ebrun 2017/3/28 7:00

中国EC市場では3月15日以降、大手越境ECモールを中心に日本産食品の販売がストップされる事態が起きています。発端は中国中央テレビ局(CCTV)が放映した番組。日本政府は「中国国内において正確な報道がされるように、中国側とさまざまなやり取りをしている」と菅義偉内閣官房長官は説明しています。現地で何が起きているのか。その様子を中国のECメディア「ebrun」の記事で紹介します。(編集部追記)

中国の越境ECサイトで相次ぎ日本の食品が消える

「カルビー(中国語名は卡楽比)の商品がECプラットフォームで買えなくなった」。読者からこのような連絡がありました。早速、各大手ECプラットフォームで商品を検索してみると、それは事実でした。

現在、「天猫国際(Tmall Global)」「京東全球購(JD Worldwide)」「網易考拉海購(Kaola.com)」の越境EC大手3社のモールでは、カルビーのシリアル食品を見つけることができません。「京東全球購(JD Worldwide)」では、キーワードで「カルビー」と検索しても何も表示されませんでした。

中国EC市場から日本の食品が消えた日。現地向け越境ECサイトで何が起きているのか? 「網易考拉海購」では、2店舗に対してカルビーのシリアル販売が規定違反になると通知しました
「網易考拉海購」では、2店舗に対してカルビーのシリアル販売が規定違反になると通知しました
中国EC市場から日本の食品が消えた日。現地向け越境ECサイトで何が起きているのか? 「天猫国際」のカルビー海外旗艦店では2017年3月16日、店舗ごと検索できなくなっていました
編集部追記:2017年3月16日には店舗ごと検索できなくなっていました
中国EC市場から日本の食品が消えた日。現地向け越境ECサイトで何が起きているのか? 「京東全球購」ではカルビーの食品を見つけることができません
「京東全球購」ではカルビーの食品を見つけることができません
中国EC市場から日本の食品が消えた日。現地向け越境ECサイトで何が起きているのか? 輸入食品の販売に特化する越境ECサイト「格格家」は、今までカルビーを主力商品として販売していましたが、今はその痕跡すら残っていません
輸入食品の販売に特化する越境ECサイト「格格家」は、今までカルビーを主力商品として販売していましたが、今はその痕跡すら残っていません

日本産食品の輸入は「管理が厳しくなった」

カルビーのシリアル食品の一部は、福島県に近い栃木県で生産されています。2011年3月11日に起きた東日本大震災以降、今でも被災地の人々を悩ませているのが放射能汚染です。

中国国家質量監督検驗検疫総局(国家質検総局)は2011年4月、放射能に汚染された食品と農産物が中国に輸入されることを防止するため通達を出しました。福島県、群馬県、栃木県、茨城県、宮城県、山形県、新潟県、長野県、山梨県、埼玉県、東京都、千葉県の12都県の食品、食用農産物、飼料の輸入を禁止。日本の他の地域からの輸入食品、農産物、飼料については放射能濃度を測定する必要があるとしています

東日本大震災が発生して7年目に入りましたが、原発事故がもたらした食品の安全性問題はまだ、中国では解決していません。最近、日本から輸入した食品に関する管理がさらに厳しくなったようです。「網易考拉」の通知は、日本から輸入したカルビーのシリアル食品が「規定違反」としました。しかし、他の越境EC企業によると、日本からの輸入食品、健康食品は日本政府が発行する放射能物質検査証明書と原産地証明書を用意しなければ、中国の各企業の倉庫に入庫できなくなったそうです。

越境EC運営代行を手がける卓志は、日本から輸入した食品に関する管理強化の通知を発表しました。物流代行を手がける匯通天下の創業者兼CEO・孫剣巍氏も「政府からの正式通達は受け取っていないが、日本から輸入した食品への管理は確かに厳しくなった」と述べています。

サントリー、レッドホース、楽天市場らの中国ECサイトにも影響

カルビー以外にも、他の日本ブランドの輸入食品も販売に支障が生じています。

サントリー海外旗艦店

「天猫国際」に出店しているサントリー海外旗艦店は、税関システムで調整が続いているため、商品はしばらく出荷できない状態にあると公表しました。現在、同店では販売できる商品がありません。

中国EC市場から日本の食品が消えた日。現地向け越境ECサイトで何が起きているのか? 「天猫国際」に出店しているサントリー海外旗艦店は、商品が出荷できなと通知を出しました
「天猫国際」に出店しているサントリー海外旗艦店は、商品が出荷できなと通知を出しました

レッドホース海外旗艦店

レッドホース海外旗艦店も税関システムで調整が続いているとの理由で、一部商品の販売ができないと公表。チェックしてみると、販売できないのは食品類でした(編集部追記:2017年3月14日、再開時期は未定との通知を出しています。実際、商品の検索もできなくなっています)。

中国EC市場から日本の食品が消えた日。現地向け越境ECサイトで何が起きているのか? レッドホース海外旗艦店は日本食品の販売などについて、再開時間は未定という通知を出しました
レッドホース海外旗艦店は日本食品の販売などについて、再開時間は未定という通知を出しました

山本漢方海外旗艦店

山本漢方海外旗艦店も同様に、税関システムの調整が続いています。商品の出荷は正常との通知を出していますが、販売できる商品は1つもありませんでした(編集部追記:3月16日時点、店舗のトップページに商品原産地は愛知県と説明し、原産地証明書を添付していますが食品類の販売は再開できていませんでした)。

中国EC市場から日本の食品が消えた日。現地向け越境ECサイトで何が起きているのか? 山本漢方海外旗艦店のトップページでは商品の原産地を説明しています
山本漢方海外旗艦店のトップページでは商品の原産地を説明しています

楽天市場の旗艦店

「京東全球購」も状況は「天猫国際」と似ています。楽天市場の旗艦店では、食品類を見つけることができませんでしたが、他のカテゴリーには影響はなさそうです。

中国EC市場から日本の食品が消えた日。現地向け越境ECサイトで何が起きているのか? 「京東全球購」の楽天市場の旗艦店では、食品類の商品がなくなりました
「京東全球購」の楽天市場旗艦店では、食品類の商品がなくなりました

「網易考拉」の楽天市場旗艦店も同様です。店舗では食品カテゴリーが丸ごと消えてしまっていました。

網易考拉 楽天市場の旗艦店、食品カテゴリー丸ごと消えた
「網易考拉」の楽天市場旗艦店では、食品カテゴリーが丸ごとなくなりました

本誌「ebrun」は、中国内のEC店舗と消費者に注意を呼びかけたいです。中国政府は、福島県、群馬県、栃木県、茨城県、宮城県、新潟県、長野県、埼玉県、東京都、千葉県の10都県を放射線被災地と指定ています。これらの地域から輸入した食品は安全面ではリスクがある可能性があり、購入時には十分に気を付けるべきでしょう。

では、日本から輸入した食品の産地はどうやって調べればいいでしょうか? 日本の製造所固有記号検索システムから各メーカーの製造所固有記号を見つけ出し、購入した商品のパッケージに記載された製造所固有記号(賞味期限もしくは製造/販売会社の後に印刷してある)と照合すれば、産地を把握することができます。

日本の食品は「絶対の安全性」があり、長期にわたって多くの国の人々から信頼されています。しかし、日本の食品は本当に安全でしょうか。日本で発生する食品安全事故を例にするので、参考にしてください。

  • 1930年代、岐阜県の神岡鉱山による製錬の未処理廃水にカドミウムが多く含まれ、神通川下流域の富山県で公害が発生。「イタイイタイ病」が発症した
  • 1950年代、熊本県水俣市の工場でメタル水銀化合物が工業排水とともに排出され、「水俣病」が発症した
  • 1955年、日本森永乳業の粉ミルクに多量のヒ素が含まれ、1万2000人あまりの乳幼児には発熱や下痢、肝臓肥大、皮膚が黒くなったなどの症状が現れ、最終的には乳児130人が死亡
  • 1960年代、台湾で日本の廃棄油が売られたことがある。日本と台湾の悪徳業者が示し合わせ、日本で廃棄油を回収。台湾で加工され、食用油として販売されていた
  • 2007年、北海道苫小牧市の食肉加工卸会社が豚肉を牛肉と偽って出荷。伊勢神宮にある老舗の赤福は、売れ残った商品の製造日を改ざんして販売していた
  • 2008年、東京大学の農場で水銀剤を含んだ農薬を使い、お米の栽培をしていた。収穫したお米は住民に販売されたり、学生が食べたりしていた

日本の食品は信頼できますが、過信してはいけません。自分と家族の健康が一番ですから。

 

  • この記事は『ebrun』より本誌が記事提供を受け、日本用に翻訳、編集したものです。
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[著・編]ネットショップ担当者フォーラム編集部
[著]彭李輝、池田博義、ワイドテック、小嵜秀信
[特別協力]中国電子商会

中国政府系EC団体「中国電子商会」の特別協力のもと、中国経済全体から現地のEC市場、現地企業の動向、法改正動向、物流市場、新越境制度、アイスタイルなど日本企業による中国進出事例、中国現地のEC支援企業47社の一覧データなどをまとめました。

  • 通販・ECに関する中国の法改正動向を一挙掲載
  • 大手メーカー、有名EC企業が利用している中国のEC支援企業データを47社掲載
  • 中国の「新越境EC制度」について、その道のプロが解説
  • 最新の中国消費者の購買行動、越境ECの利用動向などを調査

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