものの、重衣料や冬物家電を中心とした高額商品の売り上げが大きく伸び悩んだようで、相対的にはマイナスの面が強く、多くの企業が不調に終わっている。
健食通販などへ強まる監視の目
また、今年は通販企業への行政処分が数多く見受けられた。1月にユーコーが景品表示法に基づく措置命令を受けたことを皮切りに、村田園やアサヒ食品なども同様に行政処分を受けている。
3月にはライオンが販売する特定保健用食品(トクホ)が健康増進法に基づく勧告を受けたが、トクホに対する健康増進法の初運用という前例のない事態に対して、一部の事業者からは「過剰規制」との批判も上がっていた。そのほかにも適格消費者団31体から広告の見直しを求められるケースもあり、特に健食通販に対する周囲の監視の目が一層厳しくなってきている印象を受ける。
法改正でも大きな進展があった。5月25日の参議院本会議で「改正特定商取引法」と「改正消費者契約法」がそれぞれ可決・成立。改正特商法は悪質事業者への取り締まり強化などを盛り込んだもので、通販ではファクシミリ広告の規制などが導入された。また、改正消契法でも新たに過量販売の契約の取り消しなどができるように規定している。来年6月3日に施行される予定で、今後の通販企業の営業活動に影響を及ぼす可能性も懸念される。
そして、通販業界のみならず社会全体に大きなインパクトを与えたのが、来年4月に予定されていた消費税率の8%から1%%への引き上げ延長だ。6月に安倍首相が正式に表明したもので、前回の引き上げ時と同様に年度末の“駆け込み需要”を見込んでいた通販企業からは、年間販売計画の根本的な見直しが必要になるとの声が数多く聞かれている。
今年も相次いだ個人情報の流出
企業の不祥事という観点では、今年もまた顧客の個人情報流出が相次いでいる。特に大きな話題となったのが、6月に発表されたJTBの子会社でネット販売を手がけるi.JTBでの約793万人分の個人情報流出がある。取引先を装ったメールの添付ファイルからのウイルス感染で、「JTBホームページ」をはじめとする旅行予約サイトでの顧客情報が大量に流出した。
これ以外にも江崎グリコの通販サイトでのクレジットカード情報を含む個人情報の約8万件超の流出や、講談社の女性誌「ViVi」の公式通販サイトでの会員約1万人分の個人情報流出、3月にはビックカメラの通販サイトで不正ログインによるポイントの不正利用被害などもあった。ほとんどのケースが外部からの不正アクセスによるもので、大量の個人情報を保有する通販企業にとっては看過できない問題であり、改めて社内のセキュリティ対策を強化する必要があることを印象付けている。
被災地支援の輪が全国で広がる
そして、今上半期で最も大きな出来事と言えるのが4月に発生した熊本地震。熊本県を中心に九州地方で甚大な被害を巻き起こした一連の地震活動では、通販企業も各所で影響を受けている。地震発生直後から九州に向かう道路や鉄道などに大きな被害が出たことから、宅配便事業者が相次いで熊本県での荷受けや配送を見合わせる措置を発表。通販の商品発送などが滞る事態にもなった。
そうした中、震源地の熊本に本社を構える再春館製薬所や、えがおでは社屋や工場などに被害を受けたものの、ともに復興に向けた専任部署を立ち上げて社員の生活や被災者を支援する活動を開始した。被災地以外の通販企業でも募金活動や救援物資の提供、寄付権付き商品の販売といった様々な形での取り組みが始まっており、支援活動の輪は全国的に広がっている。
アマゾンの決断通販物流に波紋
物流を巡る動向では、業界最大手のアマゾンジャパンで大きな戦略転換があった。これまで実施してきた、同社が発送する全商品を対象とした「送料無料」を4月に中止したことだ。具体的な理由は明らかにしていないものの、新規顧客の獲得よりも既存顧客に対するサービスを拡充する路線に舵を切ったとの見方が濃厚となっている。かつて同社が実施していた「送料無料化」が競合他社に広く波及したように、今回の同社の決断が再び配送サービスでの新たな基準となることも考えられる。
また、物流事業者の通販向けサービスを巡る動きも活発化している。3月に資本業務提携を発表したSGホールディングスと日立物流では、互いが得意とする宅配便とサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)事業を組み合わせた総合的な物流サービスの提供に着手。ヤマトグループでもオープン型の宅配ロッカー事業を本格的に開始し、ライフスタイルの変化などに伴い多様化する様々な受取手段のニーズに対応していく。自社だけなく他の宅配便事業者も利用できるオープン型で展開し、開かれたインフラとしての利用を想定している。
物流サービスの発展が進む一方でメーリング分野では、日本郵便が6月に郵便の大口利用向け割引率の引き下げを実施した。実質的な値上げでもあり、DM送付など大量の郵便物を差し出す通販企業にとってはコスト増が避けられない問題となっている。コスト吸収策も限られていることから、対応に苦慮する企業が多く出ることが予想されている。
楽天が取り組む「ドローン」配送
通販向けの最新ツールの活用状況としては、楽天が画像認識技術や荷物を自動的に離す機能などを搭載した「ドローン」による配送サービスを5月に開始している。千葉県のゴルフ場で食料品や飲料、ゴルフボールなどをコース上の利用者まで届ける期間限定の試みで、将来的には仮想モール「楽天市場」での商品配送も視野に入れるなど大きな話題となっている。
そのほかにも人工知能(AI)に代表されるツールを新たに取り入れた企業は多く、通販を舞台にした技術合戦はますます過熱している。
「通販新聞」掲載のオリジナル版はこちら:
上半期の通販業界を振り返る 震災で見えた通販の"絆"、情報流出など不祥事も散見(2016/06/30)
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