出店者が無料で楽天市場の運営ノウハウが学べる楽天大学・動画専門講座を始めるワケ
楽天は7月3日から、「楽天市場」の出店者向けにECノウハウを提供する「楽天大学」で、新たに動画専門講座「楽天大学エックス(RUx)」を開始した。楽天大学は従来、教室での授業形式で提供、参加するには授業料を納めることが必要だった。新サービスでは動画で提供し、楽天出店者であれば無料で視聴できるようにした。サービスの詳細とその狙いについて、楽天店舗インキュベーション部楽天大学グループの新村洋一マネージャーに話を聞いた。
――収益源の1つだった楽天大学の授業を動画で無料で提供することになった。最大の狙いは。
楽天では昨年から、出店者に対し数あるECモールの中でも「プレミアムモール」として、しっかりとしたサービスを提供しようという方針を掲げてきた。その1つとして、出店者向けの教育を一新。出店企業の従業員に対しても、しっかりとした教育を行うことが必要だと考え、動画のプラットフォームで無料提供することにした。
――動画での提供や無料化といった違いの他、大きな違いはどこにあるのか。
1つは多様なニーズに応えている点にある。従来の楽天大学はフレームワークに沿って、体系付けた授業を行うようにしてきた。Ruxでは7分程度の動画を数多く用意(開始時点で100タイトル、来年3月までに1000タイトルまで拡大予定)することで、店舗は自分が必要とする動画を自由に選んで学べるようにした。
また、従来は仲山進也学長を始め、楽天の社員が授業を行ってきた。RUxでは有力店長にノウハウを語ってもらうようにし、視聴者と知識を共有するようにした。
――従来の楽天大学では、楽天市場で販売する基礎的な知識を一通り学べることができた。RUxでは店舗が自由に動画を選べるようにしている。そうした一通りの知識を学ぶことはできなくなるのか。
従来の講座を録画したスタートアップコースという動画を用意している(有料)。これを見れば楽天市場での運営方法や、システムの使い方が一通り分かるようになっている。今後はRUxでも、数ある動画講座をキュレーションして提供できればと考えている
――来年3月までに1000タイトルまで増やす方針だが、多くなると出店者はどの動画を見て学べばいいのか分からなくなるのではないか。
そのおような心配に対しても対策を行う。1つは、目的に応じたお勧めセットを用意することを考えている。さらに、RUxではどの店舗がどの動画を見ているかを、出店者が把握できるようにしている。目標としている店舗や競合店舗がどのような動画を見て勉強しているかを簡単に把握できる。店舗ごとのパーソナライズが可能になるのではないかと思っている。
――具体的な動画の内容について教えて欲しい。
最も多く用意しようと思っているのが出店者の声だ。現在でも100タイトル中60タイトルは店舗に事例を話してもらっている。来年3月には1000タイトル中350タイトルが店舗の事例になる予定だ。
次に楽天市場の管理ツール「RMS」の使い方に関する動画。現在38タイトルを用意し、来年3月までに250タイトル用意する。デザインに関するテクニック(来年3月までに130タイトル)、ECコンサルタントによる運営ノウハウの講座(同100タイトル)、スペシャルゲストによる講演(同75タイトル)、クーポンやあす楽などのサービスの使い方(同50タイトル)、イベントの活用方法(同30タイトル)、法律やルール(同15タイトル)を用意する予定だ。
RUxはデバイスフリーで提供するため、今まで楽天大学で学べなかった従業員でも自由に見ることが可能。ページ制作、マーケティング、顧客対応など従業員自身の役割に応じ、動画で学べるようになっている。
――教室での授業は今後どうするのか。
より専門的なことを学べる場として、教室の授業も行っていく。具体的な内容は、現在構想中であまり具体的なことは話せない。上級者向け講座は仲山学長が行っていたが、今後はゲームクリエイターの水口哲也さんなど、経営や商品開発について外部講師を招き、講座を盛り上げていきたい。
上級講座としてMBAコースも設置する予定だ。例えば、中小企業の成功事例や投資効果の見方など、経営者向けコースも用意することを考えている。技術系の上級講座も用意する予定だ。
――受講後の認定試験なども計画しているのか。
受講者のレベルを合わせることも必要。上級講座を受講するには、認定試験を突破していることが必要とするといったことことは考えている。今後実装させていきたい。
――将来的に動画を楽天出店者以外の人も見られるようにする可能性もあるのか。
十分可能性があると。特に高校や大学でeコマースを学ぶための教材として活用していくことを計画している。今後、ECコンサルタントのサポート方法も変わってくるだろう。こうした現場での対応状況を見ながら、動画も随時変更、追加していかなければならないと考えている。